フェノールの合成④
それでは続きから~
4.パラジウム触媒を用いるカップリング反応
以下のようにパラジウム触媒(Pd2dba)及びホスフィン配位子(PR3)を用いるとハロベンゼンがフェノールになる。
さて、まず今まで名前と化学式だけは登場していたパラジウム触媒について
掘り下げてみてみよう。
構造は以下のように複雑です。
iPr は isopropyl を表していて
化学式だと (CH3)2CH-
Bu は Butyl を表していて
化学式だと CH3CH2CH2CH2-
になります。
あと、ちなみになんだけどこんな構造もあったりします。
パラジウム触媒は今まで出てきたMg、Ptなんかと一緒で金属触媒の1つで
こいつの特徴として、イオンの半径が大きいっていうところがある。
イオンの半径が大きいということは?
そう、電子と陽子の結合が弱いため柔らかく
アルキルやアリールなどと結合しやすくなるんだ。
ここでは深く突っ込まないけど
クロスカップリング反応っていうC-C結合形成反応があってその触媒としてよく使われる触媒です。
また、パラジウム触媒は合成しやすいって言う点も魅力の1つです。
※ただしパラジウムの供給元が主にロシアなので色々切り替えが検討されたりもしています。。。
構造から分かる通り、反応機構を細かく書くと複雑になりすぎるので
簡単にしたものをご紹介します。
興味がある人は
パラジウム触媒クロスカップリング反応
で調べると色々と文献が出てきますので見て見てください。※wikiもあります。
ちなみに今回KOHを使ってるのでフェノールができたんだけど
これがアミンだとアニリンができます。
5.Claisen転位
これは以下のようにベンゼンがついたエーテルがフェノールになる反応だ。
パっと見の流れはとてもシンプルで
2-プロペニルオキシベンゼン[2-propenyloxybenzene]
※アリルフェニルエーテル[arylphenylether]ともいいます。
が200℃の熱により、アリル位のエーテル結合が開裂し
2-(2-プロペニル)フェノール[2-(2-propenyl)phenol]
になる反応だ。
そして細かく見ると
・アリル基と酸素との結合の切断
・アリル基末端の炭素とビニル基末端の炭素との間の結合の生成
・π結合の移動
が以下のように6電子の移動によって一度に起こる協奏反応になります。
予想がついている人もいるかもしれないけどこの反応の名前の由来は
発見者のライナー・ルートヴィッヒ・クライゼン(ドイツ)から来ております。
ちなみに上記も含め、以下のような転移反応は脂肪族Claisen転位と呼ばれています。
ポイントとしてはClaisen転位は不可逆反応ってことを抑えておいてほしい。
なぜならフェノールの方がエーテルよりも熱力学的に安定だからだ。
さてなんでここをポイントにするかというと似たような反応でも可逆反応のものが
あったりもするからだ。
最後にオマケで紹介しておくと
cope転位
という以下のようにOがCに置き換わった反応だ。
※エーテル酸素がメチレン炭素に置き換わっています。
なんで可逆反応になるかは調べてもらえればと思います。
まぁ構造に注目してもらえれば理由は自ずと見えてくるかと。
フェノールの合成は以上です。
ではまた次回。
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