電子環状反応①

さて初出の単語なのでまず
電子環状反応とは
といったところから解説していくね。

まず教科書的なんかでは大体

共役π電子系の両端でσ結合を形成して閉環する反応
あるいはその逆反応で協奏的に反応する

っていう説明になっている。
まぁこれだけだとよく分からないので
こいつを簡単な図でまとめると以下のような感じになる。


s-cis-1,3-butadieneから
cyclobuteneの反応とその逆反応

ようは環を作ったり環から作ったりなど環がらみの反応だよってことね。
六員環の例をあげると以下のような感じ。


(3Z)-1,3,5-hexatrieneから
1,3-cyclohexadieneの反応とその逆反応

余談なんだけど
「共役π電子系の両端でσ結合を形成して閉環する」
の言葉にあるようにこいつはあくまで
・共役π電子系の両端で
・σ結合を形成
という条件がついている。
さっき環を作ったり環から作ったりと超簡単にいってしまったのだけれど
実のところもっと大枠の考え方があって
「環状反応」
の中の「ペリ環状反応」(周辺環状反応)
の中の「電子環状反応」
っていう位置づけの考え方なんだ。
ようは結構末端の細かい話なんだよね。

ちなみにペリ環状反応は
π電子系を含む複数の結合が環状の遷移状態を経て
中間体を作らずに同時に形成、切断される反応様式のことなんだけど
別の機会に詳しく解説はしようと思います。
※似てるようにみえるけど色々なパターンがあるので
電子環状反応だけでは説明できないことも結構あるのです。

では概要はこれぐらいにして実際に反応について解説しいこう。

環状の形も様々だけど基本は以下の2つが分かっていればOK
1.四員環
2.六員環

では順番にいってみよー。

1.四員環

基礎の基礎、というか基本的にこれがわかればOK
なのでしっかり理解するようにしてね。

(1)Δ(熱)

まず四員環を作る反応について、π分子軌道を見てみよう。

ここまでを順番読んでいたら
一番エネルギーが高く、移動しやすいHOMOの電子が新しく結合を作ることで
四員環ができることは何となく想像がつくんじゃないかな?。
※初見の人は 応用編6 を上から順番に読んでみてください。

今この状況から何がしたいのか?
それは四員環の状態を作ること、だよね。
これを具体的にいうとエネルギーが低く安定な状況で四員環になる分子軌道
を作るにはどうしたらよいのか、を考えるってことだ。

まぁここで悩んでもあんまり意味はないので
答えをいってしまうと、同じ方向に90°回転することで上記のような状況を作り出せるんだ。

見ての通り同じ右方向(左方向もある)に90℃回転すると
軌道が重なり合い、結合性軌道ができる。
※教科書的にな表現だと「同旋的に結合が回転する」かな。

結合性軌道を作るとエネルギーが下がるから安定になったよね?
そういうことです。
ちなみに逆方向に回転する(逆旋的に回転)
以下のように反結合性軌道になりエネルギーが高くなるからこういったことにはならないのでご注意を。

ちなみにこれと逆の反応(開環)の場合も
分子軌道HOMOに合わせるため、以下のように同旋的に結合が開裂します。

さて、この同旋的と逆旋的に回転がぶっちゃけ何の意味があるの?
と思うかもしれないが、置換基がついていた場合
以下のように立体異性体を考える必要があるので注意しなければならない。

生成物を見ると、なんで同じ平面上にあったCHが上下で別れてんの?
と思うかもしれない。ここで先ほどの90°回転を思い出そう。

trans,transの場合を例にしてみるとこんな感じになっている。

どいういうことかというと
同旋的に左に90°回転または右に90°回転するかの違いで
ラセミ体ができたというわけだ。
ということで、trans,cisのジエンの場合は化合物内部に鏡面があるので
メソ体、すなわち生成物は1つになるってことなんだ。

で、これは開環する場合も同様だ。

上下に分かれていたものが平面になるよう90℃回転するイメージだね。
ちなみに(R,S)と(S,R)、(R,R)と(S,S)は同じ結果になります。

(2)hv(紫外線)

紫外線の場合、電子が励起、すなわち一つ上のエネルギーに上がる現象が起こる。
※専門的な話は物理の分野になるので省略します。

これで何が起こるのかというと
同旋的に回転しても、同じ軌道が重ならない。
ただ逆に回転させると結合性軌道となる。

だから、今度は逆旋的に回転させると安定するってことです。

さて、ここまで来ると
応用編:Diels-Alder反応① で書いていた
Diels-Alder反応が紫外線で進行しない
という理由が見えてきたなんじゃないかな?

ようは紫外線を使うとエネルギーが一段階上に上がってしまう

この状態でDiels-Alder反応が起こると…

HOMOとLUMOが重なって片方が反結合性軌道になってしまう
だから紫外線ではDiels-Alder反応が起こらないんだ。

さて、最後に置換基がついている場合も見てみよう。

閉環する場合

開環する場合

って感じです。

今まで読んできたら分かると思うけど
hν(紫外線)とΔ(熱)では結果が逆になっているよね。
だから勘違いして逆に覚えてしまったりすると悲惨なことになるので
しっかり理屈を抑えるようにしてください。

長くなってしまったので六員環は次回で

ではまた次回。

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