フェノールの合成③
それでは続きから~
2.アレーンジアゾニウム塩の加水分解反応
こいつはいわゆる研究として実験室でよく実施されるやり方だ。
以下のように
アレーンジアゾニウム塩(arenediazonium salt,ArN2+X-)
を使ってフェノールを合成します。
※アレージアゾニウム塩がなんぞ?と思ったかもしれないけど
□そこら辺については後述します。
それでは反応機構をば
(1)第1級アルカンアミンのN-ニトロソによるアレーンジアゾニウムイオンの生成
まずアレーン(arene)というのは芳香族炭化水素の総称だ。
雑にいっちゃえばベンゼン環が入っていれば大体ベンゼンに類似した性質を持っている
のでそれ系をまとめてアレーンっていいます。
ということで、ここではベンゼンそのままの事だと考えてよい。
ジアゾニウムイオンっていうのは
-N+≡N
のことで、この2つが合体してアレーンジアゾニウムイオンというわけだ。
名前の解説だけになったけど
ジアゾ化(dizotization)については過去に解説しているので
そっちをご参考ください。
参考:アミンの反応④
(2)フェノールの生成
そして以下のようにアレーンジアゾニウムイオンを加熱すると
窒素が発生してアリールカチオン(aryl cation)ができる。
このイオンは芳香族性という安定な状態が壊れているわけだから反応性が凄く高いので
水と反応してスっとフェノールになっちゃいます。
3.クメンヒドロペルオキシド法
2.の対比だけど、こちらは工場とかで
工業的に合成されている方法(色々な事情が働いている)だ。
以下のようにベンゼンとプロペンが空気酸化されて
フェノールとプロパノン(アセトン)が出来ます。
ヒドロペルオキシドはなんとなくわかるけど
クメン?と思った人(ボトムズとは関係ないよ)・・・ご安心下さい、次で分かります。
こいつはフェノールだけでなくアセトンも同時に合成できて一石二鳥なシロモノ。
それではこちらの反応機構も見てみよう。
(1)クメンの合成
まず酸性条件下でプロペンとベンゼンによる
Friedel-Craftsアルキル化反応で
1-メチルエチルベンゼン(イソプロピルベンゼンまたはクメン[cumene])ができる。
※ここら辺の詳細は ベンゼンの反応③ をご参考に
まぁ上の通りでようは慣用名がクメンなんだ。
香辛料のような名前だけど第4類の危険物で中々にデンジャラスなので扱う際はお気をつけて。
(2)ヒドロペルオキシドの生成
そして次にアルキルベンゼンが空気酸化され対応するヒドロペルオキシドになる。
※ペルオキシドについては エーテルの反応 をご参考に。
O2って書いてはいるんだけど
こいつについては酸素のジラジカル(※こんなのです ・O-O・ )と見てもらった方がいい。
何がいいたいかというと
酸素が大量にあることで、以下のような
第3級ベンジル型ラジカルを経るラジカル的な連鎖過程が起こりやすくなるんだ。
※開始反応とかは
□ラジカル、アルケンの反応⑤
□辺りをご参考に。
(3)フェノールの生成
そして最後にヒドロペルオキシドと薄い酸(ここでは10%硫酸にしてます)を反応させると
以下のように、フェノールとアセトンができる、というわけです。
もし分かり難かったら
アルケンの反応③ ででてきた ヒドロホウ素化―酸化 の ②転移反応
とかに置き換えて考えると分かり易いよ。
ご参考まで
ではまた次回。
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