フェニルメチル炭素の反応性②
それでは続きから~
1.フェニルメチルの種類
(2)ベンジル型カチオン
ベンジル型カチオンの場合はラジカルと同様に下のように共鳴し
正電荷を非局在化することで安定化する。
さて、カチオンの状態で安定…ということは?
そう、SN1反応が起こりやすいということだね。
なので以下のように
・ベンジル型のハロゲン化物
・スルホン酸エステル
なんかはエタノールとのSN1反応により加溶媒分解を起こします。
名前から想像つくと思うけど一応解説すると
加溶媒分解っていうのは
溶媒が求核試薬と反応して起こす反応
のことだ。
溶媒=水の場合は皆さんお馴染みの加水分解になります。
他にも
溶媒=アンモニアの場合はアンモノリシス
溶媒=アルコールの場合はアルコ―リシス
なんて名前がついています。
今回は溶媒=エタノールで、この場合はエタノリシスともいうよ。
さて、ここで注目してほしいのはさりげなくついている電子供与基のOCH3
こいつのおかげで共鳴の数が増えて、よりカチオン状態が安定であるため
さらなるSN1反応が起こったりしています。
ちなみにOCH3がなかったら…そうSN2反応が起こります。
こっちの反応は加溶媒分解の条件でさえ起こり
優れた求核剤があるとさらに起こりやすい。
要因としては
・立体障害がない
・SN2反応の遷移状態がベンゼンのπ電子系との重なりによって安定化する
2点のおかげだね。
つまりは
遷移状態が安定化
→反応の活性化エネルギー低下
→反応起こりやすい
ということです。
(3)ベンジル型アニオン
さて、最後はアニオンについて~
といってもラジカル、カチオンと同じように基本は以下のように共鳴している。
ということで繰り返しになるけど共鳴のため安定だ。
つまり、ベンジル位のHの酸性度は比較的高い。
どのくらいかというと、
CH3CH3(pKa=50くらい)>メチルベンゼン(pKa=40くらい)
…まぁこれだけじゃ分かり難いと思うのでもう一例
CH2=CH-CH3(アリル系のプロペン:pKa=41くらい)≒メチルベンゼン(同上)
つまり、アリル系とベンジル位の酸性度は同じくらい
ということだね。
なのでアリル系の反応でも紹介した
脱プロトン化
がメチルベンゼンでも起こるんだ。
参考:アリル系の反応②
フェニルメチルは
・ラジカル
・カチオン
・アニオン
のすべてにおいて安定であるので
様々な反応が起こるってことですな。
キリが良いので本日はこの辺で~
ではまた次回。
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