フェノールの反応③
それでは続きから~
4.フェノキシドイオンの反応
もしフェノキシドイオンを忘れていたら
フェノールの特徴①をご参照。
こいつについても代表的なものを紹介しておきます。
(1)フェノール樹脂
フェノール樹脂というのは
世界で初めて植物以外の原料から人工的に作られたプラスチック
だ。
プラスチックっていうのは合成樹脂のことで
大きく以下の2つに分類される。
・熱可塑性樹脂
・熱硬化性樹脂
プラスチックの利点としては主に
・電気を通さない
・腐ったり錆びたりしない
っていう点があって例えば
ペットボトルとか薬品の入れ物とかに使われてたりします。
※今の世の中、本当に色んなところに使われています。
で、この2つは何が違うのかというと
熱可塑性樹脂は加熱すると溶けて、冷却すると固まる。
そして熱硬化性樹脂は通常は液体なんだけど加熱すると
硬くなって元に戻らなくなる、っていう性質の差があります。
さてこのことから何が分かるかというと
熱硬化性樹脂の方が熱に強いのでより広い使用用途で使うことができるってことなんだ。
なので例えば電気製品の絶縁体や住宅用断熱材なんかに使用されています。
ただアルカリには弱いので注意が必要です。
これを発明した人は
レオ・ヘンドリック・ベークランド(別名プラスチックの父)という人で
フェノール樹脂をベークライトと名付け、そのまま製造目的にベークライト社を作った。
そしてこのベークライトさんの親友でもあった高峰譲吉という人が
この技術をいち早く日本に持ってきて
日本でもフェノール樹脂の試作製造を始め
現在の住友ベークライト株式会社の元になった会社を設立した
っていう歴史があったりします。
※このベークライトはその後の進化した別の合成樹脂にとってかわられて
□いるので工業製品としてはほぼ使われていないです。
□ただベースは一緒で強化されているって感じなので
□まだ生きているっていう表現は出来るかなと思います。
□興味がある人は調べてみてね。
ちょっと脱線したので話を戻して
フェノールはアルコールと違って
非常に弱い求電子剤でも、塩基性条件下ならフェノキシドイオンを経由して
求電子置換反応を起こすことができるってことは覚えているかな?
例えば以下のようにホルムアルデヒドと反応し
o-及びp-ヒドロキシメチル化が起こすことができる。
この反応はフェノール樹脂を工業的に合成する方法で、結構重要です。
ちなみにサリチルアルコールもガストロジゲニンもある植物の樹皮に入っていたり
ある植物の根茎に含まれたりするので興味のある人は調べてみてください。
そして反応機構的には以下のような感じ。
見覚えがあると思うけどこの反応は
アルドール反応(参考:エノラートとエノールの反応④)と
ほとんど同じエノラートの縮合反応になります。
ちなみになんだけど反応は
o-及びp-ヒドロキシメチル化で終わりにはならない。
なぜならこいつらは不安定で加熱によって脱水して
キノメタン(quinomethane)とよばれるさらに反応しやすい中間体になるからです。
(a)o-ヒドロキシメチル化生成物加熱の場合
(b)p-ヒドロキシメチル化生成物加熱の場合
そしてこの後に、以下のように複雑な反応が起こった後、フェノール樹脂ができます。
ここで注目してほしいのは
フェノール樹脂に(ポリマー)と書いてある点だ。
理由はフェノールというモノマー(小さな分子)が
繰り返し繋がった重合体(ポリマー)だからです。
(2)Kolbe反応
確か初登場、Kolbe反応っていうのは以下のように
フェノキシドイオンがCO2を攻撃して
2-ヒドロキシ安息香酸(o-ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸)の塩ができる反応になります。
なんとなく予想がついていると思うけどKolbeは
発見者のAdolph Wilhelm Hermann Kolbeからきています。
ちなみにですが、高温・高圧条件(4~7atm,125℃)を発見した
Rudolf Schmitt(注:ドイツの軍人ではない)の名前も加えて
Kolbe-Schmitt反応といわれることもあります。
そして反応機構は以下の通り。
パラの方は?と思った方もいるかもしれないんだけど
これは基本的にオルトのものしかできない。
なぜかっていうと求電子剤(CO2)がNa+に引き寄せられるからです。
ベークライトで盛り上がりすぎてしまって長くなったので
今回はこの辺で~
ではまた次回。
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