カルボン酸誘導体-アルカンニトリル①
さて、カルボン酸誘導体の最後は
アルカンニトリル
だ。
何それ?と思う人も多いと思うので
まずは構造を見てほしい。
R-C≡N
今までの解説を覚えている人の中には
あれ?これカルボン酸誘導体じゃなくない?
と思う人もいるかもしれないね。
だけどこいつは一応カルボン酸誘導体とみなされている。
理由としては、ニトリル炭素(C≡N)が
カルボニル炭素と同じ酸化状態にあり
簡単に他のカルボン酸誘導体に変換されるからだ。
酸化状態っていうのは
特定の原子が他の原子との間で損失、獲得、共有できる電子
が存在している状態だ。
高校の化学で登場していた酸化数を覚えているかな?
機械的に覚えてしまっていたらピンと来ないと思うけどようするに
酸化数が+
→電子密度が低い(酸化はある原子が電子を失うことだから)
→酸化状態
っていうことになるんだ。
※逆に酸化数が-だと、還元状態となります。
で、さっきの話を具体例で見せると
以下のように自由に使える電子が1個ずつで
同じ酸化状態だからカルボン酸誘導体と同じ分類にされているってことだね。
ポイントは以下の5つ
1.命名法
2.構造的特徴
3.水との反応
4.有機金属反応剤との反応
5.ヒドリド反応剤との反応
それではいってみよー。
1.命名法
さて恒例の名称について~今回はちょっとパターンが増えるので分けて説明していきます。
(1)基本
名称については、IUPAC命名法では
alkanenitrile(アルカンニトリル)
と呼ばれている。
命名法としてはIUPACでも慣用名でも同様で、
カルボン酸の名称の最後の-ic acidを-nitrileに置き換えればOK。
※ちなみに主鎖の位置番号はカルボン酸と同じように名付けます。
□参考 カルボン酸の特徴①
比較するとこんな感じ。
(2)ジニトリルの場合
ジカルボン酸からできるジニトリルにも同じルールが摘要されます。
参考 カルボン酸の特徴②
早い話がカルボン酸の名称の最後の-dioic acidを-dinitrileに置き換えるだけってことだね。
他にもcis、transとかもありますが、ジカルボン酸と同じなので省略。
気になる人、忘れちゃった人は カルボン酸の特徴② を読んでみて下さい。
(3)置換基の場合
置換基(-C≡N)の場合は
cyano(シアノ)
と呼ばれています。
置換基の優先順位としては、
アミド>シアノ>アルデヒド
となるので高い方です。
※優先順位については 命名法 を参考に
一応例を書いときます。
(4)シクロアルカンカルボニトリル
シアノシクロアルカンの場合は
シクロアルカンカルボニトリル(cycloalkanecarbonitrile)
と呼ばれています。
今までの話で想像つくと思うけど
こいつもカルボン酸に似ているので、ポイントについては
カルボン酸の特徴② を読んで下さい。
IUPAC命名法では
ベンゼンカルボニトリル(benzenecarbonitrile)
っていう名前になるんだけど、これはあまり使われなくて
慣用名の
ベンゾニトリル(benzonitrile:benzoic acid(安息香酸)に由来)
がよく使われる。
勘違いしやすい注意点として
カルボン酸のIUPAC名がニトリルの慣用名の由来となってたりします。
お気をつけて。
2、構造的特徴
さて、C≡Nなんてちょっとトンチキな構造なので
面食らった人もいたんじゃないかな?
実はこれ、既に似たものについて解説済みなんだ。
何か分かるかな?
そう アルキン(C≡C) だ。
つまりは、σ結合1つとπ結合2つからなる直線構造になっています。
ということで細かい話は アルキンの特徴 を読み返してみてね。
では本日はこの辺で~
ではまた次回。
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