エノラートとエノールの反応⑤

それではラストー。

3.アルドール縮合

(4)分子内アルドール縮合

さて前回の最後で2種類のアルデヒドを用いた場合を考えたけど
以下のようにCの数が多く
カルボニルが2か所ある場合
1種類の分子の中でアルドール反応がおこるんだ。

この1つの分子の中でのアルドール縮合を
分子内アルドール縮合(intramolecular aldol condensation)と呼びます。(そのままだね)
※2つの分子によるアルドール縮合は、別名 分子間アルドール縮合 と呼ばれています。

さて、そして何故分子内でアルドール反応起こせるのか?
っていうことなんだけど、生成物を見ると何となく想像がついてくるんじゃないかな?

そう、こちらの方が安定だからだよ。
※この例だとひずみが小さい五員環になるけど、当然安定で有名な六員環の場合でも起ります。

この反応で気にしてほしい点として
分子間反応(出発物質どうしのアルドール反応)を抑えないといけないってことだ。
さてどうすればいいだろうか?

答えは単純で、出発物質同士が出会いにくい環境を用意すればいいんだ。

例えば都会って一部の地域だけに人が集中しているから
その分パートナーとか異業種の仲間とかに出会える確率が高いんだけど
田舎になると土地は広いけど、目的とする相手を探しにくくなるんだよね。

つまりは 高希釈条件 で行えばいいってことだね。

さて、ここで注意したいのが、以下のように分子内にケトンがあり
生成物が2パターンできる場合だ。

まぁ結果は想像つくんじゃないかな?
可逆反応なので、より歪みの小さい方(安定)ができやすい。
今回は 五員環>三員環 なので五員環ができる。

で、思い出してほしいのだけれど(2)ケトンの場合で
分子間のアルドール縮合はケトンでは起こりにくい
って説明をしたよね。

なんで同じケトンなのに
分子内アルドール縮合 は起きやすく
分子間アルドール縮合 は起きにくい
のか?
ここではエントロピーを考えるんだ。
<参考> 基礎編:反応と平衡

アルドール(βヒドロキシカルボニル化合物)ができるとき、
分子間反応は2つの分子が1つになるために
自由に動かせる分子が大幅に減少する。
分子内反応は1つの分子が環状になるだけなので
自由に動かせる分子の減少はそこまで大きくない。

よってケトンでは分子内アルドール縮合が起きやすくなるんだ。

分子内アルドール縮合はアルデヒドでもケトンでも起こる。
Cの数が多い場合は分子間だけじゃなく、
分子内アルドール縮合が起こるかもしれないということは注意しておこう。

ではまた次回。

 

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Posted by nikukyu-