カルボン酸誘導体の特徴①

さて今回からはカルボン酸の反応のメインテーマでもあった
カルボン酸誘導体
について掘り下げていくよ。

今まで紹介した奴はこんな感じかな?

応用編:カルボン酸の特徴① 辺りからしつこくいっているけど
カルボン酸はとてもありふれた存在
なんだよね。なのでカルボン酸誘導体も
体内だろうが自然だろうが薬だろうが
いたるところに存在しております。
※興味がある人は調べてみよう…果てしない沼だけど(笑)

といったところで例によってまずは特徴を見ていこう。
ポイントとなるのは以下の3つ。

1.相対的反応性
2.C-L結合の長さ
3.酸性と塩基性

それではいってみよー。

1.相対的反応性

カルボン酸誘導体が以下のように付加-脱離反応を起こすことはカルボン酸の反応で説明したよね。

さてタイトルのままなんだけど、毎度悩まされているかもしれない他の官能基がついている場合について
まぁややこしいものは実践あるのみなので今回は以下を例として見てみよう。

で、ポイントはこのカルボン酸誘導体の反応のしやすさ
既に決まっている、というところなんだ。

例えばとの反応性を考えてみる。
この場合の反応速度の順番は以下だ。

さて上記のような順番になることに検討が付くなら
多分以降の説明はスっと理解できるんじゃないかな?
逆に何の検討もつかないようであれば、
カルボン酸の反応についての復習をオススメします。

では詳細を説明する前に、まず前提条件となるカルボン酸誘導体の共鳴構造を見てみよう

今更いう事でもないけど
反応性が高い=不安定
だよね?
これを念頭に各カルボン酸誘導体を比べてみると分かり易いかと思います。

(1)エステル>アミド

さてオーソドックスに右から左だと思っていた諸君
落ち着いてほしい。
諸君はまず
世の中が何事も自分の常識の範囲で動いているわけではない
ということを再認識してほしい。
世の中は不条理なことばかりだが、それに文句をいうのは諸君らが学生気分の抜けないシャバ僧だからだ。
自分の理外であることだったり、現在の知識で理解できない知識であるのであれば
状況によっては受け入れないといけない(後で自分で調べて必要であれば弾くことは忘れずに
ということは理解しておこう。

もの凄い私怨の入った脱線があったが、それぞれの共鳴構造は以下のようになる。

さて、注目すべきは右側の+を持っているOとNだ。
ここまで読み進めた人には説明不要だと思うが
電気陰性度は O>N
なので安定性はアミド>エステルとなる。
ということで
より不安定なものが反応しやすい
ということで、反応性は
エステル>アミド
となることがわかる。

(2)酸無水物>エステル

さてこれについても共鳴構造を見てみよう。

上を見た時点で
あれっ?
と思った人も多いんじゃないだろうか?
共鳴構造が多い方が安定というなら反応性は
エステル>酸無水物
なのでは???と。

実はこの共鳴構造をよく見てみるとわかるんだが
Oの孤立電子対が共鳴に使われているんだ。

つまり
+を安定化させるための孤立電子対
共鳴構造が増えたおかげで分散
共鳴による安定化が減少している。

結果として、反応性は
無水物>エステル
になっているんだ。

(3)ハロゲン>酸無水物

さてラストだ。

まずハロゲンが以下の2つの理由により
安定性がとても低い
ということが言える。

①ハロゲンの電気陰性度が比較的大きい

これはFやClが当てはまる。
電気陰性度が大きいほど、+がある時不安定、つまり反応しやすくなる。

②ハロゲンのp軌道が大きいので、カルボニル炭素の比較的小さい2p軌道と重なりが小さい

これはCl,Br,Iが当てはまる。
共鳴というのは、p軌道の重なりが起こすもの
だったよね?(参考:基礎編:共鳴

この重なりは似た者同士、すなわち
同じエネルギー
のものほど起こりやすいんだ。

だけど、ハロゲンの中でもCl,Br,Iというのは
ご存じの通りCよりも分子量が多い
だから最外殻電子のp軌道のエネルギーが高いんだ。(参考:基礎編:ルイス構造

つまりエネルギー量で見ると
C≒O
だからフュージョンし易い(同じ体格、同じ力量だから)んだけど
C≠Cl
だとフュージョンしにくい、というわけなんだ。

これらの理由のため
ハロゲン>酸無水物
になるってわけだね。

ちょっと長くなったけど、キリがいいのでこの辺で~

ではまた次回。

 

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Posted by nikukyu-