β—ジカルボニル化合物の特徴と反応⑥
それでは続きから~
8.β-ジカルボニル化合物の有用性
ここでは合成中間体として
β-ジカルボニル化合物がとても役立つ
ってことを説明していきます。
ということでまずは、以下の反応を見てほしい。
β-ジカルボニル化合物からできるアニオンが(簡単に)アルキル化され
生成物である3-ケトエステルが対応する3-ケト酸(ケトンとカルボン酸ある化合物)に加水分解され
さらに脱炭酸によってケトンや新しいカルボン酸ができる。
…ちょっと長くなってしまったので雑にまとめると
β-ジカルボニル化合物からケトンやカルボン酸ができる。
そしてケトンやカルボン酸ができるということは
今まで紹介してきた
・アルデヒドとケトンの反応
・カルボン酸の反応
で触れた通りで、いろいろな反応に使えるだけでなく、別の官能基に変換することも可能になるんだ。
モンハンでいうと調合する素材が増えるにつれて
調合できるアイテムも増えていくよね?
有機化学的にもリアルでそういった傾向がみられるってわけです。
それではこの反応について、2つに分けて説明していこう
(1)β-ケトエステルのアルキル化
β—ジカルボニル化合物の特徴と反応②で説明した通り
β-ケトカルボニル化合物のα水素は酸性度が大きいので
以下のような脱プロトン化が起こりやすい。
これによってできるエノラートイオンをアルキル化すれば
置換誘導体(今回は3-ケトエステル)の出来上がりです。
気付いている人もいるかもしれないけど
α水素がもう1個あるので、もう1回同じ反応を起こすことも可能ですな。
(2)3-ケト酸の脱炭酸
3-ケトエステルの加水分解によって3-ケト酸ができて
その後、穏和な条件下(熱だけ)で簡単に脱炭酸できます。
さてここで何で3-ケト酸が分子内で反応を起こしてるの?
と思った人もいたんじゃないかな?
これには以下の2つの理由があります。
・電子を与えられるC=OのOとHが近い
・分子内反応を起こすときに6電子の遷移状態の反応が芳香族性を持つ
※芳香族性?となったら ベンゼンの特徴② を見てね。
その後、互変異性が起こり、ケトンができるというわけです。
ちなみに最初の方にも書いているんだけど
生成物はケトンだけではなく、カルボン酸の時もあります。
見ての通りなんだけどC=Oの隣に
・R(アルキル基) の場合は ケトン
・OR(アルコキシ基) の場合は カルボン酸
ができます。
今回説明したことが次回以降についての基礎的な考えになるので
よく理解してから次に進んでください。
ではまた次回。
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