β—ジカルボニル化合物の特徴と反応③
前回はClaisen縮合について説明したんだけど
エステルと塩基を混ぜても起こらない場合っていうのも存在する。
例えば以下みたいな感じ
今回はこういった反応についてのお話です。
3.Claisen縮合の失敗と逆Claisen縮合
(1)Claisen縮合の失敗
前回だけのパターンしかないっていう先入観があると
誤りがちなんだけど、まずどうして失敗しているかを見てみよう。
まぁこの辺は反応機構を見ると理由がわかると思います。
まずClaisen縮合の反応機構(1)~(3)までは通常通りの以下の通りだ。
で、問題となるは
2.Claisen縮合 – (4)3-ケトエステルの脱プロトン化
にあたるところだ。
Claisen縮合の時は(4)の脱プロトン化が起こりやすいので
(1)~(3)の不利な反応を帳消しにできる
といった説明をしたよね?
さてではこの生成物は見てみると・・・
そう、脱プロトン化できるα水素が存在しないんだ。
なのでClaisen縮合が起こりえない状態になるってことだね。
(2)逆Claisen縮合
さて(1)は反応が進まないので終了・・・と思うのはまだ早い。
(1)を利用してClaisen縮合の逆反応を起こすことも出来るのです。
どういうことかというと
α水素がないβジカルボニル化合物
を塩基で処理すると
以下のように2つのエステルに分解されるんだ。
これを
逆Claisen縮合(retro-Claisen condensation)
と呼びます。
反応機構も書いておくのでご参考程度にどうぞ。
4.混合Claisen縮合
こいつは以前紹介した交差アルドール縮合(参考:エノラートとエノールの反応④)の
エステル版だ。
2種類のエステルを使ってClaisen縮合を行うと
以下のように混合Claisen縮合(mixed Claisen condensation)が起こる。
ちなみになんとなくお察しかもしれないけど
特定の生成物を作る方法は交差アルドール縮合と同じ。
つまり2種類のエステルのうち、片方はエノラートにならないようにα水素がないものを使えばいい。
これでも2つできるのでは?と思ったかもしれない。
けど、これからを1つに絞ることが可能なんだ。
どういうことかというと
エノラート化できない(A)を過剰に用意し
(B)は少量加えればいい
こうすることで、確率的に
たくさんある(A)と(b)が反応しやすくなる環境を作り出すことができる
よね?よって(A)+(b)がたくさんできるというわけです。
きりもいいので本日はここまで~
ではまた次回。
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