β-ジカルボアニオン
さて、前回まではβ-ジカルボニル化合物について紹介したので
今回はβ-ジカルボニル化合物からα水素がとれた
β-ジカルボニルアニオン
を紹介するよ。
まずはどんな構造なのかを見てみよう。
※ORと記載していますが、Rの時もあります。
見た目から分かる特徴としては
これは共鳴ができる、よね?
なので結構安定な求核剤になる。
※一応補足として、電子が左に移動するパターン
□もあるからもっと共鳴構造式はあるよ。
このおかげ?という程のものではないんだけどこの部分が
今回説明するMichael付加で1,2付加が起こらない原因の1つになったりしています。
ということで今回はすでに登場している以下について
関係する内容を解説します。
1.Michael付加
2.Robinson環化
それではいってみよー。
1.Michael付加
まずMichael付加(Michael addition)をざっくり復習すると
エノラートイオンが
α,β-不飽カルボニル化合物に1,4付加(共役付加反応) する反応だったよね?
参考:α,β-不飽和カルボニル化合物の反応③
このエノラートイオンの部分をβジカルボニル化合物からできる
安定化されたアニオンを使うと、以下のように
α,β-不飽和カルボニル化合物に対して1,4付加を起こすようになります。
※もし1に何も付加してないじゃんと思う人は
□α,β-不飽和カルボニル化合物の反応②3.(2)辺りを見てみよう。
□生成物をエノール型にすると1,4付加の意味が分かります。
ここで反応機構を
図の方にも書いているけど
最後に生成物と一緒にできる
マロン酸エステルのエノラートが反応に再利用されます。
さて、この反応を見て、以下のような1,2付加は起こらないの?
と思った人もいるかもしれないね。
まぁ当然のことながら上のような1,2付加も起こるけど
ポイントとしては最初に説明した
・求核剤が安定
に加えて
・生成物が少し不安定
な特徴があるので、結果として出発物質に戻りやすい。
※1,2付加の生成物が不安定な理由は
□単純に共鳴安定化できる生成物ができないから、になります。
つまりは可逆反応になっているんだ。
※ピンとこなかったら 基礎編:反応速度 をご参照。
ただ、1,4付加の場合は以下のように共鳴できるエノラートができるから
生成物が安定になります。
ちなみに、今回はα,β不飽和カルボニル化合物を使って紹介したけど
他にも
・α,β-不飽和のケトン
・アルデヒド
・ニトリル・
・カルボン酸誘導体
にも起ります。
※これらは全てMichael受容体(Michael acceptor)と呼ばれています。
2.Robinson環化
さて、Michael付加ときたらRobinson環化だね
参考:α,β-不飽和カルボニル化合物の反応④
こちらもざっくり復習すると
β-ジカルボニル化合物が
α,β不飽和カルボニル化合物にMichael付加後にAldol縮合を起こし
六員環を作るっていう反応だったよね。
一応反応機構も
内容としては既に紹介済みなので忘れていたら
α,β-不飽和カルボニル化合物の反応④
を読み直してください。
ではまた次回。
© 2023 猫でもわかる有機化学