ベンゼンの反応③
では続きをば
5.Friedel-Craftsアルキル化
「フリーデル・クラフツ」と読みます。
こいつは以下のようにルイス酸触媒下でベンゼンにアルキルを付ける反応だ。
Rがアルキル基、Xがハロゲンね。
なんとなくお察しだと思うけど
シャルル・フリーデル(fromフランス)と
ジェームス・クラフツ(fromアメリカ)が
発見・開発したので2人の名前をとってこういった名前になっております。
紹介したいことが結構色々あるのでタイトルを付けて小分けで紹介していくね。
(1)反応機構
まぁこれはタイトルの通りだ。
簡単な例を参考に見てみよう。
①ハロアルカンの活性化
まずハロアルカンのハロゲンとハロゲン化アルミニウムが反応しする。
こうなるとハロアルカンのハロゲンが+に帯電するので、より求電子攻撃がしやすくなる。
反応が起こるきっかけとしては、アルミニウムの空の軌道にハロゲンの電子が入るからです。
※教科書的には ルイス酸にハロゲン原子が配位する みたいな説明がこれに該当します。
②求電子攻撃
そしてもう説明するまでもないかもだけど
ここでお馴染みの求電子攻撃が起こる。
③H+(プロトン)の脱離
まぁこれもお馴染みの反応だね。
ちなみにハロアルカンの反応しやすさは
RF>RCl>RBr>RI
となる。
勘のいい人が気付いたと思うけど、そう電気陰性度の強さと同じだよね。
要するにC-Xの極性が高いほど反応しやすい、ということです。
(2)ハロアルカン以外のFriedel-Craftsアルキル化
実はFriedel-Craftsアルキル化は
ハロアルカンを使わない方法も存在する。
こいつの反応機構は以下のような感じになる。(まぁ最初以外はほぼ変わりませぬ。)
②求電子攻撃 からの ③H+(プロトン)の脱離
※様式美ですね。
とても簡単にいうと
カルボカチオンが生成
すれば
Friedel-Craftsアルキル化が起こる
ということです。
(3)Friedel-Craftsアルキル化の問題点
今までの紹介した説明で、ハロゲンやNO2等をベンゼンに結合させると
ベンゼンの反応性が低下するので2つ目、3つ目は結合しないという話をしたよね?
この流れから想像がつくかもしれないけど
アルキル基はこの場合、電子供与基なんだ。
だからベンゼンを活性化し、逆に反応性をupさせている。
このため1つ目がつくと2つ目、3つ目が連続して付くので1個だけ結合させるものを取り出すのは難しくなる、という問題点がございます。
※細かい話は「ベンゼン誘導体」
でするので、今はそうなんだ~くらいに思っていてください。
軽くまとめると
ベンゼンの反応性は
電子供与基が結合 → ベンゼン内の電子がup → 反応性up
電子求引基が結合 → ベンゼン内の電子がdown → 反応性down
ってことだね。
…で、実はもう1つ問題がある。
転移(※)を覚えているだろうか?
※忘れてたら 応用編:アルコールの反応② を
そう、求電子攻撃を行うカルボカチオンが複雑な場合
以下のように転移を起こしたものができるので生成物が複数できたり
そもそも自分がほしいものができなかったりしてしまうっていう問題が出てくるんだ。
まあ、今回は2級カルボカチオンが1級よりも圧倒的に安定なので
1級カルボカチオン経由する方はできておりませぬ…
ちなみに反応機構は以下の通り。
さてこの2つの問題がある、とは書いたのだけれど
実はこれらを気にせず、1つのアルキル基を結合させる方法がある。
それが次回紹介する Friedel-Craftsアシル化 になります。
乞うご期待!
ではまた次回。
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