ベンゼン誘導体③
それでは続きを説明していくよ。
2.配向性の理由
(2)共鳴効果を持つ置換基の場合
前回の誘起効果を説明しているので大体想像つくと思うのでさらっといきます。
[a]電子供与基の場合
電子供与基が共鳴に関与できるので
共鳴構造が誘起効果の時より1個増える。
しかもピンク枠で囲ったものは全ての原子がオクテット則を満たしている。
上のことから何がいえるかっていうと「とても安定」なんだ。
※ピンとこなかったら 基礎編:共鳴 をご参照。
当然誘起効果や何もない時より安定化しているよ。
誘起効果もそうだったけど、メタ配向ではオルト、パラ配向と違い
電子供与基であるNH2が共鳴構造に関与できない。
だからこいつが付いていないときと変わらないんだ。
よって共鳴効果の場合でも電子供与基がベンゼンに結合していた場合
次に結合する置換基はオルト、パラに結合する、ということを覚えおこう。
[b]電子求引基の場合
さて、誘起効果のところでも中間体が不安定になっていたけど
共鳴効果ではさらにたちの悪いことに電子求引基内の共鳴により
正電荷同士が隣り合う
というかなり不安定な構造ができてしまう。
このせいで遷移状態のエネルギーが上がってしまうため、反応が起こりにくくなってしまう。
もはや共鳴なんてしない方がいいいレベルです…
でメタ配向の場合は
誘起効果の時と同じく電子求引基が共鳴に関わらない。
おかげでより不安定にならずに済むんだ。
ここまで読んでもらったら分かったと思うけど
結論としては誘起効果と同じで
ベンゼンに共鳴効果を持つ置換基が結合していた場合、
電子供与基なら、2つ目はオルト、パラの位置に結合する
電子求引基なら、2つ目はメタの位置に結合する
ってことだね。
(3)ハロゲンの場合
さて ベンゼン誘導体① の時の話を覚えている皆さんはこう思たんじゃないだろうか?
弱い電子求引基になると分かっているんだからメタ配向なんじゃない?
ってね。
実はハロゲンは共鳴構造に関与できるので少し変わってくるんだ。
なので別個に切り出しての説明になります。
まずは以下の反応を見てもらいたい。
※例によってo-、m-、p-後の~には
dibromobenzeneが入るんですが
省略します。
さてではオルト、パラ配向の場合を考えてみよう。
ハロゲンは弱い電子求引基だったよね。
だけど共鳴構造を誘起効果を持つものより1個多く作れるんだ。
だからオルト、パラの時に安定化する。
しかもピンク枠で囲ったものは全ての原子がオクテット則を満たしているからとても安定なんだ。
なので弱い電子求引性をもつけど、それを補うくらい共鳴の恩恵は強いといえる。
では一方のメタ配向の場合はというと…
見ての通りで共鳴構造も増えないし正電荷も隣に来ないので、安定でも不安定でもない状態になる。
よって結論としては電子供与基と同じ、オルト、パラ配向になるんだ。
ハロゲンは弱い電子求引基だけど電子供与基と同じ結論になるので
勘違いしないように気を付けてね。
全部をまとめると
ベンゼンに誘起効果を持つ置換基が結合していた場合
電子供与基、ハロゲンなら、2つ目はオルト、パラの位置に結合する
電子求引基なら、2つ目はメタの位置に結合する
ってことだね。
ではまた次回。
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