アリル系の反応①

さて今回はアリル位の炭素(2重結合の隣の炭素)が
どのように反応するか見てみよう。
主なものは

1.ラジカル的ハロゲン化
2.アリル位ハロゲンの求核置換反応
3.アリル型有機金属反応剤

それでは一つずついってみよー。

1.ラジカル的ハロゲン化

応用編:アルケンの反応⑤ で似たようなことをやったけど
あの時 空気中に放置しておいたアルケン と HBr で行ったものを
今回は低濃度のBrを使ってアリル位の炭素部分をハロゲン化する。
反応としてはこんな感じ。


ROORの代わりにhv(紫外線)なんかでもOK。

ここでは重要になってくる
低濃度のBrについて解説していくね。

まずどうやって作られるのか?だけど
以下の N-Bromosuccinimide(NBS) が使われている。

こいつから少量ずつHBrと反応させると
低濃度のBrを発生させ、自身はスクシンイミドっていうものになる。

さて上で強調させているけど、そもそも
HBrを少量ずつとは?と思う人もいるんじゃないかな。

言葉のイメージとしては自分で地道に少量ずつ入れるのかな?
と思うかもしれないけど
そんな非効率なことはしない。
実はこれ、反応の中で少量ずつ発生させているんだ。

こいつについてはに今まで見てきた中に似たようなものがある。
応用編:アルケンの反応⑤
で紹介した HBrのラジカル的付加反応 だ。

どういった反応だったか覚えているかな?
そう、ラジカル連鎖反応 だよね。
似たようなところも多いので少し端折りつつ
段階をおってみていくとしよう。

①開始反応

Brが紫外線によって開裂してラジカルが出来る。

②伝搬段階1

応用編:アリル系の特徴② で紹介した通りで
アリル系は共鳴する。
ということで共鳴構造式が書ける。

このときできるHBrはNBSからBrが発生する反応に使われる。
そう、ここで少量ずつ発生するから低濃度のBrができる、というわけだ。

③伝搬段階2


さて、伝搬段階1で共鳴構造式を書いたけど
この例だとどちらも同じ物質になってしまった…

まぁ当然違う生成物ができる場合もあるのでそれも紹介しておくね。
こんな感じです。

なんでこうなるのか、詳しくは
応用編:アルケンの特徴③ を読んだもらったらわかるかな。
アルケンは置換基が多いほど安定
だから共鳴時に置換基が多い右の方が生成量が多くなる
って話です。

④連鎖停止反応

こいつについては
応用編:アルケンの反応⑤HBrのラジカル的付加反応
と同じ、ラジカル同士が反応してラジカルがなくなる反応だ。
原理も同じものなので割愛します。
で、このようなNBSを使ったアリル位の臭素化反応
ウォール・チグラ―反応(※)
と呼びます。
※芳香族化合物のベンジル位をNBSで臭素化する反応も指します。
詳しい説明は芳香族のところで説明予定。

ちなみにラジカル発生してないと、下のようにアリルではなく
ハロアルカンできるのでご注意を。
※詳細は 応用編:アルケンの反応② を参照

オマケ1
アリル位のハロゲン化はClでも行えます。
これは工業的にもよく使われてます。

オマケ2
上で紹介した①~④を反応式で超簡単に描くとこんな感じ。

ではまた次回。

© 2020 猫でもわかる有機化学

Posted by nikukyu-