アリル系の特徴①

さて聞きなれない単語が出てきたけど
まずアリル(allyl)とは何か?

これは簡単にいうと
2-propenyl

のことだ。

もっと簡単にいうなら
二重結合で結合した炭素2つを含む官能基
ってところかな。

名前の由来はネギ属の学名Alliumから。
なんネギ?でかっていうと
・ニンニク(ネギ属)の強烈な匂い
・タマネギ(ネギ属)を切った時に涙が出る原因
になっている成分の多くがこのアリル基を含んだ
有機硫黄化合物だから、らしい…
専門外なのでここら辺はよくわからなかったので
興味があれば調べてみてください。

で、以下の黄色部分
二重結合の隣に結合した炭素のことをアリル系炭素っていいます。

このアリル基をもつ化合物はそのまんまアリル化合物
と呼ばれているんだけど、割合高い反応性を見せてくれるので
結構色々な反応に利用できます。

ということで
いつも通り特徴から説明していくよ。

解説ポイントは以下の4つ

・CH結合(結合解離エネルギー)の強さ
・カルボカチオンのできやすさ
・酸性度
・構造

ではいってみよー。

1.CH結合(結合解離エネルギー)の強さ

まず結合解離エネルギーっていうのは
結合の強さを示す目安
の一つだ。

簡単にいうと結合を引きはがすのに必要なエネルギー
のこと。
基本的にはDH°で表現されています。

強さの考え方はいくつかあるのだけれど今回は炭素鎖が
絡んでいるので炭素鎖視点で考えます。

そもそもの考え方として
炭素-炭素結合というものがある。

これはそのままC-Cの炭素間の共有結合のことなんだけど
隣にある炭素がいくつあるかで1~3級炭素原子という分類がなされる。
まぁ化学式で見た方がわかり易いと思うので以下をみてください。

第1級炭素

第2級炭素

第3級炭素

って感じだね。
で結論をいうと第3級炭素よりも弱い

ということで
結合解離エネルギーの大きさは
1級炭素>2級炭素>3級炭素>アリル系

という関係になる。
最初にちょっと書いたけどアリル系は反応性が高い
ようは色んな動きがしやすいようにあんまりがっちり固まって
いないものだって思ってくれればいいかな。

2.カルボカチオンのできやすさ

まずカルボカチオンについての補足を
カルボカチオンはご存じの通りで
炭素原子上に正電荷を持つカチオン
のことだ。
こいつが安定化する要素の一つに超共役がある。
※細かい話は 基礎編:ラジカルの安定性 辺りをご参照。

で、超共役によって何が起こるかというと
「立っている」状態のC-H結合が生まれてくる。
※図で描くのが難しかったので
詳しい図は調べてみてください(-_-;)
ようはカルボカチオンの平面に対して
上下(立体的)に突き出すようにC-H結合が
出てくるっていうイメージです。

この「立っている」C-H結合の数が
1つなら1級カルボカチオン
2つなら2級カルボカチオン
3つなら3級カルボカチオン

とされている。
超共役の効果が高いほど化合物の安定性は高い。

そしてそれぞれのカルボカチオンの超共役は以下のようになっている。

↑の通りで
3級>2級>1級
の順に電子はより分散する。

だからカルボカチオンのできやすさ
3級>2級>1級
となります。

でアリルはどうかというと超共役の働きで
2級カルボカチオンと同じになる。

これがどういうことかというと
1反応を起こすことが可能になるんだ。


※ピンと来なかったら 基礎編:S1反応
ちなみに↑の真ん中の状態をプロペニルカチオンといいます。

ちょっと長くなったのでとりあえず今回はこの辺で。

ではまた次回。

Posted by nikukyu-