アルキンの反応①
さて今回はアルキンの反応について
主なものは
1.水素化反応
2.ハロゲン化水素の求電子付加反応
3.ハロゲンの求電子付加反応
4.水和反応
5.水銀イオン触媒による水和反応
6.HBrのラジカル的付加反応
7.ヒドロホウ素化-酸化
今までの流れで分かると思うけど今回も
アルケンと被る所が多い
ので、タイトルを見て?が出ていたらアルケンの反応
を復習しておくことをおすすめします。
それでは一つずついってみよー。
1.水素化反応
水素化反応については
応用編:アルケンの反応①
をご参照。
アルキンの場合は2通りの方法があって
①アルカンまで戻す方法
②アルケンで止める方法
があります。
順番に見ていこう。
①アルカンまで戻す方法
これはアルケンの時と同じ方法になる。
以下のような感じ
この方法の欠点はアルケンの状態で止めることが出来ないので
一気にアルカンになってしまう、というところだ。
※アルケンにしたものが欲しい時などに対応出来ない。
そこで②の方法になる。
②アルケンで止める方法
さて アルケン ということで考えないといけない要素は何だっただろうか?
そう、cisとtransがあったよね。
ということでさらに2つに分けて考えないといけません。
・cis体を作る方法
Lindler触媒 を使って
アルキンとH2を反応させることで生成します。
新しい単語が出たので解説しておくと
Lindlar触媒 というのは
・5%Pd-CaCO3
・Pd(OCOCH3)2
・quinoline
が混ぜ合わさったものだ。
こいつが一般的な触媒と何が違うのかというと
触媒作用が弱い、という特徴がある。
中身の解説をすると
5%Pd-CaCO3
は、炭酸カルシウムにパラジウム触媒をくっつけたもの。
こいつは反応を起こしやすくする、という一般的な触媒の役割になる。
そして
Pd(OCOCH3)2
quinoline
こいつらがパラジウム触媒を弱める働き(被毒っていいます)を持っているんだ。
なので反応を活性化させる触媒の作用を弱くすることが出来る。
なんで、そんなことをするかというのは言わずもがな
アルケンに水素をくっつけにくくさせたいから
だね。
こいつを使うことでアルキンに対しては何とか反応できるけど
アルケンに水素つける反応はとても遅くなる。
だからアルケンを取り出せるというわけだ。
※ちなみにこいつは別にアルキンのみに反応するわけじゃない。
NO2をNH2に還元する反応なんかにも使えます。
・trans体を作る方法
さてtransを作りたい場合はまたちょっと違う方法になってくる。
Birch(バーチ)還元
という方法だ。
簡単にいうと液体アンモニア中で金属を使って還元する
という方法だ。
※反応名の由来は発見者のアーサー・ジョン・バーチから。
まずは大まかな反応を見てみよう。
この反応は他の還元反応と一線を画すもので
金属が融けることによって発生する溶媒和電子を使う。
↑だけ読むとよくわからないと思うので解説すると
この金属というのはNaやLiなんかの
陽イオンになりやすいもの
のことを指す。
この金属はアンモニア中という周りがHをもらいやすい環境において
以下のように電子を放出し、陽イオンとなる。
そしてここで発生した電子がアルキンと金属ナトリウムが反応し
以下のようなラジカルアニオンができる
この段階ですでにtrans体の片鱗が見えるね。
さてここで なんでcis体にならないの? と思うかもだけど
cis体になると置換基2つが立体反発のため不安定になってしまう。
だからcisではなくtrans体ができるというわけだ。
そして次にNH3でプロトン化する。
後はこれらの反応をもう一度繰り返すことで目的のtransアルケンができるというわけだ。
反応としては以上かな。
あと上の方で
>この反応は他の還元反応と一線を画すもので
と書いたけど
一例を紹介しておくと
この反応は珍しいことに他の還元反応では不可能な
ベンゼン環の内部の2重結合の還元ができたりします。
一発目から大分長くなってしまった…
お疲れ様。
ではまた次回。
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