アルケンの反応④
それでは前回の続きから
6.ペルオキシカルボン酸による酸化
この項の詳細は
応用編:オキサシクロプロパンの合成 ペルオキシカルボン酸による酸化
に記載済みなので、忘れてたら読んでおいてね。
1点だけ補足をしておくと
反応後は以下のようにtrans体ができる。
理由としては
SN2反応は後ろ側からの攻撃されるため
言い換えるなら
お互い立体障害が少ない様に反応するため
からだ。
※詳細については
応用編のオキサシクロプロパン全般に記載しております。
7.四酸化オスミウムによるジヒドロキシ化
まず聞きなれない名前が出てきたと思うので
四酸化オスミウム(別名:酸化オスミウム(Ⅷ))について簡単に
化学式はOsO4で、構造は以下のような感じです。
特徴としては
・強酸化剤
・猛毒
・アルケンを1,2-ジオールへと変化させる(有機化学では有名)
ってところかな
さてこいつを挙げているのは上述の
「6.ペルオキシカルボン酸による酸化」の逆をとれる。
つまりはcis体ができるからだ。
こいつについては実際に反応機構を追って見ていくとしよう。
①OsO4,THFの反応
この反応は1,3双極子付加反応といわれている。
反応としては 基礎編:SN2 反応 で紹介した協奏反応になる。
で、段階で図の通りcis体になる。
理由としては見ての通りで同じ方向からOが同時に近づいて反応するからだ。
ちなみにこの同じ方向から原子が付加されることを
シン[syn]付加
っていう。
当然逆に違う方向から原子が付加されることもあるので
そちらは
アンチ[anti]付加
っていったりします。
②H2Oによる加水分解
まぁこちらは見たままの加水分解だね。
結果2つのOH(ヒドロキシ基)がつくだから
ジヒドロキシ化が起こりますってことだね。
8.オゾン分解(オゾン酸化)
こいつはオゾンを使ってアルケンから2つのカルボニルを作る反応だ。
別名:ハリースオゾン分解
※発見者:カール・ハリースさんの名前が由来です。
オゾン(O3)についてはこのページを見る人には説明不要かもだけど
以下のような構造で
・腐食性が高い
・刺激臭がある
・有毒
といった特徴だけでいうと結構ろくでもない物質だ。。。
まぁオゾンのことはいいとして
7.同様こいつも反応機構を追って見てみよう。
①O3の反応
最初のオゾンの構造を見て想像がついたかもしれないけど
こいつも7.同様に協奏反応が起こる。
気にしておいてほしいのは↑の反応後の生成物
・カルボニル
・カルボニルオキシド
はとても不安定な状態になっている。
なので以下のようにすぐに分解が起こり
1,2,4-trioxolane(別名:オゾニド[ozonide])が生成されるんだ。
②(CH3)2Sによる還元反応
そしてこのままだとオゾニドのままなので
求核性を持つ還元剤を使って求核攻撃をし、その結果としてカルボニルを取得する
という訳だね。
長く続きましたが次回で終了予定です。
ではまた次回。
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