アシルアニオン等価体の特徴と反応①
さて、今までC=Oを持つ化合物について
いろいろな反応を解説したよね。
今回はちょっとした変わり種として、以下のように
Cが-に帯電したものについて解説するよ。
ポイントはこいつを使うことで1段階でC-C結合ができるってことです。
※このように本来の極性を逆転させる反応を極性転換(Umpolung)といいます。
実際のところCが-に帯電したもの自体は
アルコールの合成③ 有機金属反応剤 とかで出てきていたんだけど、今回は以下のような
アルデヒドまたはケトンに付加して
α-ヒドロキシケトンを生成することができる
アルカノイルアニオン(アシルアニオン)(alkanoyl anion(acyl anion))
について説明していきます。
まず見た目からわかることとして
電気陰性度の高くないCに-があるという矛盾!
から分かる通り、アシルアニオンは簡単に生成はできない。
ということでこのアシルアニオンにはある種の改造が必要になる。
どういうことかというと
C-の時に安定
かつ
C-C結合作った後にC=Oに変換できるようなもの
にしなければならないんだ。
といったところでポイントになる以下2つの反応を見ていきます。
1.環状チオアセタール
2.チアゾリニウム塩
それではいってみよー。
1.環状チオアセタール(ジチアシクロヘキサンアニオン法)
さて一言に環状チオアセタールといっても複数あるんだけれど
ここでは以下の1,3-dithiacyclohexane(1,3-ジチアシクロヘキサン)を使って説明していきます。
こいつはH取れた後の-が
両隣のSの電子求引性の誘起効果により分散するのでアニオンになっても安定です。
※pKa=約31なのでHとるなら強塩基が必要です
ちなみにジチオールがアルデヒドやケトンと反応することで
以下のように環状チオアセタールができる上に元にも戻せます。
参考:アルデヒドとケトンの反応⑥
で、これを利用することで以下のようにC-C結合を作ることができます。
さて気付いたかもしれないんだけど上をきゅっとすると
以下と同じ結果になるんだ。
この環状チオアセタールや
次に説明するチアゾリニウム塩は
マスクされたアルカノイルアニオン(アシルアニオン)(masked alkanoyl anion(acyl anion))
なので
アルカノイルアニオン(アシルアニオン)等価体(alkanoyl anion(acyl anion)equivalent)
と呼ばれたりもします。
ではまた次回。
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