今回は 基礎編:酸性の強弱 でキーワードだけ登場した”ラジカル”について
今まで化合物が分離するときどっちかに電子が2つ移動して+、―に分かれていたよね。
この電子が均等に1つずつで分かれた場合のことをラジカルっていうよ。
例えばこんな感じ。
さて、+、-のときも結合を切断するときのエネルギーの強さについて触れたよね。
当然ながらラジカルにも結合の強弱が存在するよ。
まず前提の話として覚えておいてほしいのはラジカルは反応性が超高いってこと。
理由は言わずもがな、今までの説明から読み取れると思いうけど基本”不安定”だからね。
特殊な場合を除いてラジカルって奴はハロゲンと引っ付く機会が多い。
そしてラジカルは軌道の重なりが大きいほうが結合が強固になる。
ハロゲンに対してっていう前提を考慮してもっと単純な言い方をすると
原子番号が近いもの同士の方が強固
と考えてもらったほうが分かりやすいかな。
例えば H-F と H-Cl では
H(原子番号:1)に対して
F(原子番号:9)の方が
Cl(原子番号:17)よりも原子番号が近い。
だからHFの方がより結合が強固であるっていうことだよ。
ざっと説明が終わったところで。
以下のハロアルカン(メタンの塩素化)の作り方
を参考にもうちょっと掘り下げてみていこう。
まずは反応を起こすために熱を300℃以上(Δ)か紫外線(hν)を照射するよ。
これにより塩素の開裂に必要なエネルギーを補ってるよ(具体的には58kcal/mol)。
反応を起こすための山を越えるためにエネルギー(熱とか紫外線)を与えてるわけね。
この段階だと
メタン → そのまま(安定状態)
塩素 → ラジカルを生成(ホモリシス開裂っていうよ)
塩素ラジカルとメタンが反応してCH3Clが生成する反応。
イメージ的には塩素ラジカルがメタンから水素を奪っていると思えばいいかな。
この時発生するエネルギーは
・反応前のC-H結合を切断するエネルギー(105kcal/mol)
から
・反応後に生成したH-Clのエネルギー(103kcal/mol)
を引くことで求めることが出来ます。
ようやくハロアルカンができた状態。
イメージ的にはメチルラジカルが塩素分子から塩素原子を奪っていると思えばいいかな。
この時発生するエネルギーは
・反応前のCl-Cl結合を切断するエネルギー(58kcal/mol)
から
・反応後に生成したC-Clのエネルギー(85kcal/mol)
を引くことで求めることが出来ます。
名前のままで反応が停止する段階。
これは2、3であまったラジカル同士がカップリング反応を起こすことであまりがなくなる ⇒ 反応終わりって感じの動きだ。
さてここで注目してほしいのは2、3の段階でエネルギーが発生している、ということ。
どういうことかというと、この部分からなぜ塩素開裂後に反応が進行するのかが分かるんだ。
発生したエネルギーは全部でいくつだったか?
2kcal/mol – 27kcal/mol = -25kcal/mol
※1.の塩素の開裂については熱や紫外線っていう
いわゆる外部のエネルギーを貰ったものなので除外して考えます。
ほら、十分 発熱反応 だよね。だからなんだ。
※ピンと来なかったら 基礎編:反応速度 へ。
ちなみに他のハロゲンであるF2やBr2はこの反応が起こるけどI2は反応しない。
理由は伝播段階2でできるH-Iのエネルギーが小さすぎて反応自体が起こりにくい状況になっているからなんだ。
さて、ここでなんでH-Iで生じるエネルギーが小さいの?
と思ったら最初の方をじっくり読み直してみてね。(笑)
ではまた次回
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