それでは前回の続きから。
タイトルから分かると思うけど前回の 4.水和反応 と同じものができる。
1つ違うのはこっちの場合は末端アルキンでも使えるってところだね。
反応としてはこんな感じ
置換基が多い方に結合しているからマルコフニコフだね。
どうしてこんな反応が起こるのか?
まぁいつも通り反応機構を見てみよう。
まず、HgSO4はHg2+を求電子剤として用いる。
これがハロゲンと同じようにまず三角形を作る。
さてここで
なんでH2Oが置換基多い方に攻撃するの?
って思うかもしれないね。
これについては遷移状態を見てみると理由が分かってくる。
まずH2Oが結合してる部分がカルボカチオンになっている。
ということは置換基が多い方が安定だよね。
遷移状態が安定な方が反応は進みやすいから
置換基が多い方にH2Oが攻撃する、ということなんだ。
そして続きの反応は、4.水和反応 と同じくケト―エノール互変異性となる。
水銀イオンを使えば置換基が多い方(マルコフニコフ則)にOHがつくことはしっかり覚えておこう。
反応については
応用編:アルケンの反応⑤
をご参照。
とりあえずアルキン版での反応はこんな感じ。
こいつは置換基の少ない方に結合する逆マルコフニコフだったよね。
アルケンになるのでcis体とtrans体のどちらもできちゃいます。
ちなみにこの時の生成物をハロゲン化アルケニルというよ。
こいつはSN1、SN2反応を起こさない優れもの。
なので以下のようにアルケンを追加できたりします。
※細かい話は 応用編:アルコールの合成③ をご参照。
反応については
応用編:アルケンの反応③
をご参照。
とりあえずアルキン版での反応はこんな感じ。
上の通りでBH3をそのまま使うと1回で終わらず
2回目のBH2付加が進行してしまう。
このままではアルケンの部分を生成できないので
BH3のHの部分を立体障害の大きいものに変えた以下のようなものを使う。
これにより逆マルコフニコフ則に従ったものが生成できるってことだね。
で、BH3とR2BHを置き換えると以下のようになる。
置換基が少ない方に結合するので逆マルコフニコフ。
なんで同じ方向から近づくのにtrans体?と思う人もいるかもしれない。
実際のところ同じ方向から近づいてはいるのだけれど
直線に上から近づいている+立体障害を避けるため
trans体になる、と考えられております。
そしてこいつもケト―エノール互変異性となります。
アルキンの反応は以上。
ではまた次回。
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