さて聞きなれない単語が出てきたけど
まずアリル(allyl)とは何か?

これは簡単にいうと
2-propenyl

のことだ。

もっと簡単にいうなら
二重結合で結合した炭素2つを含む官能基
ってところかな。

名前の由来はネギ属の学名Alliumから。
なんネギ?でかっていうと
・ニンニク(ネギ属)の強烈な匂い
・タマネギ(ネギ属)を切った時に涙が出る原因
になっている成分の多くがこのアリル基を含んだ
有機硫黄化合物だから、らしい…
専門外なのでここら辺はよくわからなかったので
興味があれば調べてみてください。

で、以下の黄色部分
二重結合の隣に結合した炭素のことをアリル系炭素っていいます。

このアリル基をもつ化合物はそのまんまアリル化合物
と呼ばれているんだけど、割合高い反応性を見せてくれるので
結構色々な反応に利用できます。

ということで
いつも通り特徴から説明していくよ。

解説ポイントは以下の4つ

・CH結合(結合解離エネルギー)の強さ
・カルボカチオンのできやすさ
・酸性度
・構造

ではいってみよー。

1.CH結合(結合解離エネルギー)の強さ

まず結合解離エネルギーっていうのは
結合の強さを示す目安
の一つだ。

簡単にいうと結合を引きはがすのに必要なエネルギー
のこと。
基本的にはDH°で表現されています。

強さの考え方はいくつかあるのだけれど今回は炭素鎖が
絡んでいるので炭素鎖視点で考えます。

そもそもの考え方として
炭素-炭素結合というものがある。

これはそのままC-Cの炭素間の共有結合のことなんだけど
隣にある炭素がいくつあるかで1~3級炭素原子という分類がなされる。
まぁ化学式で見た方がわかり易いと思うので以下をみてください。

第1級炭素

第2級炭素

第3級炭素

って感じだね。
で結論をいうと第3級炭素よりも弱い

ということで
結合解離エネルギーの大きさは
1級炭素>2級炭素>3級炭素>アリル系

という関係になる。
最初にちょっと書いたけどアリル系は反応性が高い
ようは色んな動きがしやすいようにあんまりがっちり固まって
いないものだって思ってくれればいいかな。

2.カルボカチオンのできやすさ

まずカルボカチオンについての補足を
カルボカチオンはご存じの通りで
炭素原子上に正電荷を持つカチオン
のことだ。
こいつが安定化する要素の一つに超共役がある。
※細かい話は 基礎編:ラジカルの安定性 辺りをご参照。

で、超共役によって何が起こるかというと
「立っている」状態のC-H結合が生まれてくる。
※図で描くのが難しかったので
詳しい図は調べてみてください(-_-;)
ようはカルボカチオンの平面に対して
上下(立体的)に突き出すようにC-H結合が
出てくるっていうイメージです。

この「立っている」C-H結合の数が
1つなら1級カルボカチオン
2つなら2級カルボカチオン
3つなら3級カルボカチオン

とされている。
超共役の効果が高いほど化合物の安定性は高い。

そしてそれぞれのカルボカチオンの超共役は以下のようになっている。

↑の通りで
3級>2級>1級
の順に電子はより分散する。

だからカルボカチオンのできやすさ
3級>2級>1級
となります。

でアリルはどうかというと超共役の働きで
2級カルボカチオンと同じになる。

これがどういうことかというと
1反応を起こすことが可能になるんだ。


※ピンと来なかったら 基礎編:S1反応
ちなみに↑の真ん中の状態をプロペニルカチオンといいます。

ちょっと長くなったのでとりあえず今回はこの辺で。

ではまた次回。

それではラストです。
前回の続きから

9.HBrのラジカル的付加反応

アルケンとハロゲン化水素の反応は
一番最初の 2.ハロゲン化水素の求電子付加反応
でやったけど、これをラジカル(※)的に反応させる。
※内容が怪しそうなら事前に
基礎編:ラジカル
基礎編:ラジカルの安定性
をご参照。

反応の内容だけ簡単にいうと、
空気中に放置しておいたアルケン と HBr
の反応だ。

さてここで 2.ハロゲン化水素の求電子付加反応 で紹介した
マルコフニコフ則のことを思い出してほしい。

「Hは置換基の少ないCに、ハロゲンは置換基の多いCに結合する」

だったよね。
見ての通り今回はになっている。
そう、これが所謂 逆マルコフニコフ の反応だ。

この反応が発見された当時
人によって反応の結果が違うものだから
結構驚かれていたらしい。

この反応が発生する理由としては
まずアルケンを空気中に放置することで
光などの影響により、過酸化物(ROOR)が出来る。
この過酸化物がラジカルを発生させる。
だからラジカル的な反応が起こるんだ。

さてこの場合に気になることがあるんじゃないかな。
じゃあ求電子付加反応では起こらないのか?
ってね。
これには反応の早さが関係していて、ラジカル連鎖反応の方がずっと早い
だからラジカルの連鎖反応が起こりうる条件下では
こちらの方が優先して進んでしまうんだ。

既に書いているけどこれは連鎖反応なので
とにかく安定な方に進む。
※後で出てくるけど
安定な方向がなくなると反応が止まります。
ちょっとその辺りを意識して読んでみてね。

①開始反応(ラジカルが発生)


ちなみに
Δは熱を加えたって意味で
ΔH
切断するエネルギー – 生成する結合エネルギー
の結果になります。

②伝搬段階1(ラジカルとHBrが反応)

この②以降はエネルギーが-(マイナス)にならないと
2.ハロゲン化水素の求電子付加反応
の方が優先されてしまう。
⇒連鎖反応は止まってしまうってことです。

③伝搬段階2(ハロゲンラジカルとアルケンが反応)

この段階で 逆マルコフニコフ になる。
なぜかっていうのはラジカルの安定性がどうなっていたか思い出してほしい。
※忘れていたら 基礎編:ラジカルの安定性

④連鎖停止反応

そして最後にもう一度ハロゲン化水素と反応して生成物が完成する。

さて↑の例でHBrと書いているけど、実はこの反応は他のハロゲン化水素では起こらない

HFとHClの場合は
HF、HClの結合エネルギー>RO-Hの結合エネルギー
なので②の部分でエネルギーが+になり、反応が止まる。

HIの場合は
HIの結合エネルギー>RO-Hの結合エネルギー
となるので②はOKだ。
だけどその次の③で
H-(CH=CH)の結合エネルギー>C-Iの結合エネルギー
でこれまたエネルギーが+になり、反応が止まってしまうという訳だね。

なのでこの反応はHBrでしか起こらない、ということも抑えておこう。
ちなみに過酸化物(ROOR)を使う場合の反応は以下のように描かれます。

10.アルケン同士の反応

これはまぁ、おまけみたいなものです。
そうなんだーくらいに考えてください。

とりあえず例として以下の反応を見てほしい。

これはアルケン同士が酸性水溶液(硫酸とか)中で反応している様子だ。
注目してほしいのは2つの同種の分子が1つのまとまった分子になっている点。
この1つにまとまったものを二量体といい
これを形成することを二量化っていう。

同じ分子を使えば当然、三量体、四量体…
と増やすことが出来るわけで、このことを重合っていいます。

この重合は結構 果てない数 で行えるので
ざっくり以下のようによんだりしてます。
・単量体:monomer(モノマー) ※重合の基準
・二量体:dimer(ダイマー)
・三量体:trimer(トライマー)
・四量体:tetramer(テトラマー)
(略)
・重合が有限個(10~100個):oligomer(オリゴマー)
・重合が100個以上:polymer(ポリマー)
※oligomer以上は諸説あります。

重合については他にも
ラジカル重合、アニオン重合、金属重合…などたくさんあるので
興味がある人は調べてみてくだされ。

特にポリマーは日常生活で大くに使われているもので
代表的なものは所謂プラスチック

例えば下のようにエテンの重合化でポリエチレンができる。
※nは莫大な数と思ってくれればOK

長くなったけどがアルケンの反応は以上です。
お疲れ様でした!

ではまた次回。

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それでは前回の続きから

5.水素化熱

まずは水素化熱について。
簡単にいえば
水素化 に必要な 熱 のこと。
詳しく言えば
二重結合に水素をくっつけて単結合にするのに必要なエネルギー(反応熱)
のこと。
化合物に水素を付加させることが水素化を呼ばれてます。

これで何が分かるかというと、アルケンの相対的な安定性数値で見ることが出来るんだ。
まぁこういうのは例を見た方が早い。

前回4.で紹介した
cis-2-butene
trans-2-butene
1-butene
がそれぞれbutaneになる時の様子を表している。

ちなみにΔH水素化熱ね。
ΔH≒ΔGになるので、ΔHが小さいほど不安定
つまりは反応が起こりやすいってことになるんだ。
※ピンとこなかったら 基礎編:反応と平衡

ΔHの大きさは見ての通りで
trans-2-butene > cis-2-butene > 1-butene

安定性の具体的な話は6でやるけど、安定性の順番も同じなります。

6.相対的安定性

さて、5では反応熱の差からアルケンの安定・不安定を判断したよね。
今度は構造の見た目から判断する方法を紹介するよ。

ポイントは大きく2つ。
では順番に紹介していこう。

トランス体はシス体より安定

構造を想像してもらったらなんとなくわかるんじゃないかな?
シスの方がちょっと窮屈なイメージがあるよね。
そのイメージの通りで、結局置換基が同じ向きにある場合はお互いに反発が起こってしまう。
結果、不安定な状態になってしまうんだ。

注意点として、この考え方には例外がある。
小員環(Cが3個か4個)中員環(Cが8~11)シクロアルケンには適用されないんだ。
なぜかというと環のひずみのにより、シスの方がトランスより安定という現象が起きてしまう。

?が出てくると思うので、例としてcyclooctene(C8H16)のシス体とトランス体を見てみよう。

↑の通りでトランスがこんな感じに捻じれてしまうんだ。
こういった場合は、シスの方が安定になるってことだね。

置換基が多いほど安定

さっき置換基が同じ向きにあると不安定な状態にある
って説明したけど、以下の2つの要因のお陰でその問題が解消されるんだ。
・sp2混成軌道とsp3混成軌道の結合
・超共役
順番に説明するね。

sp2混成軌道とsp3混成軌道の結合

見たことあるキーワードだよね?
特徴①の総復習になんだけど、アルケンの2重結合と置換基はsp2混成軌道とsp3混成軌道の結合になっている。
そして双極子モーメントにより、sp2混成軌道とsp3混成軌道で電子求引性が発生している。
こいつらが合わさったことにより何が起こっているかというと
sp3-sp2がsp3-sp3よりも結合短く強固になっているんだ。
結合が強固=状態が変化しにくい
で、結合が強固なものが増えるとより安定なるよね。
だから置換基が多い程、より安定になるのです。

超共役

基礎編:ラジカルの安定性
で説明したものだけど、覚えているかな?
簡単にいうと

σ軌道の電子がエネルギー的に近い位置の空のp軌道相互作用する現象

だったよね。
置換基のσ結合の電子がラジカル電子のところに行き来することで安定っていう話だったんだけど
ようはこれと同じで置換基が増えるほど
置換基(アルキル基)のσ結合の電子(C-H部分)

二重結合部分のp軌道電子と相互作用(※お互いに行ったり来たりできる)
で電子が分散する。
これにより安定化できるんだ。

ということは、置換基が増えるほど行き来できるσ結合の電子も増えるよね。
だから置換基が多い程、より安定になるのです。

以上、長々とお付き合いありがとうございました。

ではまた次回。

 

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