それでは前回の続きから。

5.水銀イオン触媒による水和反応

タイトルから分かると思うけど前回の 4.水和反応 と同じものができる。
1つ違うのはこっちの場合は末端アルキンでも使えるってところだね。
反応としてはこんな感じ

どうしてこんな反応が起こるのか?
まぁいつも通り反応機構を見てみよう。

まず、HgSOHg2+を求電子剤として用いる。
これがハロゲンと同じようにまず三角形を作る。

さてここで
なんでHOが置換基多い方に攻撃するの?
って思うかもしれないね。
これについては遷移状態を見てみると理由が分かってくる。

まずHOが結合してる部分がカルボカチオンになっている。
ということは置換基が多い方が安定だよね。
遷移状態が安定な方が反応は進みやすいから
置換基が多い方にHOが攻撃する、ということなんだ。
そして続きの反応は、4.水和反応 と同じくケト―エノール互変異性となる。

この水銀イオン触媒のお陰で最初に書いたけど
ただの水和反応では不可能だった末端アルキンに対しても
水和反応を起こせるってことだね。(超優秀)

6.HBrのラジカル的付加反応

反応については
応用編:アルケンの反応⑤
をご参照。

とりあえずアルキン版での反応はこんな感じ。

こいつは置換基の少ない方に結合する逆マルコフニコフだったよね。
アルケンになるのでcis体とtrans体のどちらもできちゃいます。

ちなみにこの時の生成物をハロゲン化アルケニルというよ。
こいつは1、S2反応を起こさない優れもの
なので以下のようにアルケンを追加できたりします。
※細かい話は 応用編:アルコールの合成③ をご参照。

7.ヒドロホウ素化―酸化

反応については
応用編:アルケンの反応③
をご参照。

とりあえずアルキン版での反応はこんな感じ。

上の通りでBHをそのまま使うと1回で終わらず
2回目のBH付加が進行してしまう。

このままではアルケンの部分を生成できないので
BHのHの部分を立体障害の大きいものに変えた以下のようなものを使う。

これにより逆マルコフニコフ則に従ったものが生成できるってことだね。
で、BHとRBHを置き換えると以下のようになる。

置換基が少ない方に結合するので逆マルコフニコフ
なんで同じ方向から近づくのにtrans体?と思う人もいるかもしれない。
実際のところ同じ方向から近づいてはいるのだけれど
直線に上から近づいている+立体障害を避けるため
trans体になる、と考えられております。

そしてこいつもケト―エノール互変異性となります。

アルキンの反応は以上。

ではまた次回。

© 2020 猫でもわかる有機化学

それでは前回の続きから。

今回は主に求電子付加反応の話になる。
応用編:アルケンの反応①
でも説明したけど二重結合は電子が豊富なので求電子攻撃されやすい。
三重結合は二重結合よりも電子が豊富。
なのでさらに攻撃されやすい。
ということを最初に言っておきます。

2.ハロゲン化水素の求電子付加反応

反応はこんな感じで
HとBrがそれぞれ逆側に付加される(アンチ付加)。

一応補足しておくとアルケンの時と考え方は同じで
マルコフニコフ則に従って置換基が多い方にBrが結合する。
理由はビニル型カルボカチオンを見てみると分かりやすい。
カルボカチオンは置換基が多いほど安定だったよね?
だからマルコフニコフ則に従った生成物ができます。

で、1当量ならここで反応は終わるんだけど
2当量になるとこのままアルケンにハロゲン化水素が付加する反応になり
アルカンが生成する。

これもマルコフニコフ則に従って置換基の多い方にBrが結合する。

さてなんとなく違和感を感じている人もいるだろう。
今までと違って下のようにカルボカチオンにBrがついているからね。

実はBrは+R効果、-I効果の両方の性質を持っている。
※それぞれの効果については 基礎編:酸性の強弱 を参照

そして効果の強さは
+R効果 > -I効果
になっているんだ。

+R効果は隣に+がないと働かない。
ということで(A)ではBrから電子をもらえるため、安定化する。
一方(B)は隣に電子を欲しがってるやつがいない。
なので+R効果が働かない。
けど-I効果は働いてしまう。
結果、電子が少ないところから奪おうとするのでより不安定になってしまう。
ということなんだ。

ということで(A)の状態が安定なので
置換基が多い方にBrが結合するってことだね。

 

3.ハロゲンの求電子付加反応

2.と考え方は同じで
下のように2つのBrが逆側にそれぞれ付加される(アンチ付加)
理由についても同じなので説明は省略します。

で、これも2当量の場合はアルケンにハロゲンが付加する反応になり
アルカンが生成されます。

4.水和反応

最初にも書いたけどアルケンの時よりも電子が豊富。
ということでHOと酸触媒で反応が出来ます。

なぜか置換基多い方にOHが結合してる…
ということで反応機構を見てみよう。

アルケンができたとき、カルボカチオンができてるよね。
今回よく出てきているけど
カルボカチオンの安定性は置換基が多いほど安定。
だから置換基が多い方にHOが攻撃するんだ。

あとOHがカルボニル基になってるところだけど…
ここで詳しくはやらない。
アルデヒドケトンのところで詳しくやろうと思います。(長くなるので)

今のところは下図のようなエノール型、ケト型を
行ったり来たりできるということを覚えておいてください。
ケトーエノール互変異性といいます。

さてこの反応については一つ注意しておいてほしいところがある。
末端アルキンでは起こらない、ということだ。

なんでかっていうと内部アルキンは
両側にメチル基があるおかげで超共役がはたらき
三重結合部分がとても電子が豊富な状態になっている。

この電子が豊富な状態だからこそ、こういった反応を起こせるんだ。
だけど末端アルキンはメチル基が1個しかないので
反応を起こすエネルギーが三重結合部分に足りない。

だから求電子攻撃を受けづらいってことだね。

ではまた次回。

© 2020 猫でもわかる有機化学

さて今回はアルキンの反応について

主なものは

1.水素化反応
2.ハロゲン化水素の求電子付加反応
3.ハロゲンの求電子付加反応
4.水和反応
5.水銀イオン触媒による水和反応
6.HBrのラジカル的付加反応
7.ヒドロホウ素化-酸化

今までの流れで分かると思うけど今回も
アルケンと被る所が多い
ので、タイトルを見てが出ていたらアルケンの反応
を復習しておくことをおすすめします。

それでは一つずついってみよー。

1.水素化反応

水素化反応については
応用編:アルケンの反応①
をご参照。

アルキンの場合は2通りの方法があって
①アルカンまで戻す方法
②アルケンで止める方法
があります。
順番に見ていこう。

①アルカンまで戻す方法

これはアルケンの時と同じ方法になる。
以下のような感じ

この方法の欠点はアルケンの状態で止めることが出来ないので
一気にアルカンになってしまう、というところだ。
※アルケンにしたものが欲しい時などに対応出来ない。

そこで②の方法になる。

②アルケンで止める方法

さて アルケン ということで考えないといけない要素は何だっただろうか?

そう、cistransがあったよね。
ということでさらに2つに分けて考えないといけません。

・cis体を作る方法

Lindler触媒 を使って
アルキンとを反応させることで生成します。

新しい単語が出たので解説しておくと
Lindlar触媒 というのは
・5%Pd-CaCO
・Pd(OCOCH
・quinoline
が混ぜ合わさったものだ。

こいつが一般的な触媒と何が違うのかというと
触媒作用が弱い、という特徴がある。

中身の解説をすると
5%Pd-CaCO
は、炭酸カルシウムにパラジウム触媒をくっつけたもの。
こいつは反応を起こしやすくする、という一般的な触媒の役割になる。
そして
Pd(OCOCH
quinoline
こいつらがパラジウム触媒を弱める働き(被毒っていいます)を持っているんだ。
なので反応を活性化させる触媒の作用を弱くすることが出来る。

なんで、そんなことをするかというのは言わずもがな
アルケンに水素をくっつけにくくさせたいから
だね。
こいつを使うことでアルキンに対しては何とか反応できるけど
アルケンに水素つける反応はとても遅くなる。
だからアルケンを取り出せるというわけだ。

※ちなみにこいつは別にアルキンのみに反応するわけじゃない。
NOをNHに還元する反応なんかにも使えます。

・trans体を作る方法

さてtransを作りたい場合はまたちょっと違う方法になってくる。
Birch(バーチ)還元
という方法だ。
簡単にいうと液体アンモニア中で金属を使って還元する
という方法だ。
※反応名の由来は発見者のアーサー・ジョン・バーチから。

まずは大まかな反応を見てみよう。

この反応は他の還元反応と一線を画すもので
金属が融けることによって発生する溶媒和電子を使う。
↑だけ読むとよくわからないと思うので解説すると
この金属というのはNaやLiなんかの
陽イオンになりやすいもの
のことを指す。
この金属はアンモニア中という周りがHをもらいやすい環境において
以下のように電子を放出し、陽イオンとなる。

そしてここで発生した電子がアルキンと金属ナトリウムが反応し
以下のようなラジカルアニオンができる

この段階ですでにtrans体の片鱗が見えるね。
さてここで なんでcis体にならないの? と思うかもだけど
cis体になると置換基2つが立体反発のため不安定になってしまう。
だからcisではなくtrans体ができるというわけだ。

そして次にNHプロトン化する。

後はこれらの反応をもう一度繰り返すことで目的のtransアルケンができるというわけだ。

反応としては以上かな。

あと上の方で
>この反応は他の還元反応と一線を画すもので
と書いたけど
一例を紹介しておくと
この反応は珍しいことに他の還元反応では不可能な
ベンゼン環の内部の2重結合の還元ができたりします。

一発目から大分長くなってしまった…
お疲れ様。

ではまた次回。

 

© 2020 猫でもわかる有機化学

今回はアルキンの合成について

主に方法は以下の2つ

・ジハロアルカンの脱離
・アルキルアニオンのアルキル化

では一つずついってみよー。

1.ジハロアルカンの脱離

応用編:アルケンの合成
で紹介した ハロアルカンのE2反応 を覚えているかな?
簡単に言えばあれをもう1回やればアルキンを合成できる
という考え方だ。

さて新しい単語が出てきたので解説を
当量というのは簡単に言うと
反応を完了させるのに必要な量という意味だ。

ではなぜ “2" 当量 となっているのか?
それは上の反応を細かく見てみると以下のような反応が起こっているからだ。

・アルケンを作るのに1当量
・アルケンからアルキンを作るのに1当量
が必要になっており、合わせて2当量になるってことだね。

ここで注意してほしいのは
末端アルキン
を作る場合の考え方だ。

応用編:アルキンの特徴 でも触れたけど
末端アルキンには少しだが酸性度がある。
そして周りはHをとりやすい塩基だらけ・・・
そう、このままではアルキンではなく
アルキルアニオンができてしまうんだ。

これを防ぐためには、3当量の塩基を用いて
以下のように末端アルキンのHも完全に塩基と反応させておく必要があるってことだね。

eqはequivalentの略で当量のこと。
論文とかではこういう書き方をしたりします。

そしてこの後HOと反応させ、目的のアルキンを得るというわけだ。

補足をするとHOのpKaは約15で
末端アルキンより酸性度が高い、だから起こせる反応だね。

2.アルキルアニオンのアルキル化

タイトルで分かった人もいるかもだけど
ようは1.の話で出てきた
末端アルキンには酸性度が少しはある
ということを利用して
アルキンをアニオン化
ハロアルカンに求核攻撃させてアルキンをくっつける方法だ。
簡単に書くと以下のような感じだね。

ここで注意しないといけないのは
酸性度が低いせいでアニオン化するととても不安定になる。
だから反応しやすいということだ。
そのためS2反応が起こりやすい1級ハロアルカンでないとこいつは使えない。
第2,3級ハロアルカンだと以下のように立体障害のせいでE2反応がおこり、アルキンは作ることが出来ない。

ただこいつには便利なところもあって
アルキルアニオンは言ってみれば塩基のようなものなんだ。
だから以下のような感じで多くの反応のバリエーションを持つことが出来ます。

ではまた次回。

© 2020 猫でもわかる有機化学

では特徴を説明していくよ。

解説ポイントは以下の6つ

・構造
・双極子モーメント
・末端アルキンの酸性度
・沸点・融点
・水素化熱
・燃焼熱

アルケンと被るところも多いので今回はサクサク行きます。
ではいってみよー。

1.構造

細かい部分は
基礎編:混成軌道
基礎編:結合
あたりをご参照。

以下の通り構造としては
σ結合1つπ結合2つからなる直線構造になっております。

2.双極子モーメント

細かい部分は
基礎編:原子、分子の間に働く力
応用編:アルケンの特徴①
あたりをご参照。

上で 直線構造 ということが分かったので
ある程度想像がついた人も多いんじゃないかな?

図で描くとこんな感じ

電子求引性はs性が高いほど大きい。
だから sp混成軌道>sp3混成軌道 になる。
↑で考えると
分子双極子モーメントは発生する
と考えちゃう人もいるかもしれない。
だけど、実際は見ての通り打ち消し合うように発生している。
なので全体的な分子双極子モーメントは0になるってことだね。

3.末端アルキンの酸性度

酸性度については
応用編:アルケンの特徴②
あたりをご参照。

アルケンの特徴を思い出してほしいのだけれど
アルキンはsp2混成軌道よりさらにs性が高いsp混成軌道を持っている。
要するに酸性度が高い

参考までにpKaを比べると以下のような感じ。

このおかげで
端っこにアルキンを持つ 末端アルキン
は強い塩基(例えばNaNH2、グリニャール試薬など)を使えば
以下のようなアルキニルアニオンになる。

4.沸点・融点

細かい部分は
応用編:アルケンの特徴②
をご参照。

アルカンとアルケンを比較した時
分子間の相互作用が大きい
からアルケンの方が沸点は高くなった。
↑から分かる通りで、
アルキンの沸点・融点はアルケン、アルカンよりも高くなる。

さてここでもう一段階深く考えてみたいのが
アルキン同士の場合はどういった差が出るのか?
ということだ。

細かい話は次の項でするのだけれど
例えば1-butyneと2-butyneを比較すると
以下のような差が出てくる。

ちなみに1-butyneのように端にアルキンがある場合
末端アルキン
2-butyneのように端にアルキンがない場合
内部アルキン
って呼びます。

5.水素化熱

細かい部分は
応用編:アルケンの特徴③
をご参照。

さて水素化熱を思い出してくれたら
4で挙げた内容の解説をしていこう。


※念の為いっておくと
この反応には全て触媒(Pt-Cなど)
が使われております。

ΔHが大きい方が安定
なので内部アルキンの方が安定ということが分かるね。
理屈としては結局今まで出てきた話の延長で
sp3-sp3よりもsp3-spの方が結合が短くて強固だからだ。
だからsp3-spの数が多い内部アルキンの方が安定になるってことだね。

6.燃焼熱

まず燃焼熱とは?
これはある物質が完全燃焼した時の熱量のことだ。

アルキンがアルカン、アルケンと比べて
非常に高い燃焼熱を持つ…
という意味ではありません。

とりあえず以下を見てほしい。

この燃焼熱が発生したとき、アルキンでは
2500℃以上
の高熱が発生する。
なぜかというと

発生する熱=燃焼熱/生成物の量

となっているためだ。
実のところ燃焼熱を基準で見た場合
propane>acetylene
になるのだけれどそのエネルギー
3つのCO 4つのH
分けることになる。
だから結果としてacetyleneよりもはるかに小さなエネルギーになってしまうんだ。

このことを利用してacetyleneは
・バーナーの燃料
・金属の切断や溶接(※)
※acetylene+酸素を組み合わせた
酸素アセチレン炎(3000℃以上)
に使われてたりします。

ではまた次回。

© 2020 猫でもわかる有機化学