今回はアルキンの合成について

主に方法は以下の2つ

・ジハロアルカンの脱離
・アルキルアニオンのアルキル化

では一つずついってみよー。

1.ジハロアルカンの脱離

応用編:アルケンの合成
で紹介した ハロアルカンのE2反応 を覚えているかな?
簡単に言えばあれをもう1回やればアルキンを合成できる
という考え方だ。

さて新しい単語が出てきたので解説を
当量というのは簡単に言うと
反応を完了させるのに必要な量という意味だ。

ではなぜ “2" 当量 となっているのか?
それは上の反応を細かく見てみると以下のような反応が起こっているからだ。

・アルケンを作るのに1当量
・アルケンからアルキンを作るのに1当量
が必要になっており、合わせて2当量になるってことだね。

ここで注意してほしいのは
末端アルキン
を作る場合の考え方だ。

応用編:アルキンの特徴 でも触れたけど
末端アルキンには少しだが酸性度がある。
そして周りはHをとりやすい塩基だらけ・・・
そう、このままではアルキンではなく
アルキルアニオンができてしまうんだ。

これを防ぐためには、3当量の塩基を用いて
以下のように末端アルキンのHも完全に塩基と反応させておく必要があるってことだね。

eqはequivalentの略で当量のこと。
論文とかではこういう書き方をしたりします。

そしてこの後HOと反応させ、目的のアルキンを得るというわけだ。

補足をするとHOのpKaは約15で
末端アルキンより酸性度が高い、だから起こせる反応だね。

2.アルキルアニオンのアルキル化

タイトルで分かった人もいるかもだけど
ようは1.の話で出てきた
末端アルキンには酸性度が少しはある
ということを利用して
アルキンをアニオン化
ハロアルカンに求核攻撃させてアルキンをくっつける方法だ。
簡単に書くと以下のような感じだね。

ここで注意しないといけないのは
酸性度が低いせいでアニオン化するととても不安定になる。
だから反応しやすいということだ。
そのためS2反応が起こりやすい1級ハロアルカンでないとこいつは使えない。
第2,3級ハロアルカンだと以下のように立体障害のせいでE2反応がおこり、アルキンは作ることが出来ない。

ただこいつには便利なところもあって
アルキルアニオンは言ってみれば塩基のようなものなんだ。
だから以下のような感じで多くの反応のバリエーションを持つことが出来ます。

ではまた次回。

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では特徴を説明していくよ。

解説ポイントは以下の6つ

・構造
・双極子モーメント
・末端アルキンの酸性度
・沸点・融点
・水素化熱
・燃焼熱

アルケンと被るところも多いので今回はサクサク行きます。
ではいってみよー。

1.構造

細かい部分は
基礎編:混成軌道
基礎編:結合
あたりをご参照。

以下の通り構造としては
σ結合1つπ結合2つからなる直線構造になっております。

2.双極子モーメント

細かい部分は
基礎編:原子、分子の間に働く力
応用編:アルケンの特徴①
あたりをご参照。

上で 直線構造 ということが分かったので
ある程度想像がついた人も多いんじゃないかな?

図で描くとこんな感じ

電子求引性はs性が高いほど大きい。
だから sp混成軌道>sp3混成軌道 になる。
↑で考えると
分子双極子モーメントは発生する
と考えちゃう人もいるかもしれない。
だけど、実際は見ての通り打ち消し合うように発生している。
なので全体的な分子双極子モーメントは0になるってことだね。

3.末端アルキンの酸性度

酸性度については
応用編:アルケンの特徴②
あたりをご参照。

アルケンの特徴を思い出してほしいのだけれど
アルキンはsp2混成軌道よりさらにs性が高いsp混成軌道を持っている。
要するに酸性度が高い

参考までにpKaを比べると以下のような感じ。

このおかげで
端っこにアルキンを持つ 末端アルキン
は強い塩基(例えばNaNH2、グリニャール試薬など)を使えば
以下のようなアルキニルアニオンになる。

4.沸点・融点

細かい部分は
応用編:アルケンの特徴②
をご参照。

アルカンとアルケンを比較した時
分子間の相互作用が大きい
からアルケンの方が沸点は高くなった。
↑から分かる通りで、
アルキンの沸点・融点はアルケン、アルカンよりも高くなる。

さてここでもう一段階深く考えてみたいのが
アルキン同士の場合はどういった差が出るのか?
ということだ。

細かい話は次の項でするのだけれど
例えば1-butyneと2-butyneを比較すると
以下のような差が出てくる。

ちなみに1-butyneのように端にアルキンがある場合
末端アルキン
2-butyneのように端にアルキンがない場合
内部アルキン
って呼びます。

5.水素化熱

細かい部分は
応用編:アルケンの特徴③
をご参照。

さて水素化熱を思い出してくれたら
4で挙げた内容の解説をしていこう。


※念の為いっておくと
この反応には全て触媒(Pt-Cなど)
が使われております。

ΔHが大きい方が安定
なので内部アルキンの方が安定ということが分かるね。
理屈としては結局今まで出てきた話の延長で
sp3-sp3よりもsp3-spの方が結合が短くて強固だからだ。
だからsp3-spの数が多い内部アルキンの方が安定になるってことだね。

6.燃焼熱

まず燃焼熱とは?
これはある物質が完全燃焼した時の熱量のことだ。

アルキンがアルカン、アルケンと比べて
非常に高い燃焼熱を持つ…
という意味ではありません。

とりあえず以下を見てほしい。

この燃焼熱が発生したとき、アルキンでは
2500℃以上
の高熱が発生する。
なぜかというと

発生する熱=燃焼熱/生成物の量

となっているためだ。
実のところ燃焼熱を基準で見た場合
propane>acetylene
になるのだけれどそのエネルギー
3つのCO 4つのH
分けることになる。
だから結果としてacetyleneよりもはるかに小さなエネルギーになってしまうんだ。

このことを利用してacetyleneは
・バーナーの燃料
・金属の切断や溶接(※)
※acetylene+酸素を組み合わせた
酸素アセチレン炎(3000℃以上)
に使われてたりします。

ではまた次回。

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