フェノールの反応⑤

それではラスト~

6.自然界の酸化還元過程

フェノールの酸化還元自然界でも多く行われている。

ここでは基本的な反応と実際に行われている自然界の反応に分けて説明していきます。

(1)基本的な反応

[a]共役付加反応

p-ベンゾキノンにHClが1,4付加反応後
互変異性化(ケトン→アルデヒド)して
2-クロロ-1,4-ベンゼンジオール(2-chloro-1,4-benzenediol)
ができる。

※反応が分からなければ α,β-不飽和カルボニル化合物の反応② を参照

見たまんまでとても不安定で合成してもすぐ分解し始めて
大体1日もすれば完全に分解したりするので確保がちょっと難しいです。
※実はお肌のあれこれでよく登場するメラニンの前駆体だったりもします。

前回の復習になるけど
互変異性化が起こるのは
2-クロロ-1,4-ベンゼンジオールが芳香族性を持つことによって
より安定になっているからです。

[b]Diels-Alder反応

見覚えがある反応名なんじゃないですかな?
忘れた人は Diels-Alder反応① を読み直してね。

以下のようにジエンとアルケン(ここではp-ベンゾキノン)が
環化付加反応して6員環ができる反応になります。

※6員環の右側のHはcisになることに注意しよう。
Hが他の置換基に置き換わったときに注意が必要だよ。

そしてこの後には[a]も発生するんだ。
要するに酸によって互変異性化してより安定な芳香族化合物になるってことだね。

疑問思った人がいるかもしれないので補足しておくと
Clが消え去っているのは、を加えることでケト-エノール平衡を自由にできるようになるため
Clの代わりにHに置き換わったものが一部出来てるためです。
参考:ジエンの反応

(2)自然界の反応

さて、基本的な解説を終えたところで
自然界では具体的にどんな感じの反応が起こっているかを紹介しておこう。

[a]ユビキノン

まずユビキノン(補酵素Q)っていうのは生物の細胞内にある
ミトコンドリアの電子伝達体、つまりはエネルギー作るための材料のことだ。

コエンザイムQ10とかビタミンQなんて呼ばれたりもする。
ビタミン?って思われた人もいるんじゃないかな?

そうビタミンは
「生物が自分の体内で十分な量を合成できない
 炭水化物・タンパク質・脂質以外の有機化合物の総称」
なので体内で合成できるユビキノンは正確にはビタミンではない。

けどまぁここら辺が結構あいまいになっていて過去の経緯で
「ビタミン」ってついているやつは結構そのまま放置されちゃっている
現実があるのです。。。

さて話を戻して、以下のようにユビキノンは
電子とHをもらって還元型になったり戻ったりすることができます。


※本当はOが1つずつ還元型になるんだけど、ここではそこまで重要ではないので
×2で2回反応を起こしているという意味で省略しております。

何の役立つのか?は色々ありすぎて細かい説明は出来ない控えますが
簡単に言うと、体の各部位で必要な物質を合成するときに
電子が必要になる場合
その電子を供給する役割を担っています。

[b]ビタミンE

さて健康志向が強くなっている昨今
「体の炎症を抑える抗酸化物質をとって「老化を防止できる」
というキャッチコピーを一度は聞いたことがあるんじゃないでしょうか?
実はこの抗酸化物質の事です。

具体的には以下のように体内で酸化還元反応を起こしています。

抗酸化作用はフリーラジカルを除去するからというのが理由ですが
その作用があるのは上の3つの真ん中部分です。
O-がフリーラジカルに電子を与え、
自信が酸化されることで他の連中が酸化されるのを防いでいるというわけです。

[c]ビタミンC

お次も「お肌にいい!」というあれです。

ちまたではアスコルビン酸と呼ばれる時もありますが同じものです。
こいつも以下のように体内で酸化還元反応をry…って感じで働いています。

さりげなく自己犠牲後のビタミンEとセットで書かれておりますが
ビタミンCはフリーラジカルによって酸化された自己犠牲後のビタミンEに
自分の電子を与えてビタミンEを復活させる役割を持っています。
※これ以外にもコラーゲンの合成に使われたり色々ありますがここでは省略します。

そして酸化されてラジカル化したビタミンCは
この後さらに分解されて体外に出ていきます。

よく世間で言われるビタミンCはどれだけ摂っても1日でなくなるというあれですな。

ちょっと長くなりましたがフェノールの反応は以上です。
お疲れ様でした。

ではまた次回。

 

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