フェノールの反応④

それでは続きから~

5.フェノールの酸化

フェノールは一電子移動の反応機構に従って
カルボニル誘導体に酸化されうる。

この結果
シクロヘキサジエンジオン(cyclohexadienedione)
※別名:ベンゾキノン(benzoquinone)
と呼ばれる環状ジケトンができる。

これだけでは?になるかもしれないので
オーソドックスな例をあげておきます。

(1)o-ベンゾキノン

1,2-ベンゼンジオール(1,2-benzenediol,カテコール(catechol))
は酸化されて
3,5-シクロヘキサジエン-1,2-ジオン(3,5-cyclohexadiene-1,2-dione)
※別名:o-ベンゾキノン(o-benzoquinone)
になります。

見たまんまでとても不安定で合成してもすぐ分解し始めて
大体1日もすれば完全に分解したりするので回収が困難です。
※実はお肌のあれこれでよく登場するメラニンの前駆体だったりもします。

(2)p-ベンゾキノン

1,4-ベンゼンジオール(1,4-benzenediol)
※別名:ヒドロキノン(hydroquinone)
は酸化されて
2,5-シクロヘキサジエン-1,4-ジオン(2,5-cyclohexadiene-1,4-dione)
※別名:p-ベンゾキノン(p-benzoquinone)
になる。

こいつは(1)に比べるとぜんぜん安定で回収率は9割を超えたりしております。
理由は反応機構を見ると分かりやすい。

まず、脱プロトン化によりフェノキシドイオンが生成し
それが一電子酸化されてフェノキシラジカル(phenoxyradical)になる。

残ったOH基からプロトンがとれる
セミキノンラジカルアニオン(semiquinone radical anion)ができ
さらに2回目の一電子酸化によりベンゾキノンになる。

さて、ポイントとして
この反応機構中のすべての中間体は芳香族性を持っている
っていうのがわかるかな?

そうつまりかなりの共鳴安定化を受けている(※)んだよね。
※セミキノンにいたっては共鳴構造が2つあるのでさらに安定

なので一見不利な見た目のp-ベンゾキノンでも安定状態になっているんだ。

ちょっと短いけどキリがいいので今回はこの辺で~

ではまた次回。

 

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