さて前回の 基礎編:光学活性 の内容を踏まえ今回は光学異性体について紹介していくよ。
まず異性体っていうのは同じ種類の原子を持っていても違う構造をしている物質のことだ。
あたりで紹介しているけど配置が違うと安定性が変わって別の物質になる。
今回はこれが光学活性によって起こるっていうことだよ。
光学活性で紹介したとおり旋光性には右旋性、左旋性の2つがあって光学異性体でも当然のごとくこの2つがある。
まずこの2つの命名、表記方法について紹介していくね。
これはIUPAC命名法で用いられてるもので一番多く用いられてる方法だ。
とりあえず今回は以下の化合物を参考にするね。
ポイントはまずキラル中心(不斉中心、不斉原子)を探すところからだ。
光学異性体は左右の回転する向きが違うだけで大本の構造は一緒なんだよね。
そして回転している、ということは回転の元になる中心があるっていうことになる。
キラル中心っていうのはその中心の原子のことだよ。
さて、キラル中心がわかったところで、次はこれに引っ付いている原子に優先順位をつけていく。
優先順位は以下のようなに判断できる。
例:O>C>H
例:CH2OH>CH3 この場合 O>H っていうこと
例:CF3>CF2H
以上から優先順位が OH>COOH>CH3>H になるってことが分かる。
そして次は優先順位が一番低いものを一番後ろにくるようにする。
以下のような感じ
そして最後に①→②→③の順番で
・時計回りならR
・反時計回りならS
だよ。今回は反時計回りだからSってことだね。
最後に名前についてはR、Sを名称の先頭につける。
なのでこいつの名前は (S)-2-hydroxy propanoic acid
になる、というわけ。
オマケとして当然のことながらR、Sが複数ある場合もある。
この場合はR、Sの先頭に優先順位をつける。
例えば以下のようになっている場合(赤字は優先順位だよ)
名前としては (2R,3R)-2,3,4-hydroxy carboxylic acid
になる。
これはまずCOOHが一番優先度が高い ので1となり、ここを基準として炭素鎖に番号がつく。
そうするとキラル中心っぽい原子が2つ出てくるよね。
つまりこの場合はRが2つあることになるんだ。
この表示方法は糖やアミノ酸でよく使われる。
これはこちらを使った方が立体配置をイメージしやすいからなんだ。
ちなみにこの”DL”はそれぞれ
D → dextro-rotatory:右旋性(+)
L → levo-rotatory:左旋性(ー)
の頭文字から来ています。
さて今回は割とわかり易いribose(RNAの構成成分で生化学で出てくる)で考えていくよ。では順番に。
※鏡像異性体が存在するので2つあります。
CHOが一番大きい(※)よね?だから上記のようになる。
※ピンと来なかったら 基礎編:命名法 へ。
D-glyceraldehydeを基準としているのは自然界では通常D体で存在しているかららしい。。。
で、これらを参考にriboseを見てみると
となる。
さてriboseにはキラル中心が3つあるね。
この時ポイントとなるのはCHOから最も離れてる箇所(赤丸部分)だ。
ここで
D-glyceraldehydeと同じR配置はD-ribose
L-glyceraldehydeと同じS配置はL-ribose
となる。
注意してほしいのはこのD、Lがそれぞれ右旋性、左旋性の頭文字からきてるけど、実際の旋光性とは一致しないということ。
※まぁglyceraldehydeは一致するけど、必ずしもそうでないって意味です。
これはDLの定義をあくまでglyceraldehydeと形が似ているところから命名してるだけだからなんだ。
もっというなら旋光性を基準にしてるわけではない。
だからDなのに左旋性、Lなのに右旋性もありえてしまう。
結局のところ
RS表示法は置換基の優先度(順位)に依存
→立体異性体を区別したい
DL表示法はFisher投影法で表したときの絶対配置に依存
→立体配置を明確にイメージしたい
となっていて、それぞれ用途によって使いわけられているってわけだね。
ではまた次回。
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