それでは続きから~。
さてタイトルだけ見ると?かもしれないが
これは共鳴についての補足説明みたいなものだと思ってくれればいい。
実はカルボン酸誘導体の構造から「共鳴の程度」を観察することができるんだ。
Lがハロゲン→アミドへ進むと従って、C-Lの長さはどんどん短くなっているんだけど理由がわかるかな?
これは二重結合を持つ共鳴構造がより安定であるためなんだ。
※通常の構造は全ての共鳴構造を重ね合わせたものと考えられているからだよ。
何が言いたいかというと
C-L結合が短いほど、結合は強い
ということなんだ。
で、だから何なのかというとまずは以下を見てほしい。
さて察しはついただろうか?
そう…C-L部分が二重結合になりやすいかどうかで
回転しやすいかどうか
が変わるんだ。
単結合になればアミドの場合、上記のように
21kcal/molのエネルギーで回転できるようになる。
この回転のしやすさが
二重結合を持つ共鳴構造になりにくいか
なんだよね。
何となる分かると思うけどハロゲンが一番回転しやすいです。
※ぶっちゃけ酸無水物~アミドは実験的にみるとC-Lの長さはそんなに変わりませぬが…
最初に言っておくとカルボン酸誘導体はカルボン酸と同じく
酸性と塩基性の両方の性質
を持ちます。
※ちなみにカルボン酸誘導体がどの程度共鳴しているかはその塩基性度と酸性度から分かるのです。
ということで順番に見ていきましょう。
さて4種類のカルボン酸誘導体のプロトン化には全て
強酸
が必要だ。
使えば以下のようにエノラートができる。
さてここでピンと来ないことは無いと思うけど
塩基性の強さはプロトン化された後の共鳴構造(共役酸)が安定であればあるほど強くなる。
※参考 基礎編:塩基性の強弱
ということでカルボン酸誘導体の塩基性の強さは以下のようになるんだ。
※この順番になる意味が理解できなかったら
□基礎編:酸性の強弱 の 誘起効果、共鳴効果 辺りを読んでみよう。
簡単に説明すると、
アミド>エステル については
電気陰性度がO>N になる。
このため+を持った時により安定なのはN>Oとなるんだ。
その隣にある電子供与性誘起効果をもつRの数が
アミド>エステル なのも原因の1つだね。
よって共鳴構造の安定性は アミド>エステル となる。
エステル>酸無水物 については、記憶に新しい
応用編:カルボン酸誘導体の特徴①
の1.相対的安定性のときと同じ理由だ。
共にOに+がある時を考えてみるとわかると思うけど
ただでさえ不安定なのに
酸無水物はそこからさらに共鳴により電子が減らされて
より不安定になるのです。
最後に 酸無水物>ハロゲン化アシル について
これもさっきと同じ1.相対的反応性のときと似た理由になる。
Fは電気陰性度がOより大きい
ってところでもう説明は不要だろう。
で、残りのハロゲンは電気陰性度もある程度高い点もあるんだけど
ハロゲンのp軌道が大きいので、カルボニル炭素の比較的小さい2p軌道と重なりが小さいんだ。
こいつらが組み合わさるので共鳴の安定性は 酸無水物>ハロゲン化アシル となるってわけです。
さて酸性の場合は以下のように
C=Oに隣接するCに結合したH(α水素)の酸性度の話になる。
よくわからなかったら 基礎編:酸性の強弱
を読み返してほしいんだけど
結論でいうとこいつも塩基性のときと同じで、Hが脱離後の
共鳴構造(共役塩基)が安定であるほど酸性は強くなるんだ。
つまりはα水素の-をより分散できるものほど酸性は強くなるってことです。
それを踏まえて強弱関係をまとめると以下になる。
※酸無水物はエステルとそんなに変わらないので省略しております。
まぁ酸と塩基は表裏一体なので結局は同じ理由だね。
+を安定化させるための作用が今度は-側で働いてるので
結果塩基性の逆になるってことです。
特徴はこんな感じかな。
次回はより深いところへ…。
ではまた次回。
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