さてでは例によって特徴から説明していくよ。
解説ポイントは以下の6つ
・構造
・双極子モーメント
・酸性度
・沸点・融点
・水素化熱
・相対的安定性
・・・長くなるので3回くらいに分けます。
ではいってみよー。
まずは復習もかねて 基礎編:結合 の内容から
アルケンの二重結合は以下のようにσ結合、π結合から作られている。
で、このσ結合とπ結合それぞれがどういうものだったか覚えているかな?
二重結合の
・1本目はσ結合
・2本目はπ結合
だったよね。
もうちょっと具体的な言い方をするなら
・σ結合は丁度お互いの原子起動が重ね合わさっている状態
・π結合は隣り合ってなんとか電子軌道が重ねているだけの状態
なんだ。
予想はつくと思うけど当然σ結合の方が結びつきが強い。
どれくらいの差があるかというと
CH2=CH2では
σ結合の強さ:108kcal/mol
π結合の強さ:65kcal/mol
くらいの差がある。。。分かり難いかな。。。まぁσの方が強いのです。
でまず何が予測出来るかというと
二重結合がある→sp2混成軌道となっているってことがわかる。
※?になったら 基礎編:混成軌道 を見直してみよう。
さて単純な知識でレベルの話ならこれくらいでOKなのだけど
応用なので一つの注意点を紹介しておこう。
まずアルケンは二重結合をもっているがイコールsp2混成軌道という訳ではない。
むしろsp2混成軌道だけで構成されているのは
置換基がすべてのHであるCH2=CH2くらいだ。
ではアルケンに他の置換基がついている場合はどうなるのか見てみよう。
例えば
CH2=CH-CH3
CH2=CHの部分は二重結合なのでsp2混成軌道だろう・・・
ではCH-CH3の部分は?
単結合なのでsp3混成軌道となるとも考えられるよね?
実はsp2混成軌道とsp3混成軌道を
それぞれで構成している
ので、以下のように手をつないでいる状態になってるんだ。
なのでアルケン(置換基にH以外がある場合)は
sp2混成軌道とsp3混成軌道でつながっている構造になっているんだ。
さてこれは 基礎編:原子、分子の間に働く力 の内容になってくる。
結論からいうと
・シス体アルケンは弱い分子双極子モーメントを持つ。
・トランス体アルケンの分子双極子モーメントは0になる。
※ただし同じ置換基を持つ場合なので注意!
では解説していこう。
まず1.で紹介したとおりアルケン(置換基にH以外がある場合)は
sp2混成軌道とsp3混成軌道を持っている。
さてもう常識だと思うけど 基礎編:原子軌道
で紹介した通りsはpよりも原子の核(+)に近い位置になる。
これから何が言えるかというとsはpよりも電子を求引する力(電子求引性)が強いっていうことなんだ。
sp2混成軌道はsが1個とpが2個が合わさったもので
sp3混成軌道はsが1個とpが3個が合わさったのだよね。
まぁ見たまんまで全体におけるsの割合(世間ではs性と呼ぶ)はsp2の方が高い。
ということで電子求引性は
sp2混成軌道>sp3混成軌道
となることがわかる。
この力関係に偏りがある発生するのがいわゆる分極だったよね。
※まぁ今回のはOやClと比べると圧倒的に低いけど。
ということで最初の結論につながります。
まずはシス体の場合は以下のような感じ
※左の大きな矢印が全体の双極子モーメントを表しています。
でトランス体の場合は以下のような感じ
見ての通りで真逆方向に双極子モーメントが発生する
からお互いの力が相殺される。
とりあえず1回目でしたー先は長い。。。
ではまた次回。
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