α,β—不飽和カルボニル化合物の反応④

この単元はこれで最後です。

7.Robinson環化

捨てられた猫に無理矢理頬ずりするような歌 の名前がついているけど

これは前回最後にちょっとお話させてもらった
Michael付加がそれだけで完結しない場合
分子内アルドール縮合を行う連続的な合成反応のことだ。

例によってこれは発見した化学者:ロバート・ロビンソンの名前をとって
Robinson環化(Robinson annulation)って呼ばれています。

実はこの反応は結構色んな種類があって
代表的なものだとドーピングで有名なステロイドがある。
他にも六員環を持つ多環化合物はだいたいこれで合成されています。

では細かくみてみよう。
この反応の反応機構は3段階になる。

(1)エノラートの合成

まずエノラートを作るために塩基で水素をとる必要がある。

今まで触れてこなかったけど、これには条件によって上記のように2つの生成物ができることがある。
※LDAについては 応用編:エノラートとエノールの特徴① をご参照。

何が違うのかというと、塩基の立体障害の有無だ。
まず立体障害の大きさは CHCHOK<LDA となっている。

立体障害の少ない塩基のCHCHOKは温度がある程度高い平衡状態にある場合
置換基の数が多くより安定なエノラートをつくる性質があるんだ。
※このことを熱力学的エノラートと言います。

一方で立体障害の大きい塩基のLDAは温度が低く、非平衡条件下では立体障害の少ないCのHを引き抜く
つまり置換基の少ないエノラートができるというわけだ。
さっきの対比でこのことを速度論的エノラートと言います。

何でこの2つを説明したのかというと、
今回は関係なかったけど生成物によってはLDAを使わざるをえない状況をありえるからです。
まぁここら辺は課題に対してどれが有効かをしっかり見極めるしかない。
頑張ってくだされ。

(2)Michael付加

忘れてたら前回を見直そう。
以下のようにエノラートがα,β-不飽和カルボニル化合物へ求核攻撃します。

(3)-1 エノラートの異性化

立体~とか、互変~とか出てきたけど
「異性化」単体の意味としては分子が原子の組成はそのままで配列が変化して別の分子になること、を意味する。

ん、反応機構の話?と思ったかもしれないけど、これ自体が話題というわけではなくて
次のアルドール縮合に向けての前提の話になるので(3)-1となっています。

まぁようは色々出来る可能性があるので、何が正解かはおいておいて一先ずの候補をピックアップしてみたって段階だ。
考えられるのは以下のような感じで

Michael付加によりできた生成物(A)
共鳴や塩基によるHの脱離により異性化した(B)、(C)
が候補となる。
で、問題はこれの中でどれが主生成物になっているのか?だよね。
その結果がわかるのが最後のアルドール縮合になるってわけだ。

(3)-2 アルドール縮合

アルドール縮合については 応用編:エノラートとエノールの反応③ 辺りをご参照。
で、今回のことを考えると主生成物は(B)になるってことがわかる。

(A)、(C)は生成物から間違ったルートだということが分かるよね。
一応注意していてほしいのは今回はたまたま(B)になったけど、Michael付加するCの数等で結果が変わるってことかな。

α,β-不飽和カルボニル化合物については以上です。

ではまた次回。

 

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