さてアルコールの反応はこれで最後。

エステルの合成

名前のまんまでエステルは以下のようにカルボン酸アルコールが反応することでエステルが生成するよって話。

見て分かると思うけどカルボン酸とアルコールからOが取れることによって生じる化合物になる。
反応は単純にエステル化といわれることもあれば
水がとれてくっつく一連の反応ことから脱水縮合なんて呼ばれたりもするね。
さてエステルっていう紹介をしたのだけれど、今回紹介しているのはカルボン酸エステルの反応だ。

wikiには
・有機酸 or 無機酸のオキソ酸
・アルコール or ヒドロキシ基を含む化合物(例:フェノール)
との縮合反応で得られる化合物のこと全般をさすもの
といったことが書いてある。

これはそのまんまに捉えてもらって問題なくて、実はカルボン酸エステル以外にも色々なエステルは存在する
だけど有機化学の世界では基本的にエステルとはカルボン酸エステルを指す。
生化学では他のも必要になるけど…。
まぁこの辺はあんまり難しく考えずにそういうものだと思っておいてくれ。
※気になったら調べてみよう!

ハロアルカンの合成

これには2つの方法がある。

PBr(三臭化リン)を使った方法

まずPBrについてなんだけど
こいつはルイス塩基ルイス酸両方の性質を併せ持っている
これがどういうことかというと、電子の受け渡しが両方とも出来る超便利なものっていう意味だ。

さてなんでこんな性質を持つかなんだけど、それぞれで見てみよう。

<ルイス塩基の性質をもつ理由>
Pは周期表では第15族。Nと同じ。
ということはP上に非共有電子対をもつ
まぁ単純にこれが理由になるよね(今回何かの役に立つというわけではないが)。

※例として、ルイス塩基として三臭化ホウ素と1:1の安定な錯体を形成するというものがある。

<ルイス酸の性質をもつ理由>
基礎編:求核置換反応 でさんざんでてきた有能な脱離基のBrを覚えているかな?
これを持っている上に、Sp2混成軌道、もっと簡単にいうなら平面構造なんだよね。
つまり、攻撃しやすい上に、Brと簡単に置き換わる配置になっている状況、ということだ。
で今回重要なのはこっちの性質になる。

アルコールとPBrを反応させると以下のようにSN2反応が起こる。

補足として上の例では1級アルコールを使っているけど2級でも3級でも同じようにハロアルカンは作れるよ。
なぜなら求核攻撃する側だからね。

ついでももう一つルイス塩基とルイス酸の性質を併せ持っていれば別にPBrでなくても問題はない。
例えばPI(三ヨウ化リン)なんかでも同じになるってことは覚えておいてね。

SOCl(塩化チオニル)を使った方法

結論は①と同じでSN2反応が起こってClのハロアルカンが生成される。


急に出てきたピリジンが?なのかもなので補足を
まずピリジンが持って行ったClなんだけど
こいつは中途半端に求核攻撃できる強さを持ってたりする。
だから放置しているとせっかく作ったスルホン酸エステルを攻撃してしまい、
収率が悪くなってしまう。
ピリジンは塩基性が強くて、Clを回収するのにとても便利。
だからこの反応に使われているんだ。

でこのスルホン酸エステルを使えば以下のようにハロアルカンを得られる。

さっきスルホン酸エステルは脱離基として便利と紹介したけれど
この反応でできた負電荷は3個のOを用いて共鳴ができるので、この状態でも結構安定
つまりは脱離しにくいってことだよ。

さてアルコール系はここまでなので次回からは別の有機化合物について解説します。

ではまた次回

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さて前回からの続きです。

塩基との反応

これは
基礎編:酸・塩基の定義
で触れている塩基の性質を利用するよ。

まぁ簡単な話で塩基によってOHのHは奪われる
そんでもって奪われたHの代わりに塩基の陽イオンがくっつくことで安定化するって現象が起こる。

これを利用して何が出来るかというと
CHという求核剤を作れるってことだ。
例えばこんな感じ

アルカリ金属との反応

アルカリ金属というのは…なんとなくは分かるよね?
周期表のⅠ族(左端の列ね)の中にある
Li:リチウム
Na:ナトリウム
K :カリウム
Rb:ルビジウム
Cs:セシウム
Fr:フランシウム
のことだ。

ついでにちょっと紹介しておくと周期表で見ると同じⅠ族には水素がいる。
だけどアルカリ金属とは性質が大分異なる
アルカリ金属元素の場合、一価の陽イオンが生成しやすい(まぁ言い方を変えるなら安定化しやすい)
一方、水素の陽イオンであるプロトンはむき出しの正電荷になる。
なので電子を核から引き離すためのイオン化エネルギーが非常に大きい

アルカリ金属元素が一価の陽イオンで安定化しやすい理由は閉殻構造によるものなんだけれど
プロトンには閉殻構造が無いので安定化しようがない。

で、これが最終的にどうなるかというと
水素:共有結合性をもつ
アルカリ金属元素:金属性をもつ
といった性質の違いを与えることになる。

まぁ厳密にいえばイオン半径が小さめなリチウムも
アルカリ金属としてはちょっと変わった反応を見せることはあるけど・・・そこら辺はまぁ趣味の範囲かな?

さて大分脱線したので話しを戻して
上の方でざっと紹介したアルカリ金属の中で一番メジャーなのは・・・まぁNaだろう。
なのでこいつの反応を紹介してみよう。

まぁ見た感じでお察しなのだけれどこいつも2.の時と同じ求核剤を作るための反応になるよ。
2.と違って式だけで見ると?になる人もいるかもしれないのでもうちょっと細かく紹介しておくね。

CHOHのHとNaのeが反応してH2ができるっていうわけだ。

強酸との反応

もう大体想像はつくんじゃないかな?

例えば1級アルコールだとSN2反応がおこる。

そして2、3級アルコールだとSN1,E1反応が起こる

2.~4.については
基礎編:求核と脱離の起こりやすさ
を理解できてたらスルスルっと入っていくと思うので、ピンとこなかったら復習するようにしてね。

カルボカチオンによる転移反応

転移反応っていうのは
化合物の原子(団)が結合位置を変えることで、分子構造(骨格)が変わる反応のことだ。
まぁ例を見て考えていこう

流れとしては
・OHが脱離して2級カチオンになる
・2級カチオンの状態からHが隣に移動する
・3級カチオンになる
って感じだね。より安定な3級や2級アルカンを作ろうとしておこっていることはなんとなく想像がつくことだろう。

さてまぁこいつも動きだけみていると???似なると思うので、原子軌道の動きを追いながら解説してみよう。

隣接しているってことは原子軌道に重なりができてくるんだ。
このことにより電子の移動が可能となってくる。
基礎編:ラジカル でも似たようなことあったけど覚えているかな?

大事なことなので何度もいうけど、化合物ってやつは常にできるだけ安定の状態になろうとする。
移動できるならできるだけ安定な構造をとろうとする
だから転移が起きているわけだ。

さてついでに理解、というか思い出してほしいことが一つ。
この反応はSN1やE1よりも早い
だから3級カチオンができてからはSN1、E1反応が起こりやすくなる
まぁこんなところにも繋がりがあるってことだね。

もう少し続きます。

ではまた次回

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さて前回まででアルコールを作るところまでいったので

今度はこのアルコールを使ってどんな反応が起こせるのか?を紹介していくよ。

主な反応は以下のとおり

・アルコールの酸化
・塩基との反応
・アルカリ金属との反応
・強酸との反応
・カルボカチオンによる転移反応
・エステルの合成
・ハロアルカンの合成

では順番にいってみよー。(例によって長いので分割します・・・)

アルコールの酸化

さて合成でも登場した酸化だね。

まずは例として以下を見てほしい。

酸化剤(この場合はKCr)を使って酸化をしたことを示している。
上記のような感じでアルコールを酸化することで
アルデヒド→カルボン酸
に変化していく。

最初に気にしておいてほしいこととしてアルコールの酸化によって
・アルデヒド
・カルボン酸
2種類の有機化合物が出来るということだ。

なんとなく想像がつくかもしれないけど
大半カルボン酸となり、アルデヒドほとんど入手できない

なのでゲットしたいのが
アルデヒド なのか
カルボン酸 なのか
明確にして、その向かうゴールによって使う酸化剤もかわってくる、ということを知っておいてほしい。

それではまずはちょっとややこしいカルボン酸から説明していくよ。
では代表的な酸化剤とその構造を見てみよう

Cr

CrO

NaCr

さて何か気づかないかな?

実は各酸化剤には共通点があるんだ。
そう、必ずCrOの構造が入っているよね。

なぜこうなっているのかは酸化時の反応機構を見ていくと分かりやすい。
反応には酸化剤の他に酸と水が必要になる。
とりあえず第一段階のアルデヒドまではこんな感じ。

まぁ実はここまではどうでもいい(笑)
肝心なのは次の反応だ。
水和反応の部分は後日紹介するので、一先ずはこんな感じの反応が起こっていると思ってもらえればOK

簡単に解説すると水和反応中に水が付加してしまうことにより自動的にOHが出来てしまっている
このことによりさらに酸化を進行させることができるので一気にカルボン酸になる
なのでアルデヒドを実質ゲットすることはできない=カルボン酸ゲットを狙った反応が起こせるってことになる。

じゃあアルデヒドをゲットするには?

そう、水を必要としない酸化剤、例えばPCCなんかが最適になる。

例えばこんな感じ

ちなみにPCC(pyridinium chlorochromate:クロロクロム酸ピリジニウム)はこんなのです。

なぜ水が不要になるのか?というと・・・まぁ反応機構を見るのが早いね(汗)
以下みたいになってます。

簡単にいうとがHOの代わりになっているってことだね。

あと気づいた人もいると思うけど、酸化剤を使うには酸が必要だ。
だから酸に不安定な官能基があるとその部分も変わってしまうから注意が必要だよ。

ちなみに下のように2級アルコールは何の酸化剤使ってもカルボニルでとまる
まぁHがなくなりますので

そんでもって3級はいわずもがな、不可能になるよね。

結論として
1級アルコール→アルデヒド→カルボン酸
2級アルコール→ケトン
3級アルコール→酸化できない
っていうことだね。

1つ目の解説で結構長くなってしまった…
次回はもう少しサクサク進めるはず…

ではまた次回

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さて今回でアルコールの合成のラスト!

それではいってみよ~。

有機金属反応剤

いきなり聞きなれない言葉が出てきたね。
簡単にいうとこれは炭素原子金属原子共有結合したものだ。

組み合わせを考えるととんでもない数になりそうだけど・・・安心してほしい。

ここでは
①C-Li
②C-Mg
2つしか使わないので。

では具体的な解説を。
「C-」なんて書き方をしたけどきちんと表現するなら以下のような状態で使われる。

①アルキルリチウム

②アルキルマグネシウムハロゲン化物(グリニャール試薬)

さて例えば②なんかで考えると

生成するCとMgの結合ではCが陰性Mgが陽性強く分極している。
だからこいつの有機基(Rの部分ね)は強い求核性をもつんだ。(求核試薬っていうよ)

例えばハロアルカンにLi、Mgをそれぞれ反応させてみると以下のようになる。

注意点としてこの反応はエーテル中で行わないといけない。
なぜならCHすごく強い塩基になるので水があるところではすぐアルコールと反応してHを奪ってしまうからだ。

参考までに紹介するとこんな感じ。

もうちょっと強めにいうとこいつらを合成する際は原料や器具をしっかり乾燥させとかないといけないよ!ってこと。

で、ここからが本番。
アルコールを作るためにはこいつとカルボニルを反応させるんだ。

アルコールの合成①でを使ったを覚えているかな?
簡単にいえばそれがCHに変わったと思ってくれればいい。

まぁこんな感じになる。

で↑の反応機構が↓だ


※Hって書いてるけど、ようは酸のことだよ。
まぁ要するにくれる奴ならOKということだね。

さて実はこのカルボニルを反応させることで色々なものが生成できるようになる。

例をあげると

アルキル基を一つ伸ばしたアルコールを生成することが出来る。

アルデヒド加えることで2級アルコールを生成することが出来る。

ケトン加えることで3級アルコールを生成することが出来る。

などなどといったことが出来る。
実際はもっと色々あるのだけれど、本当にキリがなくなってしまうので
後は調べるなり考えるなりしてもらったらなって思います。

最初に紹介したグリニャール試薬(発見した人がグリニャールさんだからグリニャール試薬)
昨今の有機合成にとっては欠かせないもので、本当に色んな用途に使われる
いってしまえば有機合成界のマルチタレントさんなんだよね。
※グリニャールさんはこの発見でノーベル化学賞もとってます。

だからこそ先人の発見を
しっかりと理解してもらいたいなっても思います。

ではまた次回

 

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さて前回の続きから

「アルコールの合成」の2つ目、カルボニル化合物の還元を説明していくね。

前回最後に説明した酸化、還元を思い出してほしいのだけれど

カルボニルの還元というのは要するに、をもらうことだ。
要は以下のようにな感じでアルコールになるってことだね。

さてこの反応には
・触媒的水素化
・ヒドリド還元
といった2つの方法がある。

順に見ていくとしよう。

触媒的水素化

こいつはシンプルな話で触媒(Pd,Niなど)用いて水素化するってことだよ。
下図のような感じだね。

ヒドリド還元

さてこっちが今回のメインかな?簡単に言ってしまうと、ヒドリドを使って還元する方法だ。

さて、聞きなれない単語が出てきたね。
ヒドリドっていうのはのことで正式には水素化物イオンという。
ちょっと見慣れない感じがするかもだけど見たままで
マイナス電荷の水素イオンのことだ。

多分全く何を言っているか訳がわからなくなっていると思う。
まぁ深く考えずに進んでいこう(笑)

とりあえず代表的な化合物としては
NaBH(水素化ホウ素ナトリウム)

LiAlH(水酸化アルミニウムリチウム)
がある。
ということで、まず構造を見てみよう。

さてこれだけだとよくわからないと思うので
ルイス構造で見てみよう。

オクテット則では電子を8個持っている状態が一番安定だったよね?
例でいうところのAlっていうのはHよりも電気陰性度が小さい
だから電子2個分はHが持っていた方がまだ安定になるっていう状況が出来ている。
だから(ヒドリド)という珍しい状態が出来上がっているってことだね。

で、それぞれカルボニルと反応させると下のようになる。

・NaBHの場合

・LiAlHの場合


Et→Etanolの略です。

アルコールが出来たね。
さて、気づいた人もいると思うけど、この2つはカルボニルを還元するとき微妙に必要な条件が違う。

じゃあそれぞれもうちょっと詳しい反応を見てみよう。

・NaBHの場合

・LiAlHの場合

こいつの場合は2段階の反応機構だ。


さてじゃあ必要な条件の違いとはなんだろうか?

・・・答えは溶媒
プロトン性溶媒

非プロトン性溶媒(今回はEtOだね)
か、ということだ。

じゃあなぜこういった違いが出るのか?なんだけど
そもそもこの2つの化合物がどういった使い方をされるのかをまず紹介しておこう。

まぁ2つとも便利なもので強力な還元剤として働いてくれる。
特にアルデヒドやケトン、カルボン酸、エステルをアルコールへ還元する時には重宝する

ただLiAlHに関していうとプロトン性溶媒を使うと以下のように水素が発生してしまう。

ハガレンマスタング大佐がラストを木端微塵に吹き飛ばしたシーンを覚えているだろうか?
まぁあんな感じの出来事が起こります。

なので還元剤にあわせて溶媒は危なくないものを選んでね♪

もうちょっと続きます。

ではまた次回

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