カルボン酸誘導体-エステル③

それでは続きからー(ラストエステルです。)

7.エステルエノラート

エステルのα水素の酸性度は十分に大きいので、
低温強塩基と反応させると、ester enolate(エステルエノラート)ができる。
※LDAについては、応用編:エノラートとエノールの特徴① をご参照

このエノラートイオンはケトンエノラートと同様に2反応を起こし、アルキル化される。
※アルキル化については エノラートとエノールの反応② をご参照

何が言いたいかというとエステルにはアルキル基をくっつけられますよってことです。

あと注意点なんだけど、エステルのpKaは約25くらいあるってことを気にしておいてほしい。
どういうことかというと、エステルエノラートになると
強力な塩基
になる。
つまりエステルエノラートがハロアルカンとS2反応を起こさず
E2反応が起きたりする可能性もある、ということだ。
※E2反応 については 基礎編:E2反応 をご参照

例で第2級ハロアルカンにしているのは
第1級ハロアルカンではE2反応起きにくい為です、悪しからず。
※E2反応の起こりやすさは 基礎編:求核と脱離の起こりやすさ をご参照

ちなみにエステルエノラートがエステルのカルボニル炭素を攻撃するっていうパターンもある。
これはClaisen縮合って呼ばれているんだけどここで話を始めると長くなるので
別の章で改めて解説しようかと思います。

8.自然界のエステル

さてラストなんですが、今までとちょっと趣向を変えて
自然界に存在するエステルにはどんなものがあるを紹介しようと思います。
まぁトリビアみたいなもんだとお考え下さい。

(1)ろう

まず以下のようにCの数が多い長いカルボン酸、アルコールのことで
それぞれ長鎖カルボン酸、長鎖アルコールと呼ばれてたりします。
CHの部分を長い鎖に見立ててるってことです。

いうまでもないけど上はあくまで一例
以下のように途中でアルキル基が分岐したものなんかも当然含まれます。

つまりは膨大な種類があるっていうことですな。
この長鎖カルボン酸、長鎖アルコールのエステルのことを一般に
ろう(wax) と呼びます。

名前から
ろうそくとか髪のセットにつかうアレを連想する人も多いと思うけど
実はこれ動物の皮膚や毛皮に標準装備されているんだ。

なんでかっていうと特徴として疎水性が高い
つまりは水をはじきやすいっていう性質があるためだ。

人間だと実感しにくい所だと思うんだけど
濡れたままが続く→体温を奪われる→生命の危険にさらされる
ってことなので、自然界ではこの水はけのよさ、的なものは結構重要になってくるんだ。

ちなみに猫ちゃんはこの成分が他の動物と比べて少ないらしく
濡れ状態が続くのが嫌なため、濡れることを嫌う傾向にあるそうです(ΦωΦ)

(2)脂肪

こいつもよく聞くんじゃないかな?
最近、コロナ禍の巣ごもりの影響か筋肉系YouTuberに感化されて
筋トレ&食事制限をしている人を見かけるようになった。
まぁ、プロの人は生活もあるのでしょうがないかもしれないが
全く脂肪がないというのも問題なので適度に身に着けるようにはしてくだされ。
体によい影響を与える油なんてのもあるので~興味があれば調べてみてね。

理想は身長186.5cm 体重うっすらと脂肪を残し116kgくらいかな(笑)
まぁご自分の骨格と筋量とご相談して健康な体を作ってください。

話が大分それたので戻すと、脂肪(fat)の構成成分でメジャーなものは
1,2,3-propanetriol:1,2,3-プロパントリオール(glycerol:グリセロール)
と長鎖カルボン酸のエステルであるtriglyceride:トリグリセリドです。
※トリグリセリドは油(oil)の構成成分でもあります。

トリグリセリドは実態を書くとキリがないので ry…
となっております。

で、この部分をさらに突っ込んでいうと「脂質」になる。
まぁここまでいっちゃうと生化学の分野になるので…興味のある人は調べてみてくだされ。

エステルは以上です!

ではまた次回。

 

© 2022 猫でもわかる有機化学