エノラートとエノールの反応①

さて、それでは反応について解説していこう。
ポイントは以下の3つ。

1.ハロゲン化
2.アルキル化
3.アルドール縮合

それではいってみよー。

1.ハロゲン化

アルデヒドやケトンはα炭素にてハロゲンと反応する。
ちなみに重水素化( エノラートとエノールの特徴② 参照)と違って
酸性、塩基性条件によって生成物が変わってくるのでご注意を。
では条件別にみてみよう。

(1)酸性条件

まずは以下の例を見てほしい。
1つ目のハロゲンが付いた後、2つ目のハロゲンがどっかにいってしまったように見えるのがわかるかな?
ようは2つ目のハロゲンはくっつかなかったってことなんだよね。
これを「反応が止まる」って表現するよ。

さて、なんで2つ目のハロゲンはくっつかないか?なんだけど
酸性条件ではまず
カルボニルのOにHがくっつき、エノール化する必要がある。

だけどこのエノール化に必要なプロトン化
ハロゲンの高い電子求引性のせいで元のカルボニル化合物より難しくなるんだ。
つまり以下のように平衡が圧倒的にカルボニルに傾いている状態になっているんだ。

では酸性条件で2つ目のハロゲンをつけることは不可能か?
というとそういうわけではない

ようはカルボニルが邪魔ということなので
カルボニルが消えれば2つ目のハロゲンをくっつけることは出来る。

要するに全部プロトン化させるまで酸性の触媒をぶち込んじゃえば可能ということだ。
まあ、金と時間の無駄なのでふつうはそんなことしないけどね…。

(2)塩基性条件

では塩基性条件の場合を見ていこう。

まず以下のように塩基によりエノラートイオンが生成し
これがハロゲンを攻撃することで反応が起こり
ハロゲンが1つ付いたものが生成される。

で、酸性条件とは違ってここで反応は止まらず
以下のように2つ目のハロゲンがくっつくんだ。

※今回あくまで例なので2つしかα水素がないけど
このハロゲン化は全てのα水素がなくなるまで止まらないです。

さて当然なんでか?を考えるのだけれど
理由としては酸性条件でハロゲン化が1回で止まってしまった理由と同じなんだ。

つまり、ハロゲンの電子求引性によりα水素の酸性度を高め
エノラートイオンがさらに求核攻撃しやすくなるから
反応性が

カルボニル < ハロゲン化したカルボニル

になるんだ。

まぁさっきと逆なので
ハロゲンが増えれば増えるほど効果が大きくなる
っていうのは想像がつくんじゃないかな?
逆に言えば
1回のハロゲン化で止めることが難しい
とも言えるってことだね。

ではまた次回。

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