さて大枠で「ジエンの反応」とはしたけど
ここではジエンの中でも特徴的な
共役ジエンの反応
について説明するよ。
アルケンやアリル系をすでに読んでいたらなら想像がつくかもしれないけど
例えば以下のような求電子付加反応が起こり、2つの生成物ができる。
ちょっと見慣れない名前がついているけど
1,2もしくは1,4にそれぞれHとBrがくっついているので
それぞれ1,2付加、1,4付加と呼び方をしたりもする。
この数字はいつも使っている命名法の数字ではなく
付加したH、Brに番号を付けてるだけのもなのでお間違えなく。
・青の数字が~付加の番号
・緑の数字が命名法で使う番号
です。
生成物が2つできているのはアリル系と同じ理由で
Hが付加した後、下のように共鳴してるからだね。
で今回ポイントとなるのは生成物の割合について。
例では見ての通り生成量は
1,2付加>1,4付加
になっている。
まぁ理由は単純で共鳴構造が1,2付加の方が安定しているからだ。
でこれだけで終われば単純にこういう反応なんだーって話なんだけど
それだけでは終わらない。
実は最初の式を注意して見てみると
割と簡単に変更できる条件があったんだ。
それが何かわかるかな?
正解は温度が0℃に指定されていたんだ。
実はこの温度によって生成物の量の比率が変動してくる。
詳しく見ていこう。
まず先程0℃だった温度を徐々に上昇させ40℃にした場合
以下のように生成物の量が逆転する。
ちなみにある実験で
生成物の1,2付加と1,4付加をそれぞれ同じように40℃で加熱すると、
先に紹介した例と同様に1,2付加、1,4付加が同じ割合で生成されることが分かっている。
ということは…そうこれは平衡反応ってことだ。
※ど忘れしてたら… 基礎:反応と平衡 をご参照。
知っての通り熱により活性化エネルギーの山を自由に超えられるようになっている。
ということは
生成物より普段の状態のエネルギーは小さい
すなわち安定のものが多くできる、ということだ。
ここでアルケンの安定性について思い出してほしい。
アルケンは置換基が多い方が安定だったよね?
※詳細は 応用編:アルケンの特徴③
だから熱を加えた場合の生成量は1,2付加<1,4付加となるんだ。
さてではもう一つ考える条件を足してみよう。
置換基がついていた場合
はどうだろうか?
まぁ最初は面食らって?となるかもしれないが
この場合でも考え方は変わらない。
以下を例に説明していこう。
0℃の場合は中間体であるカルボカチオンの安定性によって決まってたよね。
考え方は変わっていないので今回も素直にカルボカチオンがより安定な1,2付加が多くできる
と考えてしまってよい。
そして40℃の場合は、先程と同じでアルケンの安定性で考えるんだ。
アルケンが安定なのは1,4付加の方になるよね?
だから1,4付加が多くできるってことだよ。
初見だと面食らうような課題が出ることもあるけど
基本に従って順番に対処していけば基本的には問題ないよ。
最後に補足として
2重結合が3つ以上共役している場合だとどうなるか?
を説明していこう。
こいつはとても安定な構造で
βカロチンやビタミンAなど栄養素などによく見られる構造だ。
だけど求電子剤には、アリルやジエンと同様反応しやすい。
例えば下のBr2との反応をみてほしい
アリル、ジエンをと同様、電子が豊富な二重結合が3つもあるので簡単に反応する。
そしてこの反応の中間体であるカルボカチオンは
共鳴により安定化するので活性化エネルギーは低い。
ということで3つ以上共役したπ結合をもつものについてまとめると
・構造が安定(熱力学的に安定)
・求電子剤とは反応しやすい
といった特徴があります。
さてジエンはここまで…と思っていたけど
ある意味ジエンの反応だけどちょっと特殊な
Diels-Alder反応
が残っていたので、次回はこいつを解説していくね。
そんなところで
ではまた次回。
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