さて、前回の 応用編:ベンゼンの特徴②
で芳香族性について説明した時に“平面”環状共役ポリエンと
書いていたから引っかかっていた人もいたんじゃないかな?
そう、これは環状共役ポリエンという大枠の中の一つなんだ。
ということで今回は環状共役ポリエン(大枠の方)について解説していこうと思います。
教科書なんかでは以下のような説明がされている
sp2混成軌道で形成される環状化合物
…まぁ要するに二重結合があって輪っかになっている奴
だと思ってもらえばいい(例外もあるけど…)
ということで以下の5つについて説明していきます。
1.環状共役ポリエンの種類
2.環状共役ポリエンの分子軌道
3.Hückel則
4.annulene(アヌレン)
5.多環ベンゼン
それではいってみよー
ベンゼンの特徴である芳香族性が平面環状共役ポリエンのことだったよね?
では芳香族も含めてどういったものがあるのかを紹介するよ。
全部で3つあるので1つずついきます。
まずはおさらいもかねて…
前回でも紹介したけど、芳香族とは
4n+2(n=0,1,2…)のπ電子を持つ
平面環状共役ポリエン
だ。あんまり補足することはないけど
あえて何かを付け足すなら「4n+2」の部分が
Hückel数といわれるもので、後ででてくるHückel則にからんでいるって
ところかな。
馴染みのない単語に見えると思うけど考案したドイツの物理学者
エーリヒ・ヒュッケルさんのお名前からきてるよ。
さて先ほどのアンチです(笑)
これは
4n(n=0,1,2…)のπ電子を持つ
平面環状共役ポリエン
だ。
名前があれだから想像つくと思うけど
こいつは安定な芳香族の逆の性質をもっている。
つまりは共役の結果、不安定化される。
もっというなら反応性はとても高いっていう特徴がある。
とりあえず例で見てみよう。
ここでは 1,3-cyclooctadiene を見てみる。
これは最小の環状ポリエンと呼ばれている。
※最小は三員環のやつでは?って思うかもだけどあれは角ひずみが大きすぎて実質不可能なので…
で、こいつはπ電子を4つもつので反芳香族だ。
…見た感じから不安定さを感じ取れた人は大丈夫、その感は間違っちゃいない。
応用編:電子環状反応① のときは正方形で書いたけど
実際はひずみのせいで長方形。
共鳴でC-CとC=Cの中間位の長さになるんじゃないの?
って思う人もいるかもしれないんだけど
実はこれ、変換にエネルギーが必要なので異性体扱いなので共鳴構造ではありませぬ…
まぁといったところで最初に紹介したように
こいつ単体は非常に不安定、なので低い温度でしか保てないよ。
※おかげでDiels-Alder反応起こせるんだけどね。
さてお次はNONと来たもんだ(笑)
※「平野節」は大好物な筆者です。
これは
環状共役ポリエンだけど平面でないもの
だ。つまり①②ではないシクロアルケンって考えれば話は早い。
こいつも例で見ていこう。
ここでは 1,3,5,7-cyclooctatetraene を見てみる。
共役π電子を8個持つ(4×2=8)ということで反芳香族ではなく
平面構造もとってない。
ということで非芳香族ってことです。
この場合の特徴としては
・アルケンなので求電子付加や環化付加が起きやすい
・触媒があれば水素化でき、簡単にシクロヘキサンになる
といった特徴をもつ。
これがどういった特徴かというと環状じゃないポリエンと同じような特徴になるんだ。
だからまぁNONなのです。
今回は3部編成予定でーす。
ではまた次回。
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