さて、お次はカルボン酸無水物について掘り下げていくよ。
ポイントは以下の4つ。
1.命名法
2.求核剤との反応(基本)
3.水との反応
4.アルコールとの反応
それではいってみよー。
名称については、例を見た方が早いと思うので今回は以下の
acetic propanoic anhydride(酢酸プロパン酸無水物)
を参考に説明します。
よく教科書なんかには
対応するカルボン酸の名称をanhydride(無水物)に変える
と簡単に書かれていることが多いんだけど
これだけだと?になる人も結構いるのでもうちょっと細かく解説します。
まず、カルボン酸無水物の場合は
カルボン酸を2つに分ける
必要がある。
唐突でわかりにくかったかもしれないけど、ようはCOO部分で切り分けるってことだ。
例えばこの例では
・CH3COOH(酢酸)
・CH3CH2COOH(プロパン酸)
の2つに分けられるよね。
次に一番Cの数が多い物を主鎖とし、こいつにカルボン酸の名称(-oic acid)をつける。
※参考 基礎編:命名法 応用編:カルボン酸の特徴① など
ここではCの数は、見たまんま
CH3CO<CH3CH2CO
となるので、propanoic acidとなる。
そして小さかった方はカルボン酸の置換基としての名称を付ける。
なのでCH3COつまりはaceticとなる。
あとはこれを順番に並べて、acetic propanoic acid
最後にacidをanhydrideに変換するんだ。
ということで、acetic propanoic anhydrideとなるってわけ。
ではもう1つ例を紹介しておこう。
さっき言ってることと違うんじゃないの?
って思たと思うけど、こいつは慣用名で
もうこれが一般的な名称、というくらい日本では広まってるので
こう書いています。
ちなみに上に限らずカルボン酸無水物は慣用名で呼ばれることが多い。
これは環状誘導体も同じで、以下のように慣用名が存在するものがほとんどなんだ。
環状でも名前の付け方は同じで
・英語ではacid部分をanhydride(無水物)に変える
・日本語は対応するカルボン酸に無水物を付ける
っていうのが大原則となります。
酸無水物と求核剤との反応は、ハロゲン化アシルほど激しくはないけど
以下のように割と似たような反応になる。
そして反応機構
ハロゲン化アシルとの違いは
脱離基がハロゲン化物イオンからカルボキシラートイオンになるってところだね。
見方をかえればその以外の差はほぼないともいえる。
カルボキシラートイオンは脱離後にHをもらってカルボン酸になるんだけど
これが不要な場合は、塩基水溶液を用いた後処理によって除去することができます。
ちなみに上記の反応を環状の酸無水物で行うと付加-脱離反応を起して開環するんだけど
詳細は 4.アルコールとの反応 で説明します。
あとハロゲン化アルカノイルにはない酸無水物特有の長所がある。
ハロゲン化アシルは反応しやすいっていう話したけどこれには悪い面もあって
空気中の水分と加水分解を起こしちゃうので長期保存が難しいんだ。
だけど酸無水物はそうはならない。
なのでハロゲン化アルカノイルはそのままの状態で保管はせず
使用直前にカルボン酸無水物から作るようにすれば長期保存の問題が解消できるってわけだね。
もう一つオマケで気付いている人もいるかもだけど
酸無水物からエステルやアミドなど他のカルボン酸誘導体にもできる。
そういう意味でもカルボン酸無水物は便利なので、市販でよく販売されてたりします。
さて、ではどの求核剤と反応させると何ができるか説明していくね。
例によってまずは水からだ。
…まぁ話はとてもシンプルだ。
水と反応すると、以下のようにカルボン酸ができます。
反応機構は2、求核剤の反応と同じだけど…一応ね。
4.アルコールとの反応
続いてアルコール
こちらもシンプルでアルコールと反応すると、以下のようにエステルができます。
反応機構は2.求核剤の反応と同じry
で、2.求核剤との反応でちょこっと書いたけど
環状のカルボン酸無水物が求核剤と付加-脱離反応を起こすと以下のように開環します。
反応機構は
キリが悪かったのでちょっと長くなったけど
最後まで読んでいただきありがとう。
ではまた次回。
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