さて、では今回からはβ-ジカルボニル化合物の合成方法について紹介していきます。
β-ジカルボニル化合物は他の合成に使うことも多いのでしっかりと理解するようにしましょう。
エノラートとエノールの反応③ で
C-C結合ができるアルドール縮合の説明をしたのを覚えているかな?
これはそいつのエステル版だ。
例えばこんな感じです。
簡単にまとめると
エステルエノラートと
他のエステル官能基(ここでは酢酸エチル)が
付加-脱離反応を起こし
β-ジカルボニル化合物(β-ケトエステル(例ではアセト酢酸エチル))
を合成する反応です。
この反応は発見者のドイツ人科学者
Rainer Ludwig Claisen の名前からとって
Claisen(クライゼン)縮合 と呼ばれています。
では順番に反応機構を見てみましょう。
まず塩基がエステルのα水素を奪ってエステルエノラートができる。
さて↑を見ていて何か気づいたことはないだろうか?
そう可逆反応の矢印の長さが違う・・・
ということでこの反応は起こりにくいんだ。
理由としては
エステル pKa≒25 > エタノール pKa≒16
になるからです。
あとは特徴というか、エステル(-COOR)のOR部分が
アルコール(ROH)のROと入れ替わるエステル交換を防ぐために
普通はアルコキシド(RO-)とエステルは同じアルコール由来のものを使う
っていう考え方があります。
以下のようにエノラートイオンが
他のエステル分子のカルボニル基に攻撃して付加反応が起こります。
そして脱離反応で、3-ケトエステルができます。
そして塩基も復活します。
さて、目的のものができたね。
ではこれで完了・・・とはならない。
なぜなら(1)~(3)は全て可逆反応で
3-ケトエステルの反応までは吸熱反応
つまり起こり難い反応なんだよね。
※前述したけど特に①が
さてではなんでこの起こり難い反応が進むのか?
理由は次の反応になります。
以下のように塩基が3-ケトエステルのα水素を脱プロトン化します。
注目すべきは以下の関係性
アセト酢酸エチルのα水素 pKa≒11 < エタノール pKa≒16
このことから何が言えるかというと…そうこの反応はとても起こりやすいんだ。
しかもこの反応は不可逆反応になる。
なので反応が起こり難い平衡反応である(1)~(3)があってもの
(4)の反応のお陰で全体の反応は進行していくんだ。
もうあとは見ての通りなんだけど
最後に酸の水溶液を使った後処理で
3-ケトエステルの共役塩基がプロトン化されて終了です。
ではまた次回。
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