ベンゼン誘導体①

さて、今回からはベンゼンの反応②で紹介した
電子求引基電子供与基がベンゼンに結合すると反応性が上がったり下がったりする
点について詳しく説明していくよ。

まず「ベンゼン誘導体」とは
ベンゼンについてる6個のHが1個以上置換基に置き換わったもの
のことだ。
※↑でよくわからなかったら誘導体でググってください。
ようは「ベンゼン」の「誘導体」です。

こいつは結構お薬関係に絡んでる重要な考え方で
例えば痛み止めとして有名な
・アスピリン
・アセトアミノフェン
など数多くの医薬品がこの構造にかかわってくる。
そしてこの構造が体内で「どう変化してくるか」も重要になってくる。

ちょっと余談になるけど生化学では生体内の反応を表すときに
電子を与える側を、電子供与体
受け取る側を、電子受容体
と表現する。

このせいか、教科書ではこの単元での置換基のことを
電子を与える電子供与基(donor基(D))
受け取る側を電子受容基(acceptor基(A))
なんて表現したりしている。

まぁ↑でも電子受容基は電子求引基と電子を引きつけるもの
という意味で考えれば一緒なんだけど…
なのでここでは、電子受容基 ⇒ 電子求引基
読み変えて説明していきますので、ご注意下さい。

ポイントは以下の4つ

1.誘起効果と共鳴効果
2.配向性の理由
3.置換基が結合する順番
4.特定のベンゼン誘導体への合成方法
5.多環ベンゼンの配向性

ではいってみよー。

1.誘起効果と共鳴効果

まずは電子供与基、電子求引基が持つ効果について説明していこう。
どちらも既出なので、忘れていたら 基礎編:酸性の強弱
読んでおくといいと思います。

(1)誘起効果

細かい話は 基礎編:酸性の強弱 の方で…

例をまとめると以下のような感じ

電子供与性の誘起効果を持つ置換基
アルキル基(CとHだけのやつ)

電子求引性の誘起効果を持つ置換基
ーCF
ーNR
ーOR
ハロゲン(ーF、ーCl、ーBr、ーI)※以下()内は略します。
ーCOR
ーC≡N
ーNO
ーSO

※あくまで一部の例なので、本当のところはもっとあります。

あと酸性の強弱で紹介済みだけど誘起効果は
電気陰性度が大きいものほどより強い影響を与える
っていう特徴があったことを覚えているかな?
これは今回重要なので忘れないでおいてください。

(2)共鳴効果

こちらも細かい話は 基礎編:酸性の強弱 の方で…

こちらも例をまとめると以下のような感じ

電子供与性の共鳴効果を持つ置換基
ーNR
ーOR
ハロゲン

電子求引性の共鳴効果を持つ置換基
ーCOR
ーC≡N
ーNO
ーSO

電子供与性の方は誘起効果では電子求引性の扱いなので間違って覚えないようにご注意を。

あとこれも酸性の強弱で紹介済みだけど共鳴効果は
作られる共鳴構造が安定(電子が移動しやすい)であるほど
より影響を与えるっていう特徴があります。
これも今回重要なので忘れないでおいてください。

さて、ここまで来てちょっと引っかかっている人もいるだろう。
誘起効果と共鳴効果を持つ
ーNR
ーOR
ハロゲン
一体どうすりゃあいいのか?ってね。

上で書いているけど重要なのは以下の2点だ。
誘起効果電気陰性度が大きいものほどより強い影響を与える
共鳴効果は作れる共鳴構造が安定であるほどより影響を与える

まぁこういうことはやっぱり例を見ながらが早いので以下を見てほしい。

これはベンゼンに求核攻撃が起こる反応だ。
ハロゲンの電気陰性度は高い。
で、作れる共鳴構造が不安定(ハロゲン上に+がくる)なので
誘起効果>共鳴効果
になる。
よってこの場合ハロゲンは弱い電子求引基になる。

一方、ーNR、ーORは電気陰性度が高いものもある。
が、作れる共鳴構造が安定(N,O上の+電荷は隣の電子供与基であるアルキル基が安定化する)なので
誘起効果<共鳴効果
になる。

よってーNR、ーORは電子供与基になる。

さて今回の考え方は後々に影響するので
勘違いなくしっかりと理解して進んでください。

ではまた次回。

 

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