それでは前回の続きから。
今回は主に求電子付加反応の話になる。
応用編:アルケンの反応①
でも説明したけど二重結合は電子が豊富なので求電子攻撃されやすい。
三重結合は二重結合よりも電子が豊富。
なのでさらに攻撃されやすい。
ということを最初に言っておきます。
反応はこんな感じで
HとBrがそれぞれ逆側に付加される(アンチ付加)。
一応補足しておくとアルケンの時と考え方は同じで
マルコフニコフ則に従って置換基が多い方にBrが結合する。
理由はビニル型カルボカチオンを見てみると分かりやすい。
カルボカチオンは置換基が多いほど安定だったよね?
だからマルコフニコフ則に従った生成物ができます。
で、1当量ならここで反応は終わるんだけど
2当量になるとこのままアルケンにハロゲン化水素が付加する反応になり
アルカンが生成する。
これもマルコフニコフ則に従って置換基の多い方にBrが結合する。
さてなんとなく違和感を感じている人もいるだろう。
今までと違って下のようにカルボカチオンにBrがついているからね。
実はBrは+R効果、-I効果の両方の性質を持っている。
※それぞれの効果については 基礎編:酸性の強弱 を参照
そして効果の強さは
+R効果 > -I効果
になっているんだ。
+R効果は隣に+がないと働かない。
ということで(A)ではBrから電子をもらえるため、安定化する。
一方(B)は隣に電子を欲しがってるやつがいない。
なので+R効果が働かない。
けど-I効果は働いてしまう。
結果、電子が少ないところから奪おうとするのでより不安定になってしまう。
ということなんだ。
ということで(A)の状態が安定なので
置換基が多い方にBrが結合するってことだね。
2.と考え方は同じで
下のように2つのBrが逆側にそれぞれ付加される(アンチ付加)
理由についても同じなので説明は省略します。
で、これも2当量の場合はアルケンにハロゲンが付加する反応になり
アルカンが生成されます。
最初にも書いたけどアルケンの時よりも電子が豊富。
ということでH2Oと酸触媒で反応が出来ます。
とりあえず反応機構を見てみよう。
OHがカルボニル基になってるところだけど…
ここで詳しくはやらない。
アルデヒドやケトンのところで詳しくやろうと思います。(長くなるので)
今のところは下図のようなエノール型、ケト型を
行ったり来たりできるということを覚えておいてください。
※ケトーエノール互変異性といいます。
さてこの反応については一つ注意しておいてほしいところがある。
末端アルキンでは起こらない、ということだ。
なんでかっていうと内部アルキンは
両側にメチル基があるおかげで超共役がはたらき
三重結合部分がとても電子が豊富な状態になっている。
この電子が豊富な状態だからこそ、こういった反応を起こせるんだ。
だけど末端アルキンはメチル基が1個しかないので
反応を起こすエネルギーが三重結合部分に足りない。
だから求電子攻撃を受けづらいってことだね。
ではまた次回。
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