アルケンの反応②

それでは前回の続きから

3.ハロゲンの求電子付加反応

まず
ハロゲン
とは書いたけど、実際は Cl,Br が対象になる。
※つまりF,Iは対象外

なぜかというと Cl,Br については

生成する結合エネルギーの総量 > 切断する結合エネルギーの総量

になっているので成立するんだけどIの場合は
生成するC―Iの生成する結合エネルギーが小さいため
切断するエネルギーを賄うことができていない。
なのでⅠについては反応が起こらない。
っていうことになっています。

そしてFはCl,Brと同じく
生成する結合エネルギーの総量 > 切断する結合エネルギーの総量
にはなるんだけれど
エネルギーの差が大きすぎて反応が付加するだけでは終わらず
さらに以下のように反応が進んでしまうのです。。

CH-CH=CH-CH + 9F
→ CFCFCFCF3 + 8HF

ご注意ください。

それでは本題の反応について、以下を例にみていこう。

前回の 2.ハロゲン化水素の求電子付加反応 と見た目はほぼ一緒で
アルケンとハロゲンを反応させると、ラセミ体ができる。

上述の通り見た目はほぼ一緒なんだけど
反応機構が以下のように違っているので別物になります。

まず1つのBrがアルケンへ求電子攻撃することで三角形が形成される。
どうしてこんなことが起こるかというと、Br分極しやすいからだ。


+Ⅰ、-Ⅰ効果が発揮されています。
↑忘れてたら 基礎編:酸性の強弱 を読んでみよう。

そして三角形形成後に
残ったもう1つのBrが求核攻撃を仕掛けることで生成が行われる。
この求核がどちらのCに対して攻撃するか
確率は半々なのでラセミ体が生成されてるって図式だね。

さてここもう一つ考えないといけないことがある。
何か分かるかな?

・・・そう、cistransについて考えないといけないんだ。

例を見た方が早いので以下に示すけど
出来てくるものが違ってくるので注意が必要です。

cisの場合

transの場合

※赤字の解説は 基礎編:ラセミ体とメソ体

さてラセミ体が出てくると
1.水素化反応 で紹介した
立体障害がある場合の生成物の偏り
があるんじゃないの?と思う人がいるかもしれない。
これについては偏りは発生しない、と考えられる。

なんでかっていうと差が出ているのは
三角形を作った
なんだよね。
作る前の攻撃はどちらから攻撃しようが変わらないので、立体障害による影響はないのです。

あと最初の例はわかり易いから
一つのハロゲンで紹介をしたけど
・2種類のハロゲン
・ハロゲンと水
なんかを使うと以下のように2種類の置換基が結合したものができまする。

Brで三角形作るところまでは同じで、そこから何が求核攻撃するかが変わるだけなので
反応機構は省略させていただきます。

・・・さて少し物足りないので
補足として今回紹介した内容に紐づく
教科書的な言葉の紹介をしておこう。

立体選択的反応

複数の立体異性体が「できそうな」反応で
1つの立体異性体が多くできる反応のこと。

例えば以下みたいなやつ

結局のところ配置のパターンとしては考えられそうだけど
反応機構で考えるとこういった動きはありえないってことだね。

立体特異的反応

cisやtransなど
違う立体異性体からそれぞれ違う立体異性体ができる反応のこと。

今回紹介した
cis+Br2 → エナンチオマー
trans+Br2 → メソ体
なんかがまさにそれだね。

似たような言葉だけど意味は全然違うので取り違えないよう注意してくだされ。

ではまた次回。

 

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