さて今回はアルケンの反応について
主なものは以下(ちょっと多い…)
1.水素化反応
2.ハロゲン化水素の求電子付加反応
3.ハロゲンの求電子付加反応
4.オキシ水銀化-脱水銀化
5.ヒドロホウ素化-酸化
6.ペルオキシカルボン酸による酸化
7.四酸化オスミウムによるジヒドロキシ化
8.オゾン分解(オゾン酸化)
9.HBrのラジカル的付加反応
10.アルケン同士の反応
…長くなるけど、一つずついってみよー。
で紹介した 水素化熱 を覚えているかな?
ようはアルケンに2つのHが結合してアルカンになる反応のことだ。
さてこの反応は 発熱反応 になるのだけれど、通常の室温下では起こりえない。
なんでかっていうとH-Hの部分を切断するのに必要なエネルギーが104kcalととても大きいからだ。
※専門じゃないけど室温だと20kcal以下くらいで進むものじゃないと反応は起こりにくいのです。
このため最初の山を越えやすくする(というより山を低くする)ためにPd,Pt,Niなどの触媒を使う。
こいつらは周期表の分類でいうとことの 遷移金属(遷移元素)と呼ばれるもので
電子をとったり入れたりしやすいから触媒によく使われてます。
そして、水素化反応については気にしてほしいことがもう一つ
以下を見てほしい。
平面だけ見てると忘れがちなんだけど、立体構造に差異があるので
結果としては2つの化合物が生成されている。
ただ構造式としては変わりはなくて生成される量にも差はないと考えていい。
所謂 ラセミ体 が出来ているってことだね。
※忘れてたら 基礎編:ラセミ体とメソ体 へ
ただここに立体障害がある場合は話が変わってくる。
なぜならできるだけ妨害が少ないところから攻撃しようとするから
下のような反応となり、生成物に偏りが出てくるので注意してね。
ハロゲン化水素とアルケンを反応させると以下のようにハロアルカンができます。
この反応は電子不足のH(※)に
電子が有り余ってるアルケンの二重結合部分が攻撃することでHがくっつくので
求電子付加 と呼ばれています。
※電気陰性度高いBrに電子引っ張られてるからね
ここで気にしてほしいのは
アルケンの置換基が違った場合
Hとハロゲンがそれぞれどちらに付くのか?
ということだ。
結果が見ての通りで
置換基の少ないCに H
置換基の多いCに Br
が結合したものが主に生成されることになる。
なぜなのか?というと
Hが結合した段階で
カルボカチオンがどういった場合に安定であったか?
を考えるとわかり易い。
上図の通りそれぞれに2級、1級カルボカチオンができてるけど
カルボカチオンがより安定だったのはどういった場合だっただろう?
そう
置換基が多い方
がより安定だよね。
※ピンと来なかったら 基礎編:SN1反応に影響を及ぼす因子 へ
このカルボカチオンが安定するお陰で
以下のように遷移状態も下に引っ張られる。
結果、反応しやすくなっているって訳なんだ。
※ピンと来なかったら 基礎編:反応速度 へ
もう上に書いちゃってるけどまとめると
Hは置換基の少ないCに、ハロゲンは置換基の多いCに結合する
ってことだね。
ちなみに↑をマルコフニコフ則っていいます。
ロシアのウラジミール・マルコフニコフさんが発見した経験則。
だからマルコフニコフ則。
実は限定的な条件下で起こるものなので
逆マルコフニコフ則というのも存在します。
※↑については別の機会に紹介します。
ではまた次回。
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