さて前回の続きから~
2.で紹介していた内容なんだけれど、アルケン(もっというならアルキンとかも)は
命名法においては官能基と同じような位置づけで考えることが出来る。
基礎編:命名法
で紹介した官能基の順位一覧をより詳細にすると、以下のようになる。
で優先度がアルケン以上に大きな官能基(↑でいうアミンより上)が含まれているアルケンの場合はどうなるのか?
というお話になります。
まぁこういったものは一つ例にとってみるのがわかり易いので
とりあえずよく出てくるOH(アルコール)ちゃんで見てみよう。
置換基にOHがある場合、アルケンよりも考慮する優先順位が高くなる。
だからその官能基の番号が小さくなるように番号を付けないといけない。
そうするとOHに一番近いCが1番になる。
だから二重結合は3、4番目となり3、主鎖の炭素数は5なので
3-penten
そして今回順位が高いのはOHなので接尾辞が
1-ol
で、接頭辞は見ての通り
2,4-dimethyl
なのでこの例の名称は
2,4-dimethyl-3-pentene-1-ol
となる。
覚える官能基が少し増えたってだけで基本は変わらないので、頑張って覚えてくだされ。
3.の一覧にこそっと書いているのだけれど、当然アルケンが接頭辞として使われる機会もあるわけで。
その場合はalkenylが付きますよーって話だね。
当然炭素数によって名前は変わるのだけれど、alkの部分を変えれば大体大丈夫です。
さて、高校化学でも出てきたシスとトランス。
※余談だけどシス、トランスはラテン語で
それぞれこちら側、あちら側という意味だよ。
まず基本的な考え方として
主鎖の向きが同じか逆かで判断する。
以下のような感じ。
で、実をいうとこいつは最後のちょい足しみたなもので
基本は1.~3.で命名した後に cis-、trans- を先頭に付けて完成っていう順番になります。
先程の例でかんがえてみよう。
まず両方とも2-penteneだよね。
後はこの前にcis、transをつければいいので、それぞれ
cis-2-pentene
trans-2-pentene
になります。
多分初出だったと思うのでE,Z表記法についても説明するね。
なんとなく想像がつくと思うけどE、Zはそれぞれある言葉の頭文字をとったものだ。
どんなものかというと
Entegen(反対の)
Zusammen(一緒に)
※医療系専攻の人はピンとくるかもだけどドイツ語です。
で、意味からなんとなく想像がつくと思うけど
E → trans
Z → cis
と同じ意味で使われる。
じゃあどっちを使っても同じなのか?というとそういう訳ではない。
ネットなんかでは
「cis,transに変わるものとして二重結合をつくる原子に結合した基のうち、順位則上位のものが二重結合をはさんで反対側に出ているとき~」
と小難しい紹介がされているけれど、簡単にいえば
「置換基が3つ以上」
の場合はE,Z表記法を使うルールになっているってことなんだ。
5.で紹介した例では置換基はCH3とCH3CH2で合計で2つしかなかった。
だからあの場合はcis-、trans-で名前を付けていたってことだよ。
では実際に例を見てみよう。
※番号は優先順位ね。
分からなければ 基礎編:光学異性体 へ
手順としてまずはEZを意識せずに名前を付ける。
・2-penteneが主鎖
・置換基Brは2番目
・置換基OHは3番目
だからベースになる名称は
2-bromo-3-hydroxy-2-pentene
になる。
後はシス、トランスと同じなので
一番前に(E)や(Z)をつければ完成になる。
だから
左は (Z)-2-bromo-3-hydroxy-2-pentene
右は (E)-2-bromo-3-hydroxy-2-pentene
になる。
ちょっとややこしいけど基本を押さえておけば理解は出来るはず。
分からなかったら基礎を見直して、理解してから読み直してみてくだされ。
ではまた次回。
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