それではラストです。
シアン化水素は以下のようにカルボニルに可逆的に付加して
シアノヒドリン[cyanohydrin]
と呼ばれる、ヒドロキシアルカンニトリルを作る。
※ニトリル[nitrile]っていうのはR-C≡N構造を持っている有機化合物のことです。
反応機構は以下
NaCNにHClを加えるとHCNが発生する。
見ての通りでHCNとシアン化物イオンがこの反応に必要になる。
目的とするシアノヒドリンをたくさん作りたい場合は
当然原料であるHCNを増やせばいい。
実際液体のHCN(シアン化水素)を使う方法が一般的だ。
ただ何も考えずにHCNを増やすと大きな問題が出てくる。
HCN(シアン化水素)は別名:青酸ガスともいわれる。
某小さな名探偵がペロったことで有名になった白い粉(青酸カリ)
と名前が似ているから気付くかもしれないが
青酸ガスっていうのは猛毒だ。
※青酸カリよりも毒性は強い
おまけに、気体になりやすいってことでより体に吸収されやすくなるのでとても危険なんだ。
なので通常はシアン化物塩(ここでいうNaCN)に強酸をゆっくりと加え、
塩をHCNに変えることによってシアンヒドリンを作る方法が用いられています。
ちなみにだけど、この反応はHCNとシアン化物イオンの両方が
かなりの濃度で存在できるように中程度の塩基性(pKa=9.2)の条件下で行うといいよ。
だけど塩基を加えすぎちゃうとカルボニル化合物に戻る方向に平衡が進むので
そこら辺はご注意を。
で、シアン化水素の付加によってどんな良いことがあるのか?
というと、以下のようにCOOHに変換することができるので便利なんです。
※詳細はまた後日解説します。
名前の由来は発見者
Adolf von Baeyer
Victor Villiger
から~こいつはアルデヒドでは起こらずケトンに特有の反応になる。
こいつは以下のようにケトンと
ペルオキシカルボン酸(過カルボン酸)※忘れてたら アルケンの反応④ 辺りを
を反応させるとカルボン酸エステルができる酸化反応になります。
反応機構は以下
まずペルオキシカルボン酸の末端のOHが
カルボニルに求核攻撃するところから始まります。
その後は見ての通り色々と不安定な状態になっているので連続的に反応し
環状の遷移状態を経由して分解、最終的にエステルになるってわけだね。
さて一点注意しておいてほしい点として
最後のエステルになるところでR2が隣のOへ転移してるよね?
なのでR1でも起こりそうに見える。
じゃあ例えば以下のような場合を考えるとどうだろうか?
上のまま、生成物が2つ出来るんじゃないか?
と思った人もいるかもしれないけど
実際のところ出来上がる生成物は1つになるんだ。
なんでかっていうと
一番転移しやすい生成物が出来るっていうことが確認されているからだ。
転移のしやすさっていうのは実験で判明していて
第三級炭素 > 第二級炭素~フェニル > 第一級炭素
の順位とされている。
まだ根拠はまだあいまいな部分があるらしいけど一応
転位するRは
遷移状態では+を持つカルボカチオンの状態では?
と考えられています。
なので上の例で考えると、以下のように第三級炭素の方に転移するってわけだね。
長ったけど、アルデヒドとケトンの反応は以上になります。
ではまた次回。
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