さて前回からの続きを説明していくよ。

3.溶媒和

さて聞きなれない単語出てきたね。
教科書どおりの言葉で説明すると
イオン溶媒によって取り囲まれること」
を指す。
とりあえず参考として以下を見てほしい。

(例)水の中に求核剤Cl、Iが存在する場合)

さて話のポイントは
この時ClとIだとどちらが反応速度が速いだろう?
ということだ。

前回とりあげた求核剤の強さを考えると、Clの方が反応速度は速くなると思うんじゃないかな?
しかし今回はそうはいかない、なぜなら水の中という環境的な要因が関わってくるからだ。

ちょっと分かりにくいかもしれないけど、水の中では求核剤Clの周りに水分子がIよりも集まってきている。(距離が近いのわかるかな?)
これはClの負の電荷水のH+上に存在する部分正電荷近づいて負電荷を分散すること安定化しているからなんだ。
このため、水の邪魔が少ないIの方が反応速度は速くなる、といった事象が起こる。

さてここでもう一つ疑問が出るんじゃないかな、と思う。
そもそもなんでIの方は水分子のH+が集まらないの?ってね。

勘がいい人は察してくれると思うけど
今説明した内容は高校化学で出てくる水和のことなんだ。

水和を忘れちゃった人の為に補足をすると
水和というのは
溶質(ここでいうClとかI)が水に溶ける時、溶質の粒子を水分子が取り囲んで引き剥がしている現象のことを差す言葉だ。

この時水分子がどうやって粒子を引き剥がしているのか?というと
陽イオンは、O
陰イオンは、H+
電気的な引力で引っ張り合う力を使って剥がしている。

引っ張り合った結果、水が取り囲んだ粒子はどんどん元の結晶から離れていく
結果として水の中で結晶はばらばらになる
これがいわゆる水に溶けるっていう状態だね。

さてここまで説明したら分かってくれると嬉しいけど
ようはそれぞれの原子の大きさが関係しているってことなんだ。

取り囲む原子のサイズが大きいともちろんそれだけ引き剥がすのにたくさんの水分子で取り囲まないと引き剥がせない。
だから原子サイズが大きいものほど、溶媒和の影響は受けにくいってことなんだ。

さてもう一つ要因はあってOやNに結合した水素をもつもの(例えば今回の水とかね)はH+を放出しやすいから
プロトン性溶媒
なんていう名称で呼ばれる。
なんで放出しやすいか?それはO,Nは電気陰性度が大きいから放出後に負の電荷を持った状態でいても安定だからなんだ。

プロトン性溶媒の場合
分子やイオンはH+により溶媒和を受け
求核攻撃が妨害され
求核性は低下する。

ちなみにこの溶媒和の度合い小さなアニオンほど大きい
これは原子半径が小さくなり
電子密度が大きくなるため
よりH+がひきつけられるからなんだ。

じゃあ求核剤の強さは何だったの?と思うかもしれないが安心してほしい。
今回はH+が含まれる溶媒の中で反応させたからこうなったんだ。
ということはH+がない溶媒で反応させれば求核剤の強さそのままで反応が起こるっていうこと。
ちなみにH+を放出しない溶媒は…
ご想像のとおり
非プロトン性溶媒
って呼ばれているよ。

さてちょっと長くなってしまったけど結論としては

反応速度は
プロトン性溶媒中では求核剤の強さとは逆の順番
非プロトン性溶媒では同じ順番
に速くなるってことだね。

4.基質の構造

説明しようとしたら既に求核剤で説明していたでござる。。。
詳しい説明は前回の求核剤の"おまけ"を呼んでみてね。

——————————————
4が結果的に手抜きになっちゃったのでまた少しおまけを。

さて今までは反応速度の法則性を解説したわけなんだけど
実は反応が遅いものでも反応を無理やり速くする方法があったりする。
※といっても可逆反応の時だけだけど。。。

可逆反応の時は、右辺と左辺の量の比が同じ(平衡)になるということを覚えているかな?
物理化学でよくやる考えなんだけど、ようは
平衡状態を壊す(今回は無理矢理にでも左辺側が増える状態に持っていく)
速度速くなるよね?
っていうお話だ。

さてちょっとした謎々になるのだけれど
どうしたら左辺側が増える状態になるでしょう?

そう
左辺側を減らしてしまえばいい
ってわけだ。

こうなると右辺バランスをとるために、左辺の量を増やすよう、反応が進む
多分「そんなことができるの?」って疑問に思うと思う。
ではその疑問を持ったまま以下の反応を見てほしい。

上記、2つの反応はacetone中で行っている。
既に説明しているので詳細は略すけど
・求核性Cl>I
・脱離能I>Cl
なので②の方が反応が速そうではある。
ただ結果としては実際は①の方が早い

実はこれ、SN2反応によってできるLiI、NaClのacetoneへの溶けやすさが関係しているんだ。
acetoneへの溶解性はLiI>NaCl(というか溶けない…)となる。

このため②の反応からNaClはどんどんなくなっていく
※画像の反応式は液体のみの反応をあらわしているので固体になったらなくなります。

だからNaClを補うために反応がより進む
このため反応速度は②>①の順番となるんだ。

 

ん~長かった。
最後までお付き合いいただき、ありがとう!

ではまた次回

© 2019 猫でもわかる有機化学

前回はSN2反応の概要を説明をしたので今回は反応速度に着目して解説していくよ。

基礎編:反応速度 で説明しているけど

反応が進む = 反応の自由エネルギーが負

だ。反応速度を解説した時は「温度」「圧力」を例として紹介したんだけど
今回はSN2反応に関連する以下の4つがそれぞれどんな影響を
与えているのか?この点について解説していくよ。

1.脱離基の脱離後の安定性
2.求核剤の強さ
3.溶媒和
4.基質の構造

ではいってみよー。

1.脱離基の脱離後の安定性

とりあえず結論から
安定なものほど
反応速度は
速くなる
よ。

では細かい話をしていこう、まず下図(求核置換反応の遷移状態)を見てほしい。

まず今回のポイントである脱離基はなんだろう?
そうClだよね。

くりかえしになるけど遷移状態のエネルギーが低い
すなわち活性化(自由)エネルギーが低いほど、反応は起こりやすい

ここら辺も反応速度の復習になるけど、この遷移状態の
“エネルギーが低い"
ということは遷移状態の構造で
“より安定"だということだ。

ということは脱離基が負電荷を持っていても
安定であればあるほど遷移状態の“エネルギーは下がる"
結果として反応速度は“速く"なる、ということだ。

別例も紹介しておくね。

一般的な(二分子)求核置換反応だけど
塩基性の強さ共役酸が安定なものほど強くなる
っていうのを覚えているかな?
※忘れていたら 基礎編:塩基性の強弱

これは言い換えると
アニオン(陰イオン)の安定性はその共役酸の酸性度が高いほど大きくなる
ともいえるつまり
脱離基の共役酸の酸性度が大きければ大きいほど脱離能は高くなる(脱離しやすくなる
っていうことになるんだ。

最後に補足としてハロゲンの例を紹介しておくね。
アニオンの安定性は
I>Br>Cl>F
になる。

なぜかっていうと、まず下図を見てほしい。

見たままでなんとなくお察しいただけると思うけど
原子半径が大きいほど外側の電子は分散することで安定化する
原子半径が小さいほど外側の電子が密集すうことで不安定化する
からなんだ。

2.求核剤の強さ

なんとなく想像がつくと思うけど、例によって結論から
強い求核剤(求核性が強い)ほど
反応速度は
速くなる
よ。

どちらかと“強い求核剤"の方が???なんじゃないかな、と思うのでそこら辺を解説するね。
これには大きく2パターンあって
・電荷をもつ求核剤
・電荷をもたない求核剤
でそれぞれで考え方が異なる。

では「電荷をもつ求核剤」から

まず
周期表の下にいくにつれて求核性は大きくなる
なぜなら下に行くほど電子をたくさん持っているからね。

そして
同族では塩基性の強さと逆である
例えば 塩基性:Cl>Br>I
の場合 求核性:I>Br>Cl っていった感じだよ。

え、なんで?と思った時は電気陰性度の話を考えると分かりやすい。
電気陰性度が高いほど負の電荷を持ってても安定だった
ということは電気陰性度が低いものが負の電荷をもつとより不安定になる
言い換えれば周りに早く電子を渡したがってる状態になっている(求核性が強い)
というわけなんだ。

そして「電荷をもたない求核剤」の場合

まず
周期表の下にいくにつれて求核性は大きくなる
この原則は変わらない。

違うのは
同族では電荷をもつ場合とは逆になる、ということ。
例えば H2Se>H2S>H2O っていった感じだね。

この違いについては、まず下図を見てほしい。

同族ではOよりSの方がP軌道が広いよね?

軌道の範囲が広くなるってことは
電子が移動できる範囲が増える
電子が分散する
遷移状態のエネルギーが下がる(反応速度が速くなる)
ということになるんだ。

反応速度が速くなるっていう結果が先に出ているけどこれはこのことから
どちらの求核性が強いかがわかるということ。
なので「電荷をもつ場合とは"逆"になる」といえるってことだよ。

おまけでもう一つ
求核剤の“かさ高さ"反応速度 について
求核剤が1級、2級、3級と立体障害が大きくなるにつれて、反応速度は低下する
イメージしてもらうとわかりやすいと思うけど
後ろから攻撃しようって言うときに目標(人間でいう頭)が上にあったら攻撃しにくよね。
ようは立体になった分距離が出来て、攻撃し難いから、その分速度が下がっちゃうって思ってもらえればいいかな。

ちょっとそれたけどいいたいことは
求核剤の反応速度は
メチル>1級>2級>3級
の順になるよーってことだよ。
求核剤に関係するってことでオマケでのご紹介でした!

・・・長くなったので続きは次回に持ち越すね。

ではまた次回

© 2019 猫でもわかる有機化学