今回はアルケンの合成について

主に方法は以下の2つ

・ハロアルカンやスルホン酸アルキルのE2反応
・アルコールの脱水

では一つずついってみよー。

ハロアルカンやスルホン酸アルキルのE2反応

タイトルの通りなんだけどようはE2反応が関係してくる。
※なので反応の細かいところは 基礎編:E2反応

まずは以下を見てほしい。
こんな感じでE2反応でアルケンが出来る。

で、ここで注目してほしいのは生成物が2種類あり、生成割合にが出ているってところだ。
なぜなのかというと、遷移状態ではC-H、C-Br結合が部分的に切断され
二重結合が部分的にできている状態になっている。(つまりは不安定

ここで思い出してほしいのは前回の 応用編:アルケンの特徴③相対的安定性 の部分。
置換基が多いほど安定
だったよね?
だから置換基の多い左の生成物が出来やすいってことなんだ。

ちなみにこの置換基の多いアルケンが生成するルールをSaytzev則(ザイツェフ則)というよ。
基礎編:E1反応 で名前だけ登場済

注意点としてはこいつにも例外があって
塩基がかさ高い
ものを使うと生成物の割合が逆転するんだ。

これはかさ高いせいで2級水素を引き抜くより1級水素を引き抜く方が簡単だからなんだ。
このように置換基の少ないアルケンが生成するルールをHofmann則(ホフマン則)というよ。

結論として
アルケンの生成物は塩基に大きな影響を受ける
ってことだね。

オマケで生成されるアルケンが
cis,trans や E,Z の場合
どうなるのかについて説明しておこう。

cis,trans の場合

2つを単純に比較した時、すでに特徴で説明しちゃってるので
お察しだと思うけど、trans が安定していて出来やすい。

もう少し踏み込んだ内容として、これは
アルケンが安定しているから
という理由だけではないってことだ。

E2反応の内容で
アンチ共平面で起こる
ということを覚えているかな?
最初の出発物質をNewman投影式で書いてみるとこんな風になる。

上図を見て分かる通り、アンチ共平面の時
cisは立体障害のせいでE2反応が起こりにくいんだ。
だからtransの方ができやすいってことだね。

E,Z の場合

さてまずE,Zを作るために何が出発物になるのか?
というところから考えて聞きたい。

…まぁ最終的にアルケンかつ置換基が3つ以上になる
って考えれば大体想像つくと思うけど

答えをいっちゃうと
光学活性を持つC(キラル中心)が2つ以上あるもの
になる。
※細かい部分が気になる人は自分で調べてみてね。

とりあえずこれは例を見ながらが早いので

光学活性を2つ持つ
2-bromo-3-mehtylpentane
で考えてみよう。

この時、光学異性体としては(S,R)、(R,S)、(R,R)、(S,S)の4種類あるよね。
この中でどれがE,Zになるかのか?ということを考えてもらいたい。
考え方としては
E2反応が起こる状態を3次元で捉えてみる
とわかり易いかな。


答えは↑の通りで
(R,R)、(S,S)の時は E のみ
(S,R)、(R,S)の時は Z のみ
ってことだね。

アルコールの脱水

これはE1反応の一種になる。
この場合も置換基が多い方がたくさん生成されます。
以下みたいな感じ。

理由はとっても単純で
E1反応であるということは
カルボカチオンを経由している。
カルボカチオンは置換基が多い方が安定だったよね?
※ピンとこなかったら 基礎編:求核と脱離の起こりやすさ
だからです。

基礎が色々噛んでくるので
忘れていたら振り返りながら考えてみてね。

ではまた次回。

 

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さて前回からの続きです。

塩基との反応

これは
基礎編:酸・塩基の定義
で触れている塩基の性質を利用するよ。

まぁ簡単な話で塩基によってOHのHは奪われる
そんでもって奪われたHの代わりに塩基の陽イオンがくっつくことで安定化するって現象が起こる。

これを利用して何が出来るかというと
CHという求核剤を作れるってことだ。
例えばこんな感じ

アルカリ金属との反応

アルカリ金属というのは…なんとなくは分かるよね?
周期表のⅠ族(左端の列ね)の中にある
Li:リチウム
Na:ナトリウム
K :カリウム
Rb:ルビジウム
Cs:セシウム
Fr:フランシウム
のことだ。

ついでにちょっと紹介しておくと周期表で見ると同じⅠ族には水素がいる。
だけどアルカリ金属とは性質が大分異なる
アルカリ金属元素の場合、一価の陽イオンが生成しやすい(まぁ言い方を変えるなら安定化しやすい)
一方、水素の陽イオンであるプロトンはむき出しの正電荷になる。
なので電子を核から引き離すためのイオン化エネルギーが非常に大きい

アルカリ金属元素が一価の陽イオンで安定化しやすい理由は閉殻構造によるものなんだけれど
プロトンには閉殻構造が無いので安定化しようがない。

で、これが最終的にどうなるかというと
水素:共有結合性をもつ
アルカリ金属元素:金属性をもつ
といった性質の違いを与えることになる。

まぁ厳密にいえばイオン半径が小さめなリチウムも
アルカリ金属としてはちょっと変わった反応を見せることはあるけど・・・そこら辺はまぁ趣味の範囲かな?

さて大分脱線したので話しを戻して
上の方でざっと紹介したアルカリ金属の中で一番メジャーなのは・・・まぁNaだろう。
なのでこいつの反応を紹介してみよう。

まぁ見た感じでお察しなのだけれどこいつも2.の時と同じ求核剤を作るための反応になるよ。
2.と違って式だけで見ると?になる人もいるかもしれないのでもうちょっと細かく紹介しておくね。

CHOHのHとNaのeが反応してH2ができるっていうわけだ。

強酸との反応

もう大体想像はつくんじゃないかな?

例えば1級アルコールだとSN2反応がおこる。

そして2、3級アルコールだとSN1,E1反応が起こる

2.~4.については
基礎編:求核と脱離の起こりやすさ
を理解できてたらスルスルっと入っていくと思うので、ピンとこなかったら復習するようにしてね。

カルボカチオンによる転移反応

転移反応っていうのは
化合物の原子(団)が結合位置を変えることで、分子構造(骨格)が変わる反応のことだ。
まぁ例を見て考えていこう

流れとしては
・OHが脱離して2級カチオンになる
・2級カチオンの状態からHが隣に移動する
・3級カチオンになる
って感じだね。より安定な3級や2級アルカンを作ろうとしておこっていることはなんとなく想像がつくことだろう。

さてまぁこいつも動きだけみていると???似なると思うので、原子軌道の動きを追いながら解説してみよう。

隣接しているってことは原子軌道に重なりができてくるんだ。
このことにより電子の移動が可能となってくる。
基礎編:ラジカル でも似たようなことあったけど覚えているかな?

大事なことなので何度もいうけど、化合物ってやつは常にできるだけ安定の状態になろうとする。
移動できるならできるだけ安定な構造をとろうとする
だから転移が起きているわけだ。

さてついでに理解、というか思い出してほしいことが一つ。
この反応はSN1やE1よりも早い
だから3級カチオンができてからはSN1、E1反応が起こりやすくなる
まぁこんなところにも繋がりがあるってことだね。

もう少し続きます。

ではまた次回

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さて、前回の最後で少しだけ紹介した

求核置換反応(SN1,SN2) 
脱離反応(E1,E2) 割合について

そして反応が起こりやすくなる条件について解説するよ。

今までの流れで分かってもらえると思うけど

組み合わせとしてはSN1とE1SN2とE2になる。
そしてSN1とE1に関していうと起こりやすさはあまり変化しない

まずそもそもの話として
SN1とE1においてこの反応が起こる条件はとてもシビアになる。
条件は以下の通り
・求核剤はH2OやIなどの弱いもの
・ハロアルカンは2級以上
※しかもIと2級ハロアルカンだとSN2反応になってしまう。

そしてE1反応で紹介したとおりで、
SN1,E1ではそもそもカルボカチオンができる律速段階が同じになる。
ここまでくると後は残りカスのような状態なので
全体で見た時に影響してくるものなんてほとんど残っていない
加えて詳細は後述する反応割合っていう考え方があるのだけれど
これも考えの大本になるのは求核剤なのです。
前述しているけど、求核剤も限定的なものしか使えない
よって変更できる余地がない。

長々話したけど、SN1とE1に関しては以上の理由からほぼ無視していい。
※好きで探求するのはもちろんいいけど

つまるところ・・・今回のメインはSN2とE2になりまする。

さてまず反応の起こりやすさに与える要因を考えていこう
要因としては以下の2つがある。

1.求核剤の強弱
2.基質のかさ高さ

だ。それでは一つずつ見ていこう。

1.求核剤の強弱

より正確にいうなら求核剤の塩基性の強弱になる。
まずは以下を見ていただきたい。

※注意:割合の%表記はあくまで目安なので参考程度に考えてね。

上の塩基性が弱いIより、
下の塩基性が強いCH3Oの方が、E2反応の割合は大きくなってるよね。
塩基性が強いってことはどういうことだったか覚えているかな?

そのままでは不安定だからHをもらって早く安定な状態になりたがっている状態なんだ。
※もしピンとこなかったら 基礎編:塩基性の強弱
だから塩基性の強弱によって反応の割合が変わってくるってことなんだ。

2.基質のかさ高さ

さてこれも例を見た方が早い、ということでまずは以下を見てほしい。

・1級ハロアルカン

・2級ハロアルカン

・3級ハロアルカン

1級⇒2級⇒3級 の順で
E2反応の割合が増え
SN2反応の割合が減っているね。

さてこれについては 基礎編:SN2反応の反応速度に影響を及ぼす因子① を思い出してほしい。
求核剤がかさ高いときほどどうなっていたか?

...そう、SN2反応は起こりにくくなったよね。
なのでE2反応の割合が増えたということだ。

 

最後に1、2の条件をまとめると以下のようになるよ。

いってしまえばどちらも
今まで学習した範囲で推測が可能なものなんだけど

教科書なんかでは表みたいにまとめて紹介されちゃうことが多いので、ちょっと掘り下げて紹介してみました。
さて、基礎編これにて一旦最終回。
次はいよいよ応用編に入っていきます。

引き続きよろしくお願いいたします。

 

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