それでは続きからー

2.ベンゼンの構造

パッと見で明らかに他と違う感が漂っているよね…
大きく3つあるので順番に説明していくね。

①6つのCとCの長さが等しい

見たまんまだしそうですよねーって感じだと思うので
他と比較した結果で見てみよう。
C-C>CH=CH-CH=CH(※)>benzene>C=C
※1,3-butadiene
ということで1,3-butadieneのCとCの長さよりも短くなっております。

②結合角は全て120°

①で分かる通り正六角形になるので当たり前っちゃ当たり前だね。

③すべてのCはsp2混成軌道を持つ

これについても二重結合あるから、そだねー(死語)と思うかもしれない。
ただここからちょっと突っ込んだ話になります。

①、②から分かるように平面的な構造に偏りはない
そして 応用編:ジエンの特徴② – 構造 と同じ考え方になるんだけど
benzeneの6つのC上の電子密度は等しい

これは別に平面的だからという訳ではなくて
それぞれのCのp軌道は両端のCのp軌道と同じ大きさになっているからなんだ。
同じ大きさということは重なりやすいということ。
このおかげで電子は両端に非局在化、つまりは6つのCそれぞれに非局在化する構造が出来上がっているというわけ。

上記を外から見ると下図の右側ように
環状の雲が見えてくる。
こいつをπ電子雲といいます。

3.ベンゼンの安定性

例によって安定性の確認はまた水素化熱を使う。

水素化熱自体はアルケンで紹介済みのものなので詳しくは
応用編:アルケンの特徴③
をご参照。

ここでは二重結合を1,2個持ってるcyclohexene
それぞれcyclohexaneになる時の水素化熱を見てみよう。

2重結合が1つだと-28.6kcal/molなので
単純に2つある場合を考えると
-28.6×2=-57.2
になりそうだが、結果はそれよりも低い

まぁ見ての通りこいつはジエンなので共鳴で安定化したものになる。
ということは共鳴安定化のエネルギーは
57.2-54.9=2.3kcal/molとなる。

上のような結果となるので
benzeneのcyclohexaneになる時の水素化熱は
-28.6×3+2.3×3=-78.9kcal/mol
となると思われていた。。。
が、実際には

という実験結果が出てしまった。
ようするにbenzeneにおいてもジエンなどで言われていた
共役以外の何かが作用して安定化していることがわかった、ということなんだ。
※4、芳香族で詳細を解説します。

ちなみにかの名言
『三つの心が ひとつになれば一つの勇気は 百万パワー』


はここから生まれたと言われています。(嘘)

4.芳香族性

さて前述している通りbenzeneの安定化の要素がこの芳香族性だ。
名前だけみると匂い?と思うかもしれないけど、形状の話になります。

名前の由来としては昔(19世紀頃)匂いがある化合物に共通する構造だったので
芳香族(aromatic)という名前がついた。
なので現在では匂いは芳香族の特性ではないことになっています。

ということで現代における芳香族の特徴は一つ

4n+2(n=0,1,2…)のπ電子を持つ
平面環状共役ポリエン

だ。
π電子については先ほど解説した通り。
問題は平面環状共役ポリエンの方だね。
これは-C=C-C=C-(数は何個でも)を持っていて
環構造になってるものをことだ。
これだけ見ると平面は?と思うかもしれないが
上記の条件を満たしていると…と考えてもらえば
共役をしやすくするために平面になるっていうところは理解してもらえるんじゃないかと思います。

構造でも触れたけど、芳香族性を持つ形だとπ電子雲が発生し電子がより分散される。
そして共役によりさらに安定化される。
これが芳香族が普通のジエンなどより安定な理由ってわけだね。

さてここまでわかったところで改めてベンゼンのπ電子の数を数えてみると…

6個あるよね。
つまりさっきの式で言うとn=1として
4×1+2=6
となるので、芳香族であるということが分かるんだ。
まあ、図を思い浮かべるのが面倒だという人は
二重結合の数×2だと考えてもらっても問題はないので覚えやすい方でどうぞ。
※二重結合にはπ電子2個が使われてるからね。

まぁこういった感じで
ベンゼンは芳香族という特定の形になることで更なるパワーアップを果たしたわけだ。
「特定の形をとることで大きな力を得る」
という言葉にピンとこなければ
Δダイナマイト
黄金長方形
なんかをググってみるといい。
とても良い例が出てきます(o^―^o)

さて今のはn=1の場合だったよね?
もちろんnの数を変えるともっと多くの芳香族ができる。
これについては…ちょっと長くなってしまったので
後で解説しようと思います。

ではまた次回。

 

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さて大枠で「ジエンの反応」とはしたけど
ここではジエンの中でも特徴的な
共役ジエンの反応
について説明するよ。

アルケンやアリル系をすでに読んでいたらなら想像がつくかもしれないけど
例えば以下のような求電子付加反応が起こり、2つの生成物ができる。

ちょっと見慣れない名前がついているけど
1,2もしくは1,4にそれぞれHとBrがくっついているので
それぞれ1,2付加1,4付加と呼び方をしたりもする。
この数字はいつも使っている命名法の数字ではなく
付加したH、Brに番号を付けてるだけのもなのでお間違えなく。
・青の数字が~付加の番号
・緑の数字が命名法で使う番号
です。

生成物が2つできているのはアリル系と同じ理由で
Hが付加した後、下のように共鳴してるからだね。

で今回ポイントとなるのは生成物の割合について。
例では見ての通り生成量は
1,2付加>1,4付加
になっている。

まぁ理由は単純で共鳴構造が1,2付加の方が安定しているからだ。

でこれだけで終われば単純にこういう反応なんだーって話なんだけど
それだけでは終わらない。

実は最初の式を注意して見てみると
割と簡単に変更できる条件があったんだ。
それが何かわかるかな?

正解は温度が0℃に指定されていたんだ。
実はこの温度によって生成物の量の比率が変動してくる。
詳しく見ていこう。

まず先程0℃だった温度を徐々に上昇させ40℃にした場合
以下のように生成物の量が逆転する。

ちなみにある実験
生成物の1,2付加と1,4付加をそれぞれ同じように40℃で加熱すると、
先に紹介した例と同様に1,2付加、1,4付加が同じ割合で生成されることが分かっている。

ということは…そうこれは平衡反応ってことだ。
※ど忘れしてたら… 基礎:反応と平衡 をご参照。

知っての通り熱により活性化エネルギーの山を自由に超えられるようになっている。

ということは
生成物より普段の状態のエネルギーは小さい
すなわち安定のものが多くできる、ということだ。

ここでアルケンの安定性について思い出してほしい。
アルケンは置換基が多い方が安定だったよね?
※詳細は 応用編:アルケンの特徴③
だから熱を加えた場合の生成量は1,2付加<1,4付加となるんだ。

さてではもう一つ考える条件を足してみよう。
置換基がついていた場合
はどうだろうか?

まぁ最初は面食らって?となるかもしれないが
この場合でも考え方は変わらない。

以下を例に説明していこう。

0℃の場合は中間体であるカルボカチオンの安定性によって決まってたよね。
考え方は変わっていないので今回も素直にカルボカチオンがより安定な1,2付加が多くできる
と考えてしまってよい。
そして40℃の場合は、先程と同じでアルケンの安定性で考えるんだ。

アルケンが安定なのは1,4付加の方になるよね?
だから1,4付加が多くできるってことだよ。

初見だと面食らうような課題が出ることもあるけど
基本に従って順番に対処していけば基本的には問題ないよ。

最後に補足として
2重結合が3つ以上共役している場合だとどうなるか?
を説明していこう。

こいつはとても安定な構造で
βカロチンやビタミンAなど栄養素などによく見られる構造だ。
だけど求電子剤には、アリルやジエンと同様反応しやすい
例えば下のBrとの反応をみてほしい

アリル、ジエンをと同様、電子が豊富な二重結合が3つもあるので簡単に反応する。
そしてこの反応の中間体であるカルボカチオンは
共鳴により安定化するので活性化エネルギーは低い。

ということで3つ以上共役したπ結合をもつものについてまとめると
・構造が安定(熱力学的に安定)
・求電子剤とは反応しやすい
といった特徴があります。

さてジエンはここまで…と思っていたけど
ある意味ジエンの反応だけどちょっと特殊な
Diels-Alder反応
が残っていたので、次回はこいつを解説していくね。

そんなところで
ではまた次回。

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では前回の続きから

2.水素化熱

水素化熱自体はアルケンで紹介済みのものなので詳しくは
応用編:アルケンの特徴③
をご参照。

ポイントとしては水素化熱の大小
アルケンがどう関わっていたか?だ。

そう、アルケンが不安定なほど大きくなっていたよね。

とりあえずは以下をみてほしい。

ジエンはアルケンから二重結合増やしたくらいにしか見えないので
同じものができる場合の水素化熱は
-30.3×2=-60.6kcal/mol
となりそうなんだけど、なぜかそれよりも低い
-57.1kcal/mol
になる。

ちなみに非共役ジエンの場合だと以下のようになる

上記の通り何となくだけど単純にアルケン2つの場合で推測
した結果に近いものになる。

で何が言いたいのかというと、ようは共役ジエン
何かしらの要素が組み合わさって安定化している
ということだ。

ではその要素とは何なのか?
詳しくは次の構造で紹介するよ。

3.構造

まず以下の軌道の状態を表した図を見てほしい。

なんとなく似たようなものを見た覚えがないだろうか?
そう
応用編:アリル系の特徴②
4.構造 で紹介した軌道の状態に似ているよね。

今回も同じことで、ようはπ電子が非局在化されているんだ。
だからより安定な状態になっているんだ。
そしてこのためC-Cの結合の長さは
C=C結合とC-C結合の長さの中間位になっています。

また、ジエンは下のように2つの平面型配座をとれる。


上記の通り、それぞれをs-trans型立体配座s-cis型立体配座っていうんだけど
このsはsingleすなわち単結合の意味で
単結合部分を基準にしてcisかtransかの名前を付けているんだ。

ちなみに安定性でいうと
s-trans型立体配座>s-cis型立体配座
になる。
理由としてはs-cis型の場合、立体障害が発生するからだ。
※図の黄色の箇所のことね。

特徴は大体こんな感じかな。
次回はこれらの特徴をもとにジエンの反応について考えていくよ。

ではまた次回。

 

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それでは前回の続きから

2.アリル位ハロゲンの求核置換反応

タイトルのまんまで前回の1.で作ったハロゲン化したアリルでの求核置換反応のこと。
こいつの場合はS1反応とS2反応の両方を起こすことができます。
順番に説明していくね。

(1)S1反応の場合

Oを使うと以下のようにS1反応を起こすことが出来る。

一応理由を補足しておくと
中間体のカルボカチオンが共鳴できるため、安定化するからだね。

(2)S2反応の場合

そしてS2反応は以下のとおり。

まぁよくわからなかったら
基礎編:S1反応2反応 あたりを読んで復習してください。

で今回ここで紹介したいのがこの反応の反応速度について
結論からいうと第1級ハロアルカンよりも数十倍速い

理由は2つ
1.反応を起こすために必要な活性化エネルギーが小さい
2.sp2炭素があるため

まず1.について 応用編:アリル系の特徴① で紹介した話になるのだけれど
アリル系では二重結合とその隣の炭素のp軌道が重なり合い、安定化する。
そのため反応を起こすために必要な活性化エネルギーが下がるってことだね。

そして2.は 応用編:アルケンの特徴① で紹介したs性の話になる。
s性はsp2炭素>sp3炭素だったよね。
ということは電子求引性sp2炭素>sp3炭素となる。
このおかげで、より+が強くなるので、-である求核剤の求核攻撃を受けやすくなる。

以上2つの理由から
アリル位ハロゲンの求核置換反応が第1級ハロアルカンとくらべて格段に速いってことだね。

3.アリル型有機金属反応剤

有機金属反応剤については 応用編:アルコールの合成③
で紹介しているので詳しくはそちらをご参照。

ここではアリルを有機金属反応剤にする方法を解説します。
方法は以下の2つ
(1)アリル位の脱プロトン化
(2)Grignard反応剤
順番に解説するね。

(1)アリル位の脱プロトン化

脱プロトンが?だったら 基礎編:S1反応 をご参照。
簡単にいうとアリルにアルキルリチウムを反応させて、アリルを有機金属反応剤にする方法だ。

初出なので解説しておくとTMEDAっていうのは
(CHNCHCHN(CH:Tetra methyl ethylene diamine
の略だ。
こいつはいろんな金属塩(例でいうLi)に対して
配位子を結合させ、安定な錯体を作ることが出来る。

簡単にいうと金属イオンを有機溶媒に溶けさせることが出来る
例には描いていないけど、Liは2つのCH=CHCH
の間で挟まれるような配置になっている。
ちょっと脱線するけど
この多座配位子(配位結合できる腕を複数持つ配位子)が中心金属に配位結合したものを
化学ではキレートといいます。

ちなみに消防法にも定められている中々の危険物なので
もし扱うことがあればご注意を。

で、なぜこんな反応が起こるかというと
pKaを見てみると原因が見えてくる。
pKaが小さいほど酸性が大きいからよりHを出しやすかったよね?
※ピンとこなければ 基礎編:酸・塩基の平衡

アリルとアルカンのpKaを比較してみると

アリル(CH=CHCH)のpKa < アルカン(CHCHCH)のpKa

という関係になっている。
つまりアルカンがLiを持ってる状態より
アリルがLiを持ってる状態の方が安定。
だからアリルが有機金属反応剤として働くんだ。

(2)Grignard反応

英語で書いているけど、こいつは
応用編:アルコールの合成③ で紹介させてもらった
グリニャール試薬と同じようなもので、この場合は
アリル位ハロゲン化物を
アリル位マグネシウムハロゲン化物にする反応のことだ。

でこのアリル型有機金属反応剤が何に使えるのかというと
例えば以下のようにアリルをいろんなところにくっつけたい時に使えるんだ。

応用編:アルコールの合成③ でも紹介した通り
こういった有機金属反応剤は昨今の有機合成には欠かせない
有機合成界隈のマルチタレントといってもいいものなので
忘れていたら覚えなおしておいて下され。

ではまた次回。

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さて今回はアリル位の炭素(2重結合の隣の炭素)が
どのように反応するか見てみよう。
主なものは

1.ラジカル的ハロゲン化
2.アリル位ハロゲンの求核置換反応
3.アリル型有機金属反応剤

それでは一つずついってみよー。

1.ラジカル的ハロゲン化

応用編:アルケンの反応⑤ で似たようなことをやったけど
あの時 空気中に放置しておいたアルケン と HBr で行ったものを
今回は低濃度のBrを使ってアリル位の炭素部分をハロゲン化する。
反応としてはこんな感じ。


ROORの代わりにhv(紫外線)なんかでもOK。

ここでは重要になってくる
低濃度のBrについて解説していくね。

まずどうやって作られるのか?だけど
以下の N-Bromosuccinimide(NBS) が使われている。

こいつから少量ずつHBrと反応させると
低濃度のBrを発生させ、自身はスクシンイミドっていうものになる。

さて上で強調させているけど、そもそも
HBrを少量ずつとは?と思う人もいるんじゃないかな。

言葉のイメージとしては自分で地道に少量ずつ入れるのかな?
と思うかもしれないけど
そんな非効率なことはしない。
実はこれ、反応の中で少量ずつ発生させているんだ。

こいつについてはに今まで見てきた中に似たようなものがある。
応用編:アルケンの反応⑤
で紹介した HBrのラジカル的付加反応 だ。

どういった反応だったか覚えているかな?
そう、ラジカル連鎖反応 だよね。
似たようなところも多いので少し端折りつつ
段階をおってみていくとしよう。

①開始反応

Brが紫外線によって開裂してラジカルが出来る。

②伝搬段階1

応用編:アリル系の特徴② で紹介した通りで
アリル系は共鳴する。
ということで共鳴構造式が書ける。

このときできるHBrはNBSからBrが発生する反応に使われる。
そう、ここで少量ずつ発生するから低濃度のBrができる、というわけだ。

③伝搬段階2


さて、伝搬段階1で共鳴構造式を書いたけど
この例だとどちらも同じ物質になってしまった…

まぁ当然違う生成物ができる場合もあるのでそれも紹介しておくね。
こんな感じです。

なんでこうなるのか、詳しくは
応用編:アルケンの特徴③ を読んだもらったらわかるかな。
アルケンは置換基が多いほど安定
だから共鳴時に置換基が多い右の方が生成量が多くなる
って話です。

④連鎖停止反応

こいつについては
応用編:アルケンの反応⑤HBrのラジカル的付加反応
と同じ、ラジカル同士が反応してラジカルがなくなる反応だ。
原理も同じものなので割愛します。
で、このようなNBSを使ったアリル位の臭素化反応
ウォール・チグラ―反応(※)
と呼びます。
※芳香族化合物のベンジル位をNBSで臭素化する反応も指します。
詳しい説明は芳香族のところで説明予定。

ちなみにラジカル発生してないと、下のようにアリルではなく
ハロアルカンできるのでご注意を。
※詳細は 応用編:アルケンの反応② を参照

オマケ1
アリル位のハロゲン化はClでも行えます。
これは工業的にもよく使われてます。

オマケ2
上で紹介した①~④を反応式で超簡単に描くとこんな感じ。

ではまた次回。

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