さて前回残ってしまったラスト一つ。
を説明するね。
最近色々と話題の元王子様のお兄ちゃんの名前に似てるな~
と思ったのなら中々に感がいい(笑)。
Williamsonっていうのはこの反応を発見した
アレキサンダー・ウィリアムソン(ちなみにイギリス人)
の名前からきている。
この反応は、アルコールの塩とハロアルカンを反応させてエーテルを合成する。
・・・まぁこの説明だけだと「2.ハロアルカンのアルコリシス」(※以下”2.”とします)と何が違うの?
と思う人も当然いるだろう。
まぁ落ち着いて聞いてほしい。
2.では アルコール を使っていた。
しかしながら今回使うのは
アルコール[塩]※ だ。
※忘れていたら
応用編:アルコールの反応② の2.塩基との反応
を読み直してみよう。
こちらについては例を見た方が早いと思うので、以下を見てほしい。
ちなみにこいつはSN2反応で進行しているので
ここでは省略しているが副産物のE2反応の生成物も出来たりします。
さて単純なエーテルを作るというだけならここで話は終わるのだけれど
この反応には応用が存在する。
応用編:エーテルの特徴① にもひっそり登場した環状エーテルの合成だ。
まずはシンプルな例をご紹介。
ここで注意点。
ご存じの通りSN2反応はバックサイドアタックだ。
何が言いたいかというと、攻撃する側と脱離基が逆側になければ反応しにくくなってしまう。
例えば以下のような状態でないと反応はスムーズでない。
もっと具体的な言い方をするなら
求核剤(OH)と脱離基(Cl)が同じ位置にあるかどうかで
SN2反応の起こりやすさが変わってくる、ということだね。
さて環状エーテルが出たのでついでに
環状エーテルの出来やすさを説明しておこう。
シクロアルカンで説明したからひずみの影響により生成速度は
6員環>5員環>4員環>3員環
のようになると考えるかもしれない。
しかし、実際には
3員環≧5員環>6員環>4員環
となる。
これはなぜか?
要因は以下の2つで考えることが出来る。
・エンタルピーの効果
・エントロピーの効果
※この単語にピンとこなかったら 基礎編:反応と平衡 へ…
では上から見ていくとしよう。
エンタルピーとは反応によるすべての結合エネルギーの変化という意味だったよね。
基礎編:シクロアルカン でも紹介したのだけれど”ひずみ”の要素により安定不安定
つまりは出来やすさが変わってくる。
これだけ見ると、
6員環>5員環>4員環>3員環
の順になると思うかもしれない。しかし、生成速度に影響を与えるのはこれだけではない。
エントロピーとは反応による自由度の変化という意味だったよね。
このエントロピーが高いほど環状エーテルはできにくくなってしまう。
例えば3員環と4員環の環状エーテルを考えた時、以下のような差が出てくる。
もうちょっと簡単に考えると「環状エーテルを作る」となると何はともあれ
環状を作らないとお話しにならない。
で、先に説明した通りSN2反応で脱離基を攻撃して環状になりたいわけなんだけど
距離が離れると上図の通りでその分だけ攻撃しにくくなってしまう。
だから3員環と4員環で比較した場合、3員環の環状エーテルの方が出来やすい。
という訳なんだ。
3員環ではこのエントロピーの影響がエンタルピーを勝ってしまう。
だから生成速度は
3員環≧5員環>6員環>4員環
の順となってしまうと考えられている。
※現在の調査でこれ以外にも要因があると考えられている。
3員環の場合、近接反応というものが関わってくるらしいんだけど
はっきりしたことは分かっていないのが現状です。
で・・・あんまり掘り下げすぎると収拾がつかないので
とりあえず結論だけ(何度も書いてるけど)
3員環≧5員環>6員環>4員環
の順で出来やすくなります。
興味があれば調べてみてね。
エーテルの合成については以上かな。
ではまた次回。
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