光学「活性」もあればもちろん「不活性」な場合もある訳で・・・今回はそんなお話だよ。
さてキラル炭素が1つあると2つの光学異性体ができたよね。
ではキラル炭素が2つ、3つある場合はどうなるのか?について説明していくよ。
今回も 2,3,4-hydroxy carboxylic acid を例に考えていこう。
これにはキラル炭素が2つあるね。
なんとなく想像はつくだろうけど以下のように4つの光学異性体が書ける。
さて、ここで上の4つの異性体は2つのグループに分けることができる。
わかるかな?
まず【A】【B】、【C】【D】の組み合わせのように鏡で反転させると「重なるもの」がある。
そして【A】【C】、【B】【D】のようにどうやっても「重ならないもの」がある。
この
「重なるもの」をエナンチオマー
「重ならないもの」をジアステレオマー
というよ。
エナンチオマーの特徴はキラル炭素が1つのときの光学異性体と同じで
・化学的、物理的性質は同じ
・偏光面を回転させる方向だけ違う
逆にジアステレオマーは
・化学的、物理的性質が異なる
っていうことがいえる。
気づいてるかもだけどn個のキラル炭素持つ化合物は「最大」2n個の立体異性体を持つ。
例えば今回の場合は22=4個だね。
さて注意してほしいのは↑にも書いた通りあくまで最大だからそれより少ない可能性もあるっていうこと。
どういうことかというと、光学活性で説明した偏光面を回転させるっていう性質には例外があって必ず最大数まで立体異性体が出来るわけではない、ということなんだ。
この例外は大きく2種類ある。順番に解説していくね。
これはキラル炭素をもつけど、分子内に対称面を持つものだよ。
対称面って何?って思うかもしれないね。
以下の例(酒石酸)で考えてみよう。
図の通りなんだけど、炭素鎖の中心を折った時に同じ分子が重なり合う状態っになっているよね。
例えば【A】【B】については対称面が存在してるといえるし、【C】【D】は対称面が存在していないってことになる。
ついでで紹介すると
基礎編:光学異性体 で紹介したキラル中心の性質として
鏡像と重ね合わすことができない
っていうものがある。
※こちらは対掌性っていいます、色んな意味で紛らわしい。。。
つまり今回の場合でいうと【A】【B】はこれに当てはまらない。
だから【A】【B】は光学活性がない → 光学不活性っていうことになるんだ。
だからこの場合は【C】【D】の2個だけが光学活性をもつっていうことになるよ。
教科書的な説明を紹介すると
鏡像異性体の1:1混合物
だ!
うん、意味わからん(笑)
おまけにこいつについては今までのように構造式を見ているだけでは分からないのでなお性質が悪い。
まぁ頑張って説明しようと思います。
まずは以下を見てくだされ。
まず光学異性体【A】【B】の量が同じだとする。
この場合右回転しようとするものと左回転しようとするものが互いに影響を及ぼしあいプラマイゼロになる。
つまり、偏光面が回転してない状態になってしまうんだ。
まぁ早い話が光学不活性になる。
どういった状況でこんな事がありえるのかというと色々あるんだけど、特に2重結合が開裂する際にできることが多い。
さてここでもう一例(2-butanolが出来る過程)紹介しとくね。
反応自体については 基礎編:SN1反応 辺りで改めてやります。
とりあえず注目いただきたいのが赤枠部分。
このときカルボカチオンと言う状態なんだけど、このときの状態は平面なんだ。だから上からでも下からでもH2Oが攻撃できるんだけど、どちらが攻撃しやすいか?と言われても差なんてない。
だから出来るものの数は同じになる。
こういった場合はラセミ体になるよってことだね。
<補足>
カチオン:+の電荷をもった陽イオン
アニオン:-の電荷をもった陰イオン
でカルボカチオンっていうのは要するに
炭素原子上に正電荷を持つカチオン
ってことです。
ではまた次回。
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