いきなりですが、ちょっとした歴史の話から。。。
大体1800年代後半くらいの話。
当時既になんとなく環状化合物の存在は検討がついていた。
ただ具体的な構造についてははっきりしない状況だったんだ。
そこでドイツの科学者であるBaeyer(バイヤー)が角ひずみという考え方を思いついた。
これは簡単にいえば結合角の差によって生じるひずみが結合エネルギーを不安定にさせている、というものだった。
環状化合物という訳ではないけどわかり易さ重視で、ここではCH4(メタン)を例にとってその理屈を紹介するね。
※109.5°が結合角
混成軌道 でも少し触れたけど、立体反発によりCとHの距離は安定な状態をとる為にになるべく等しい距離をとろうとする。
結果上図のような正四面体が出来上がる。
ということは構造が正四面体の結合角は109.5°に
近づくほど安定 → ひずみが小さい
離れるほど不安定 → ひずみが大きい
ことになる。
ここで参考までに各シクロアルカンにどれだけの”ひずみ”があるのか紹介するね。
まずは
・5員環、6員環はひずみが小さい
・3員環はひずみが大きい
くらいを頭においておけばいいかな。
さて結果的にいえばこの理屈には誤りがあった。
なぜならこれはあくまで平面的な構造をとっている場合だけに限定した話だったからだ。
まぁ想像がついたと思うけど、実際には平面的な構造をとってるものはほとんどなくて、ひずみを小さくしようとして色んなところが折れ曲がっていたんだよね。
だから、化合物の全体を考える場合はひずみ単体だけでなく Newman投影式 で紹介したような立体的な視点が重要になってくるんだ。
では順に説明するね。
立体的といった矢先で申し訳ないけどこれは平面構造しかとれない。
どういった形になっているかは下図の通りなんだけど、角ひずみが大きいことに加えて重なりひずみもあったりする。
結果としては“とても不安定”だから反応しやすいシクロアルカンだね。
さてこれも重なりひずみだね。
ただ今回は平面構造をとらずに折れ曲がることで重なりひずみを解消するよ。
ただし折れ曲がることによってひずみが増えちゃういます。。。(90°→88.5°)
内角が109.5°に近いから角ひずみはほとんどないよ。
ただシクロブタンの時ど同様に平面のままだと重なりひずみが大きくなっちゃうから折れ曲がって解消するよ。
さてお次はシクロアルカン界隈では有名なシクロヘキサン。
今までの流れで予想はつくと思うけど、これも折れ曲がった構造になる。
ただしこいつについては折れ曲がった構造に名前がついているので、もうちょっと細分化されます。ご注意を。
下図の通りで角ひずみはないんだけど重なりひずみと水素同士の立体反発がある。
下図の通りでこちらはひずみがない。
つまりはより安定しているってことだね。
さてこのイス型については少し補足をさせてください。
まず描き方から
上図の順で①、②、③を線を引く。
そしてそれぞれ平行の位置にある①´、②´、③´を引く。
シクロヘキサンに結合する官能基は他の官能基との関係が守られていれば基本どこに描いてもOK。
そして六角形を構成しているのは炭素なのだから一つの角について2つの置換基がついている。
そしてこの置換基はよく下図のような感じで表現される。
で、ここで注目してほしいのは、なぜ色違いにして表現をしているのか?ということ。
これは置換基が配置される場所によって少し性質が変わってくるからなんだ。
まず名前は、赤線がアキシャル配座、青線がエクアトリアル配座という。
何か変わってくるかっていうと、まぁ毎度のごとく安定性に影響が出てくる。
結論からいってしまうとエクアトリアルがより安定だ。
とりあえず以下の図を見比べてほしい。
まぁ↑の通りでアキシャルは1,3の関係にある置換基の間に Newman投影式 で登場したゴーシェ相互作用が発生するので不安定になっている。
※この相互作用は別名1,3アキシャル相互作用って呼んだりします。
さて、ここで???になった人がいるかもしれないね。ちょっと前で「官能基は他の官能基との関係が守られていれば基本どこに描いてもOK」って書いてるので。
実はシクロヘキサンは環を作っている部分が自由に回転しているから上の二つのイス型+ボート型がお互いに入れ替わっている状態(環反転)なんだ。
だからシクロヘキサン化合物として描く分にはどれであっても間違いではない。
ただし、一番安定なものは?と聞かれればイス型・エクアトリアル配座を選ばないといけないよって話だよ。
最後にシクロブタンを、と思ったけど結構長くなったのと、ほとんど取り上げられることがないから省略させていただきます。。。
興味があったら自分で調べてみてね。
ではまた次回
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