カルボン酸の反応⑤

それでは続きからー

1.カルボン酸誘導体

(6)アミド(amide)

さて長かったカルボン酸誘導体もこいつでラストです。

アミドは超簡単にいえば↓こんなの

で、オキソ酸とアンモニアあるいは 1級、2級アミンとが脱水縮合した構造を持つものを指す言葉だ。
基本的には今回紹介する
カルボン酸アミド
を指すことが多いんだけど、
他にも~アミドっていうものは存在する(例えばスルホンアミドとか)ので
他の人と話す時は紛らわしくならないようにカルボン酸アミドと
明言してから話すことをお勧めします。

(6)-1 カルボン酸アミドの合成方法

さて忘れてしまっているかもしれないけど
応用編:アルデヒドとケトンの反応⑤ で紹介したように
アミンもカルボニルを攻撃する

これにより以下のようにカルボン酸アミド(carboxylic amide)ができるんだ。
※この反応には熱も必要なのでお忘れなく。

既出の内容と被るので多くは語りませぬ・・・反応機構は以下だ。
※今までと同様の、付加-脱離機構になります。

さて、この反応に問題になる点が1つあるんだけどわかるかな?

正解はNHはOHよりも塩基性、求核性が強い、という点だ。
何が問題なのかといえば、
塩基性、求核性が強いということで、以下のように酸塩基の反応が起こりやすくなってしまう

こうなっちゃうと当然のことながら求核攻撃が起こりにくくなる
※ピンと来なければ 応用編:カルボン酸の反応② へ

では目的のカルボン酸アミドを作るにはどうすればよいか?
ここで有効なのがさりげなく一番最初に書いていたが、Δ(加熱)なんだ。

まず付加-脱離機構も酸塩基反応もともに可逆反応である、ということを思い出してほしい。
酸塩基の方が確かに生成速度が早い
が、熱力学的に有利な反応は付加-脱離機構だ。
なので加熱により最終的には安定な方が多くできるというわけだ。
※ピンと来なければ 応用編:ジエンの反応 へ

こうなることで
・酸塩基反応の式からカルボン酸とアミンがどんどんなくなっていく
・ますます塩が減る方向に平衡が傾く
・カルボン酸アミドが増える
といった好循環を起こすことが出来るってわけだね。

補足として当然逆反応も可能となるという事も抑えておこう。
つまりはカルボン酸アミドを酸または塩基の水溶液で加熱処理すると
カルボン酸とアミンを生成できるってことです。

(6)-2 イミド(imide)の合成方法

まずイミドというのは先ほどのアミン(1級アミン)またはアンモニアに
カルボニル基が2つ結合した構造をもつものをいう。
※実は 応用編:アリル系の反応① に登場しています。

・・・多分例を見た方が早いので以下を見てほしい。

ジカルボン酸がアンモニアや第1級アミンと2度反応し、イミドができているよね。
小難しい言い方をするなら
「環状カルボン酸無水物の窒素類縁体」
がイミドっていうことになる。

塩の形になったりならなかったりしているので
塩じゃないときを見計らって反応しているんだ。
このため温度は300℃くらい必要になる。

反応機構は…実のところ詳細は判明していないんだよね。
おそらくだけど以下のような感じになると思われるので、まぁ参考までに・・・。

(6)-3 ラクタム(lactam)の合成方法

さてでは最後にラクタムと呼ばれる環状アミドの合成方法を説明しよう。

ラクタムというはカルボキシ基とアミノ基が脱水縮合した形を持って環を成している化合物のことだ。
以下のように(ヒドロキシカルボン酸と同様に)アミノ酸が環化することで生成される。

ちなみにどこかで聞いたことはあるであろう
アミノ酸というのは
NH(アミノ基)とCOOH(カルボキシ基)を持つ
有機化合物の総称です。

反応機構は以下の通り

環を構成する炭素数によって
α-ラクタム(三員環)
β-ラクタム(四員環)
γ-ラクタム(五員環)
δ-ラクタム(六員環)

なんて呼ばれたりします。
それぞれがどういったものかはぜひ興味を持って調べてみてほしいところだけど
有名なところでいうと
アオカビで有名なペニシリン系の抗生物質β-ラクタム官能基を持ち、
これが生物活性(つまり薬の効果の元)になっていたりします。

さて、長々と話をしてきたカルボン酸誘導体だけど
次回以降の単元でそれぞれの細かい特徴や誘導体を使った反応について触れていこうと考えております。
今回はとりあえず基礎ということで…しかし今までの話で分かるように
基礎が大事です!
しっかり理解してから次に進むようにして下され。

ではまた次回。

 

© 2021 猫でもわかる有機化学