それでは続きからー
ここではカルボン酸誘導体の合成を効率よく進める方法を解説していきます。
さて効率的にするということは
そもそも効率的になっていない要因がある
ということが考えられるよね?
なのでまずは問題点を確認していくよ。
①OHの脱離能の低さ
この点は 基礎編:SN2反応速度に影響を及ぼす因子①
に書いているので、忘れていたら読み直してみてね。
②カルボキシラートの生成のしやすさ
で、もう1つの問題点
OHのHは酸性なんだけど、多くの求核剤は塩基性
ということがある。
つまり求核攻撃ではなく以下のように
塩基(求核剤)がOHのHを奪う酸塩基反応が起こり、
カルボキシラートが生成してしまう。
いってみればこれは
求核剤の塩基性が強いほど起こりやすい
問題なんだ。
でもこの後C=OのCに求核攻撃できるんじゃない?
と思うかもしれないがそれは難しい。
カルボキシラートは共鳴によりC=OのC部分に+が出来にくくなっている。
だからカルボニル炭素への求核攻撃が起こりにくくなっているんだ。
ちなみに求核剤の塩基性が弱かった場合は
以下のようにカルボン酸のエステル化(esterification)が起こり、
アルコールとカルボン酸が反応してエステルと水が生成してしまします…
※詳細は 応用編:アルコールの反応③ をご参照
ということで、以上がカルボン酸誘導体における問題点だ。
でこれらをどう解決していくのか、を次から解説していきます。
まずタイトルにある
ハロゲン化アルカノイル(ハロゲン化アシル)[alkanoyle halide(acyl halide)]
は以下のようにカルボン酸(COOH)のOHをハロゲン化物で置換したものだ。
カルボン酸からハロゲン化アルカノイルを作るには
以下のようにアルコールからハロアルカンを合成するときに使用する反応剤、
すなわちSOCl2やPBR3を使う。
※こちらも 応用編:アルコールの反応③ をご参考に
※注意点としてこいつらはギ酸(HCOOH)では上手くいかない。
□なぜなら生成物であるHCOBrやHCOClがそもそも不安定だからね。
さて簡単な補足も出来たところで反応機構を説明していこう。
例にするSOCl2の場合は
2段階(付加、脱離)の反応を経由します。
①付加
まず、カルボン酸のC=OのOがSOCl2のSに求核攻撃するところから始まる。
アルコールの反応③ のハロアルカンの合成を見たあとだと
カルボン酸のOHのOが求核攻撃するんじゃないの?
と思った人もいるかもしれないね。
では試しに求核攻撃すると…
さっきと違い、共鳴ができないんだ。
つまりこっちの中間体の方が不安定なので
カルボン酸のC=OのOが求核攻撃するというわけなんだ。
②脱離
さて、①で付加後に、以下のようにCl-が攻撃することで
四面体中間体ができる。
その後にSO2とHClが脱離した結果、ハロゲン化アルカノイルである
塩化アシル
ができるってわけです。
ちなみにもう1つのPBR3を使った場合もSOCl2と似たような反応機構になる。
※アルコールの反応③ を復習してみたらさらに分かりやすいと思います。
ざっとまとめるとこんな感じです。
ハロゲンは脱離しやすいのでこれ以降の反応の合成にもよく使われるので
しっかり身につけておきましょう~
ではまた次回。
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