さて前回からの続きを説明していくよ。
さて聞きなれない単語出てきたね。
教科書どおりの言葉で説明すると
「イオンが溶媒によって取り囲まれること」
を指す。
とりあえず参考として以下を見てほしい。
(例)水の中に求核剤Cl–、I–が存在する場合)
さて話のポイントは
この時Cl–とI–だとどちらが反応速度が速いだろう?
ということだ。
※ここでは前回求核剤の強さで水中では求核性が I–>Br–>Cl– で塩基性と逆になった理由も併せて説明していきます。
■ポイントは水の中という環境的な要因です。
ちょっと分かりにくいかもしれないけど、水の中では求核剤Cl–の周りに水分子がI–よりも集まってきている。(距離が近いのわかるかな?)
これはCl–の負の電荷に水のH+上に存在する部分正電荷が近づいて負電荷を分散することで安定化しているからなんだ。
このため、水の邪魔が少ないI–の方が反応速度は速くなる、といった事象が起こる。
さてここでもう一つ疑問が出るんじゃないかな、と思う。
そもそもなんでI–の方は水分子のH+が集まらないの?ってね。
勘がいい人は察してくれると思うけど
今説明した内容は高校化学で出てくる水和のことなんだ。
水和を忘れちゃった人の為に補足をすると
水和というのは
溶質(ここでいうCl–とかI–)が水に溶ける時、溶質の粒子を水分子が取り囲んで引き剥がしている現象のことを差す言葉だ。
この時水分子がどうやって粒子を引き剥がしているのか?というと
陽イオンは、O–が
陰イオンは、H+が
電気的な引力で引っ張り合う力を使って剥がしている。
引っ張り合った結果、水が取り囲んだ粒子はどんどん元の結晶から離れていく。
結果として水の中で結晶はばらばらになる。
これがいわゆる水に溶けるっていう状態だね。
さてここまで説明したら分かってくれると嬉しいけど
ようはそれぞれの原子の大きさが関係しているってことなんだ。
取り囲む原子のサイズが大きいともちろんそれだけ引き剥がすのにたくさんの水分子で取り囲まないと引き剥がせない。
だから原子サイズが大きいものほど、溶媒和の影響は受けにくいってことなんだ。
さてもう一つ要因はあってOやNに結合した水素をもつもの(例えば今回の水とかね)はH+を放出しやすいから
プロトン性溶媒
なんていう名称で呼ばれる。
なんで放出しやすいか?それはO,Nは電気陰性度が大きいから放出後に負の電荷を持った状態でいても安定だからなんだ。
プロトン性溶媒の場合
分子やイオンはH+により溶媒和を受け
求核攻撃が妨害され
求核性は低下する。
ちなみにこの溶媒和の度合いは小さなアニオンほど大きい。
これは原子半径が小さくなり
電子密度が大きくなるため
よりH+がひきつけられるからなんだ。
じゃあ求核剤の強さは何だったの?と思うかもしれないが安心してほしい。
今回はH+が含まれる溶媒の中で反応させたからこうなったんだ。
ということはH+がない溶媒で反応させれば求核剤の強さ(塩基性の強さ)そのままで反応が起こるっていうことだ。
そしてH+を放出しない溶媒は…
ご想像のとおり
非プロトン性溶媒
って呼ばれているよ。
さてちょっと長くなってしまったけど結論としては
反応速度は
・プロトン性溶媒中では塩基性の強さとは逆の順番
・非プロトン性溶媒では塩基性の強さの順番
に速くなるってことだね。
説明しようとしたら既に求核剤で説明していたでござる。。。
詳しい説明は前回の求核剤の”おまけ”を呼んでみてね。
——————————————
4が結果的に手抜きになっちゃったのでまた少しおまけを。
さて今までは反応速度の法則性を解説したわけなんだけど
実は反応が遅いものでも反応を無理やり速くする方法があったりする。
※といっても可逆反応の時だけだけど。。。
可逆反応の時は、右辺と左辺の量の比が同じ(平衡)になるということを覚えているかな?
物理化学でよくやる考えなんだけど、ようは
平衡状態を壊す(今回は無理矢理にでも左辺側が増える状態に持っていく)
→速度速くなるよね?
っていうお話だ。
さてちょっとした謎々になるのだけれど
どうしたら左辺側が増える状態になるでしょう?
そう
左辺側を減らしてしまえばいい
ってわけだ。
こうなると右辺バランスをとるために、左辺の量を増やすよう、反応が進む。
多分「そんなことができるの?」って疑問に思うと思う。
ではその疑問を持ったまま以下の反応を見てほしい。
上記、2つの反応はacetone中で行っている。
既に説明しているので詳細は略すけど
・求核性Cl>I
・脱離能I>Cl
なので②の方が反応が速そうではある。
ただ結果としては実際は①の方が早い。
実はこれ、SN2反応によってできるLiI、NaClのacetoneへの溶けやすさが関係しているんだ。
acetoneへの溶解性はLiI>NaCl(というか溶けない…)となる。
このため②の反応からNaClはどんどんなくなっていく。
※画像の反応式は液体のみの反応をあらわしているので固体になったらなくなります。
だからNaClを補うために反応がより進む。
このため反応速度は②>①の順番となるんだ。
ん~長かった。
最後までお付き合いいただき、ありがとう!
ではまた次回
© 2019 猫でもわかる有機化学